118話 楽園 24/33
「イヒヒ! 皆慌てておかしいさぁ! 」
キジムナーが、御嶽の入り口の巨石に自生している木に留まった。
「おのれ、キジムナー! 」
「祝女さまと結託して、悪だくみをしているのだな! 」
「イヒヒ、何の話やっさぁ? ノロ? なんだそれ、そんなのしーらないっ 」
「嘘をつくな! カマディの事やっさぁ! もうお前たちが繋がっている事は、確然たる事実! 」
キジムナーが、んー? と考え込むようなしぐさをした。
「あぁ、あのオバアのことやっさぁ? アハハハハハハハハハハハ! 」
「何がおかしい! 」
「ワッチがあんなヨボヨボのオバアと組むわけがないばぁよ! 」
キジムナーの言葉に、清明たちがざわついた。
「ワッチは、ゆくゆくは世界の王に君臨するトイフェルさまのしもべ。そんなオバアの手なんか借りなくても、このスイの国を手に入れるなんて簡単な事やっさぁ。イヒヒ、馬鹿!馬鹿! 」
「で、でも、昨晩、お前と祝女さまが密会している所を見た者がおるのだ、お前の言う事なんか、信じられるか!」
一人の清明がそういうと、そうだそうだと、他の清明も賛同した。
「イヒヒ、ワッチは人に幻覚を見せるのも得意だからよー、全てはトイフェルさまのご命令で、スイへの防壁を無くすためにワッチが仕組んだことやっさ。まんまと引っかかるなんて、ほんと、清明なんてチョロいチョロい! 」
「……な、」
清明たちの顔が憎しみと後悔で歪んだ。
「今頃、トイフェルさまは、勝利の歌でも口ずさみながら、ヨンナーヨンナー、スイの国に向かっておられるばぁよ! イヒヒヒヒヒヒヒヒ! もー、手遅れ! 残念でした! 」
「何を言っている……、このスイの国の防御は鉄壁のはず! 」
「嘘だと思うんだったら、北の空を見るんやっさぁー。イヒヒ! 」
「し、しかし今、祝女さまが御嶽で…… 」
「その御嶽が壊れたさぁ。……全部、お前たちのせいやっさぁ。アハハハハハハハ! 」
清明たちの顔色が変わった。
不安と恐怖一色になったのだ。
「御嶽が壊れた今、お前たち清明の小さな力では、何の役も立たんから、オバアが一人で御嶽に籠っているのかもしれないさぁね? イヒヒ。」
それを聞いて、立っている事もままならない清明まで出だした。
「ほんと、こんなことで諍いを起こしてくれて、ありがたいさぁ~。勝手に仲間割れしてくれるから、楽ちんやっさー。」
「……そ、そんな、」
「ちっぽけな力しかないお前たちなんて、トイフェルさまの力で、すぐに吹き飛ばしてやるばぁよ。もうすぐ、ここはトイフェルさまの楽園になる! ……早く逃げる事さぁ! 」
泣きだす清明もいた。
血の気も引いて青ざめ、最初の勢いを保っている清明は一人もいなかった。
キジムナーはそういうと、岩に生えている小さな木々をサルの様に上へ上へと飛び移り、てっぺんまで行くと姿が見えなくなった。
「死にたくない者は、早く、逃げるさぁ……! イヒヒヒヒヒヒ……! 」
声だけが響き渡っていた。
最後のキジムナー言葉に、逃げ出す者がいた。
その者に触発され、次から次へと清明たちは走り出し、その場に一人もいなくなった。
それをナギィは、複雑な気持ちで眺めていた。
誰も通訳がいないので、ウチナーグチ少な目の回になっています。




