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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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81話 御嶽(うたき) 1/14

昼飯に、カマディがそばを作ってくれた。

お腹を空かせた森榮しんえいも帰って来て、四人で少し遅い昼食。

メイシアは箸を使うのがまだ苦手なので、森榮にやいやい言われながら、それをナギィが叱りながらの楽しい食卓だった。


メイシアが悪戦苦闘しながら何とか食べ終えた頃、夕方の番の清明シーミーたちが、起きてきた。

彼女たちも手際よくそばを作り、それを食べると昼番の者と交代に行くというので、カマディにメイシアとナギィも一緒行ってくるようにと言われた。

カマディは深夜に一人で番をするので、カマディは今から休むという。


暇を持て余すだろう森榮には、カマディの命でお目付け役の清明が付いた。

文字の勉強をしたり、本を呼んだりして過ごすらしい。

森榮はかなり嫌がっていたようだが、オバアの言いつけは絶対の様だ。


「ナギィ、メイシア。彼女アリがマタラだよ。マタラも御殿に上がっていたから、言葉が分かりやすいだろうから、彼女についていくといいさぁ。」

そうカマディから紹介された、マタラという女性は、とても若く見えた。

すらりと背が高く、黒髪を頭の上でお団子にしてた。

勝手なイメージで、清明は年配の女性ばかりだと思っていた二人には意外だった。


身なりは、カマディ以外の清明は頭には何もつけてはいないが、同じような白い着物を身に着けてる。マタラも例外ではない。

挨拶を済ませると、マタラを含む他の三人の清明とメイシアとナギィは、御嶽ウタキに向かって出発をした。





御嶽までは、少し距離がある。けもの道に毛が生えたような、ぼこぼこの山道を登っていくのだ。


人見知りという言葉を知らないナギィが、さっそくマタラに質問を始めた。

「ねぇ、マタラさんは、すごく若いように見えるけど、何歳なの? 」

「私は十九歳だよ。だから、まだまだ若輩者。色々勉強している最中なんだ。」


「へぇ~! でも、さっきオバアが御殿に居たって言ってたけど……」

「うん。十二の時に御殿に上がったの。」

「すごいね。ワーは今、十四だけど、まだそんな責任のある仕事には就いていないさぁ。」

ナギィが感歎の声を上げた。


「……実は私も、今十二歳なんだけど……こんなだし……マタラさん、すごいなぁ。」

メイシアは、素直にそう思った。

自分は、まだ村で牧師様のお手伝いをする程度の事しかしていなかったからだ。


「そんな事ないよ。その頃の私は、まだ清明としての仕事よりも、御殿の仕来りとかを教えてもらっていたような状態だったし。」

「わぁ! 私も! 実は私も村にいる時、教会でシスターの見習いを始めたばっかりだったの!」

「見習い? メイシアさんも、同じような事をしていたのね。なんか、親近感。よろしくね。」

マタラがにっこりした。


「うん。こちらこそっ」

メイシアは少し、自分の未来をマタラに重ねた。

もしかしたら将来、自分もこんな立派な仕事をしているかもしれないと。

歌は歌いたいが、それとは別に、ちゃんと仕事に就かないといけないという気持ちもどこかでくすぶっているのだ。


「という事は……御殿にいたのは……」

「うん。二年くらいかな。」

マタラはそういうと、少しテンションが下がって、申し訳なさそうに続けた。

「……ごめんね、私、その……ナギィさんが祝女ノロさまのお孫さんだって知っているから……」


「あぁ……気にしないで。もう、みんな知っている事だし。」

用意されたように、感情もなく返すナギィの返答に、メイシアが気になって、つい声をかけてしまう。


「ナギィ……さっき言っていた、お母さんの事? 」


「うん、そう。……五年前なんだ。それって。」

ナギィは笑顔で返したが、どこか吹っ切れ無いような寂しそうな笑顔だった。


「もう五年も経つんですね……。五年前……。そうですね、あの日、私も御殿に居ました。」

マタラが五年前のあの日に思いを馳せた。


「私は、まだ何も知らない子供で。力も弱く何も出来なくて……御殿の食物庫に隠れるように言われたんですけど、そこにも火を放たれてしまって、何とか逃げ出し、必死で山を降りました。火は一晩中続いて……翌日の昼頃、鎮火。やっと御殿に近づけるようになった頃には、もう全て変わっていました……。ごめんなさい、私、あの時、そこにいたのに何もできなくて。」

「いいの、マタラさんだって、自分の命を守るのに大変だったんだもん。」


マタラが言っていいのか一瞬躊躇したものの、それでも戸惑いを飲み込み、話を続けた。


「実は私、カガンさんにも色々、お世話になったのです。」

「……アンマーを知っているの? 」

「はい。とても優しい方でした。清明としても立派な方で、不浄を清める技を得意にされていました。私も少しだけ習いましたが……あれは天性ですね。ふふ。全くダメでした。」

マタラの中のカガンの思い出は、とても明るいものなのか、カガンの事を思い出すタマラの表情が一瞬にして楽しそうになった。

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