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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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80話 魚釣島の清明 16/16

「で、話はどこまで言ったさぁ? 」

「えーっと……、神降島(カミウリジマ)とここで結界を……」


「おお、ヤサヤー。」

メイシアはもう一度、ナギィが説明するために作ってくれた黒砂糖のジオラマを見た。


「……この結界、ものすごい大きさですよね……」

「そうなんじゃ。それも、昼夜問わずじゃ。魚釣(ユイチャー)と神降(カミウリ)を結ぶ直線を、少し北に湾曲させたこの辺り。ここに結界を張っておる。この結界より北の地が山原(ヤンバル)。トイフェルがおる土地じゃ。」


「メイシアは、ここに来るときに、大きな岩を見ていたでしょ。あれが祈りの場所。御嶽(ウタキ)だよ。」

ナギィに言われて思い出した。

船から見えた山中腹、緑の中にある二枚の巨石。


「その御嶽で、今も清明(シーミー)が祈りを捧げているさぁ。祈りは交代なんじゃ。ワシは力が強いから、他の清明が夜に休めるように一人で夜の番をしてるさぁ。」

「え! 夜に一人で? 」


メイシアには、元気とはいえ年老いたこのカマディが、深夜に一人で島を守っている事に驚きを隠せなかった。


「ずっと続けていることさぁ。」

「でも、おばあちゃん一人なんて……」


「メイシアは、ずいぶん優しい子(ワラビ)さぁ。……大丈夫。ワシは、それだけ力があるのさ。今、六人ほどが御嶽に出向いておるが、私はそれ以上の力で結界を張れる。そういう役目なんじゃよ。」


「……おばあちゃん、私に何かできることはあるかな?」


「嬉しいさぁ。……でも、メイシアはまず、自分(ドゥー)の事をやりなさい。ワシはその手伝いをするために、ヤーと出会わされたんじゃ。」

「……誰にですか? 」


「それは、大きな力さぁ。」

「……大きな力、、」

カマディが優しい目を細めて、うんうんと頷いた。


「その大きな力に、十三夜にメイシアが現れると……なーんとなく、感じたんじゃ。」

「え? オバア、何となくだったの? 」

「そうじゃよ。でも、ちゃーんとメイシアは現れたじゃろ? 」

「……それは、そうだけどさぁ、、」



「さ、というわけでワシの話はおしまい。……メイシアはワシに何を聞きにやって来たんじゃ? 友達の事か? 」


「そうです……! やっぱり、おばあちゃんは何でもわかるんですね。すごい……」

「老いぼれをあんまり買い被っちゃいけないさぁ。ワシがわかるのは、人々が分かる事より、すこーし多いだけ。それだけさぁ。さっきもいったじゃろ。あと数日、ここで待つと良い。客(ウチャク)が来る。……いや、待つさぁ、」


そう言って、カマディが合わせた手を額に当て目を瞑り、しばし黙り込んだ。

風がまた居間を吹き抜けた。

少し胸騒ぎがする熱波だった。


カマディが目を開き、胸に吊るした勾玉を少し震えた手でぎゅっと握った。


「オバア、どうしたの? 」


「……何でもないさぁ。」

「でも、オバア、なんか顔色が悪いさぁ? 」

ナギィがカマディの様子が明らかに変わったので、いつもより食い下がる。


「なぁに、デージなことじゃないよ。もうすぐ、次の扉が開くみたいさぁ。」

「次の扉……? 」


カマディが二人の手を、両の手で握った。

今までとは全く違う、決意の手だ。その手は、しわくちゃだが、強い人だけが持っている温かさがあった。


「……いいかい。ナギィ、メイシア。何があっても、自分(ドゥー)を信じるんだよ。そして、ワシは何があってもお前たちの味方じゃ。ワシはお前たちを守る。だから、どんなことがあっても、ワシを信じるんじゃ。」


「おばあちゃん……一体何が起こるの? 」

「そうさぁ。ワーがオバアの事を信じないわけがないさぁ。」

二人は不安で、押しつぶされそうな感覚に襲われた。

ぎゅっと、カマディの手を握り返す。


「なんくるないさぁ。ははは。オバアの話なんてテーゲーに聞(チチュン)さぁ。……さー、今日からちょっと忙しくなるよ。まず、御嶽からみんなが帰ってくる前に、夕食(ユーバン)の準備をするさぁ。」


今日のユーバンは何にするかねぇ、などと言いながら、立ち上がり土間に向かったカマディを二人は、不安な気持ちのまま見つめた。



「オバア……! 夕食の準備もだけど、昼飯(アサバン)も食べてないさぁ! 」

「え? ナギィ、朝ごはんは、ナギィがおにぎり作ってくれて、食べたよ? 」

「あー、紛らわしいよね、アサバンって、お昼ご飯の事なんだ……」

「へぇ~。」


「おぉ、そうじゃったな。ワシもまだ食べておらん。アサバンは何がいいかのぉ。そろそろ、森榮もお腹を空かせてかえってくるさぁ。」

明らかに何かに動揺しているように見えるカマディだったが、二人はそれ以上は聞けなかった。

カマディが信じろと言ったから、そうするより選択肢は無いように思えたからだった。

ナンクルナイサ / なんとかなるよ

デージ / すごい

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