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39チュン目

「はっ!?」


 突然の気配に意識が覚醒する。

 ここは大型の魔物達が生息する大海原。内容はともあれ大物を仕留めた後にあまりにも気を抜きすぎていた。

 ごぼごぼと直ぐ横で気泡が出ている。

 次はなんだと身構える。

 ザバァ!


「私です」


「お前かよ!」


 ボッ!

 思わず音速のツッコミが出てしまった。

 わたしと駄位精霊の仲なら大丈夫だよね?



「まったくもう。いきなり酷いじゃないですか?」


「逆に聞くけど、何で今まで出てこなかったのさ?」


「それはこの海域が魔物領域だったからです。それを貴女が解放したのでこうして迎えに来ました」


 わたしと駄位精霊は海上を移動しながら話をしている。

 帰る方向は駄位精霊が分るとの事で案内してもらいながら。

 わたし達は海上を滑る様に進んでいく。丁度、某戦艦擬人化の娘達みたいな感じで。

 なお、深海の奥底に沈んでいた鞄は駄位精霊が回収してくれていた。

 鞄に精霊さんの小瓶を付けていたのが目印になったのだ。

 残念ながらライフルは回収できなかった。


「それにしても災難でしたね」


「ホント、あんな大物が出るなんて……」


「いえ、7つの海域のボスが皆、貴女を捕食する為にこの海域に集まったんですよ」


「……ん?」


「今の貴女は、この世界でもかなり高い魔力保有量です。小物は驚いて去っていきますが、ボスならば眉唾物でしょう。今後もボスクラスの魔物から狙われる様になるかと思いますので十分に気をつけてくださいね」


「冗談じゃないよ!」


 どうやら、クジラ、イカ、サメ、クラゲ、カメ、マンタ、海竜はそれぞれ7つの海のボスだったらしい。

 そして我こそはわたしを捕食せんと集った……が、返り討ちにあってわたしが7つの海の覇者となったらしい。

 そんな馬鹿な……。


「キュイキュイキュイ」


「……この子達は?」


「シーピッグですね。言葉は喋りませんが知性が高く好奇心旺盛な魔物です。危険は有りませんよ?」


「うん……そうだね」


 イルカだね……。


 イルカの群れに懐かれ、時に水族館のショーを真似た芸をしながら進み何とか陸地へとたどりついた。

 わたしにはイルカ達の言っている事が分らなかったけど、何処かへ連れて行きたかった様な感じがする。

 今度、エリカさんを連れて来よう。そうすれば何言ってるか分る。

 また来るからとイルカ達を説得して、近くの街へと向かう事にした。


「ねぇ、あの子達って人の言葉分るの?」


「分らないんじゃないですか?人魚族と共生している群れは理解するそうです」


「ふーん?」



 海岸から歩く事数分。綺麗な港町についた。


「ここから先はもう大丈夫でしょう。私は立場上あまり人の前には居られないので」


「精霊も大変だねぇ」


「えぇ。貴女達にも迷惑をかけています」


「気にしなくていいよ?ついでだし」


「そう言ってもらえると救われます。それでは。」


 駄位精霊はシャボン玉の様に弾けて消えてしまった。そう言えば消えるところ始めて見たな。いつもわたしから去っていく感じだったし。

 ついからかってしまうけど、大精霊達の中では一番世界の安定を気にしている印象がある。

 何だかんだこうしてフォローもしてくれるし。

 そもそもわたしがこうして外海まで吹き飛んだのは自業自得だし……。


 到着した街はどうやら観光地らしい。

 通りには多くの出店が並び、食べ物やアクセサリー等鮮やかな色合いになっていた。

 通りを行く人々も観光客らしく、身形が良い人が多い印象だ。

 鞄と一緒にお金も戻ってきたので、ちょくちょくつまみ食いしながら価格調査をすると観光地価格って感じだった。


「今日はシャワー浴びてベッドで寝られるなぁ……海水でベトベトのガピガピだし……」


 なおバッチリスク水日焼け幼女が出来上がっていた。魔物に吹っ飛ばされても無傷な体でも日焼けはするらしい……。

 世間話をしながら情報収集すると、結果的には2週間程の漂流だったらしい。

 みんな心配しているだろうなぁ。

 思い出した様にスマホを確認すると、SNSに未読が貯まっていた。

 生存報告と、心配かけてすまなかった事と、今居る街の名前を送っておいた。

 フラフラと歩きまわっていたら、どう見ても和風の旅館があって驚きのあまり見入っていたら中から出てきてしまった。ちょっと気まずい……。


「お嬢さん、どうかしましたか?」


「いえ、珍しい建物でしたのでつい見入ってしまったの」


 お城で鍛えたお澄ましモードで対応。


「えぇ、珍しいでしょう。ここは100年以上も前に来られた迷い人の方が建てた宿。建物もサービスもどこにも無いものですよ。特に温泉はご高評頂いております」


「まぁ!温泉が有るの?」


「えぇ。その迷い人の方は温泉の為にこの地に宿を開いたそうですよ」


 温泉があるのなら入らねば……。


「部屋の空きは有るかしら?お金なら持っているわ」


「空室はございますが……お1人で?」


「実はお忍びなの。内緒にして下さる?」


 スタッフは悩んでいる。まぁ幼女1人お忍びでなんて行ったら警戒するよね。


「……女将に確認してまいりますので入ってお待ち下さい」


 結果から言えばokだった。やったー!温泉だー!


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