15チュン目
皆様。おふぁようございまふ。馬車の中は寝れたもんじゃないですね。
昨日のお話は、結局のところなかなか来ないわたしを精霊様が直接迎えに来たのでさっさと行ってこいということでした。
なのであの後は旅の支度をし、早々にベッドに放り込まれました。ベッドは最初にわたしが使っていた物に3人で寝ました。
出発は日の出前。起きられそうもなかったわたし達は寝てる間に着替えさせられそのまま馬車に放り込まれました。
わたしやエドは早く寝たかったけど初めての旅に興奮気味なリリィが真ん中だったので全然寝られなかったのです。
ガラガラと道を進む馬車はエドの国、ウィンダムへと向かいます。
旅のメンバーはわたしとリリィにエド。お世話係のマリアンヌさん、護衛のサムブレイク・フォー。それにウィンダムから来ていたエドのお世話係と護衛の皆さんです。
サムブレイク・フォーは完全にわたしの専属になったようです。
彼らはわたしにこう言ったのです。
「男の急所を失った我々に急所は存在しない。我々は無敵だ」
頭も心臓も急所だよ。
馬車はいつもの豪華なヤツではなく。頑丈さを売りにしたようなゴツイやつでした。外側には鉄板も貼られているようです。内装は一応は王族用っぽく綺麗目になっています。そしてフカフカのクッションまみれ。こうしないと幼子は直ぐ酔ってしまうのだとか。さもありなん。めちゃくちゃ揺れるもん。
案の定、リリィはぐったりしています。寝不足じゃ余計ダメだよね。エドもちょっと険しい表情です。
ここで悩ましいのが、窓を開けて空気を入れ替えたいのだが、窓を開けると走行音がうるさいという事態。窓を開けたら頭に響くとリリィに言われてしまった。
何か手はないかと荷物を漁っていたら、マリアンヌさんにあるハーブが無いかと聞かれ持っていたので出しました。
マリアンヌさんはそれを磨り潰してハンカチに包み、リリィの喉元に着けました。同じ様にエドにも。
「このスッキリとした香で少しは楽になると思いますよ」
わたしは始めてマリアンヌさんがメイドっぽいところ見たと……いや、いつもはお世話される側だからよく分らないんだよね。
車内がお休みモードになったのでわたしは窓からスルリと抜け出し屋根に登ります。箱型の馬車は屋根も広いのです。ゴロゴロ。
「お嬢!危険ですから中にお入り下さい!」
「大丈夫です!わたしはここから狩りをします!」
「狩りぃ!?」
街の外の空気を吸うと吸収しないと落ち着かないんだよ。勘が鈍りそう。
遠くのほうに鳥が飛んでいるのが見える。
「ねえ!あれは何!?」
「おそらくはジャイアントホークでしょう!たまに家畜を襲う魔物ですが!この距離なら大丈夫です!」
そっか、魔物なら撃っていいよね。
すごい遠距離だけど、風の大精霊を討ち取った(気分的な話ね)わたしには隙が無かった。
じゃーん。超音速弾!音よりも早く飛ぶ銃弾だ!多分、遠距離狙撃できるはず。
では早速。
「お嬢!?何をしているんですか!?届きませんよ!」
チャキン
ドォン
おおう!?すごい音する!
「うわぁ!?」
「な、なに!?」
あ、馬車の中も大騒ぎだ。
「ごめん!わたし!」
「お願いだからもう変なことはしないでぇ……」
ごめんよリリィ。今度から新型弾は人の居ない所で試そう。
ちなみにジャイアントホークは衝撃波で半身吹き飛んだ後、高所から落下し地面に激突。酷い有様だった。何かごめんなさい。スタッフがちゃんと吸収しました。
そんなこんなでちょくちょくつまみ食い(と言う名の吸収)しながらえっちらおっちら1週間かけてウィンダムに着きました。
本当はもっと早いらしいけど、お子様ばかりの旅なので長めの工程だったようです。
ウィンダムは3方向を山に囲まれた天然要塞。と言った立地。
山から取れる鉱石と万年雪が溶けた清らかな水が様々な製品を作り出す工業都市。
作られた製品をリバーダム(リリィの国)に輸出し食糧を買っているそうです。古くからこの2国はそういう関係を続けているのだとか。
「この装甲馬車も我国の製品さ」
とエドもちょっと自慢げ。分るよ。男の子だもんね。
「わたくしは宝石細工の方が好きだわ」
小さくても女の子。
「なら今度プレゼントするよ」
えぇ、この歳で宝石プレゼントしちゃう?王族は違うなぁ。
などとやりとりしながら門の前で馬車を乗り換え。またパレードだそうです。毎回しなきゃいけないのかな?正直、しんどいんだけど……。
パレードの列はゆっくりゆっくりと参列者の並ぶ大通りを王城へ向けて進んでいきます。
参列者からはエドとリリィを呼ぶ声がします。意外とエドは人気な様でその婚約者のリリィも周知されているみたいです。わたし?わたしはお人形。気にしないで。
「ん?」
ふと建物を背に預けこちらを見ている男性が目に留まる。
イケオジって感じのお洒落で渋かっこいい感じ。わたしも幼女になる前はあんな男性になりたかったものです。
ってそうじゃない、何かあの男性に違和感を感じる……何か悪い事でも考えてないだろうか?
見ていたら男性と目が有ってしまった。目と目が合う~バトルの流れか!?
男性はハッとした表情を浮かべたかと思うと、サッと建物の影に消えてしまった。うん、やっぱり後で報告しておこう。
そんな事があったが、馬車は王城へ到着。前回と同じルーチンをこなし就寝となった。
今回は1人1部屋。安心して寝れそうです。やったー。




