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35・体質。

 召喚されたの世界でリンゴが受けたダメージは大きかった。

二年経っても症状は改善せず入院したまま意識もほとんど無い。

原因不明の多臓器不全と医者は言うのだが。


医者には言えなかったが原因があの世界に居たせいだと分かっていた。

何度もコマメに回復魔法を掛け続けた。

そうしてソレがあの少年達をオレの前に引き寄せたんだ。

魔法の気配に気が付いて確認に来たのだそうだ。


彼等は召喚経験のある勇者と仲間達でこの世界の管理神とも面識が有ると言った。

彼等の師匠だという男にも会わせてくれた。

彼の妻は聖女だと言うのでもう土下座して助けを求めた。

あの世界の老聖女は魔力が落ちていると言いつつかなりの実力だった。

まだ若いこの人ならきっとなんとかしてくれると。


「異世界に渡った人は大勢見てきましたがこんなケースは初めてです。

世界そのものに体質的に合わなかったなんて……

もしそういうコトが有ったとしても召喚陣で補正されていたと言うことでしょう。

何故彼女だけこんなコトになったんでしょう? 

なにか思い当たるコトって有りますか?」


召喚されたのはオレだった。

リンゴは巻き込まれただけだったんだ。

妊娠していたけれど向こうの世界で出産までは無事だった。

でも、子供が生まれたら倒れてしまったんだ。

赤ん坊は「勇者」だった。

そうしてその子には何も症状など無かったんだ。


「召喚陣の補正が彼女には及んでなかったのかも……

勇者のお子さんにはちゃんと補正が入っていたみたいですね。

召喚でなくても異世界に迷い込んでしまう人も居ます。

多少の不調を感じたと話していた人も居ましたからそういう「世界」に合わない

体質も有るってコトでしょう。


残念ですがココまでひどい症状は初めてです。

エリクサーも有りますが薬として強いので今すぐ彼女に使うわけにはいきません。

徐々に……ゆっくり対処するより他無いですね。

回復魔法も掛けすぎるとかえって彼女の体にさわります。

元の体に戻れても……寿命は縮むかもしれません。

その前に力尽きる可能性もあります。


お子さんはどうされてるんですか? 

何処かに預けられてるんでしょうか?」


帰還の為の魔力が足りなくて子供を異世界に置いてくるしか無かったことを話す。

三人で帰るのにはあの魔方陣では無理だったと……


それからはあれよあれよと言う間に準備が整えられた。

彼等の拠点の「体育館」と呼ばれている訓練道場のような場所からお供な少年と

共に送り出された。

彼は少年達の中では一番の実力者だそうで異世界への転移には慣れてるそうだ。


そうしてオレは息子の前に居る。

帰りたくないと言われるなんて考えもしなかった。

でも、連れて帰りたい……

連れて帰らなければ……

リンゴのそばに……せめてそばに居てやってほしいんだ。

ココに置き去りにしてしまったオレが言って良いことでは無いかもしれないが。

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