34. ホテルの部屋と未来の部屋
(ホテルの部屋と未来の部屋)
その日、ヒカルさんとリュウを帯広に置いて、僕はタクシーで十勝港に向かった。
茜さんの裸、まだあのホテルのこと根に思っているんだ……
でも茜さん、奇麗だったな……、バスト88、ウェスト60、ヒップ90、肌は真っ白で、すべすべだった……
今も、あの時のままなのかな……、あれから8年か……、逢うのが怖いな……
「……、茜さん、しっかり歩いて下さい……」
「歩いているわよ……」
茜さんは、それほど酔っているようには見えなかったが、足は中を踏むように頼りなかった。
僕とスミレさんは、真っすぐ歩くように、茜さんの両脇を支えた。
「でも、ここは何処……、何で、こんなに揺れているの……?」
「ここは、ホテルの廊下で、揺れているのは、あんたが酔っているからよ」
「酔ってなんかいないわよ……、それより、おしっこ……、出ちゃう……」
茜さんは、僕たちが支えているのにもかかわらず、その場に座り込んだ。
「あ、茜、駄目よ! ここは、廊下よ」
「もう……、出ちゃう……」
「ヒロ、茜を抱えて、抱きかかえるのよ! 早く……」
「え、え、俺が……」
「早く……、あんたしか、いないでしょう!」
僕は、しゃがんでいる茜さんを、そのまま両手で抱きかかえた。
思ったより軽かった。
「走って……」
「え、え……」
「何号室……?」
「……、千十号室です」
「ここよ……」
スミレさんはカードキーで中に入ると、すぐさまバスルームのドアを開けた。
「早く、トイレに座らせるのよ!」
僕は、茜さんをトイレの上に下ろした。
「ここは、何処……、……」
「トイレよ……、ヒロ、茜を立たせて、パンツ脱がすから……」
「え、え……、……」
「早く! ……」
僕は、茜さんの前に立って、脇を両手で抱えると、茜さんの顔が、僕の顔の横に来た。
その間に、スミレさんはキュロットパンツとショーツを一緒に下ろした。
「なに、ラブシーンやっているのよ。座らせて……」
「……、あ、はい……」、僕はまた茜さんを、そっとトイレに座らせた。
「ここ暑いわ……、服、脱がせてー、……」
「後でね……、おしっこでしょう。シーシーしなさい……」
「おしっこ……? 暑いわ……、もう寝るから……、服、脱がせてー、……」
「駄目よ……、おしっこしてからよ……、はい、シー、……」
「僕、外に出てますから……」、二人を置いて、バスルームのドアを閉めた。
入った部屋をよく見るとダブルベッドが部屋の真ん中に置かれていた。
窓際にはソファーとテーブル、座っていても都会の夜景が奇麗によく見えた。
「……、ここじゃー、泊まって行けないな……」、窓の外を見て、一人呟いて見た。
「ヒロー、……、茜をベッドに運んで……」
僕がバスルームに入ると、茜さんは裸でいた。
「え、え、……、ちょっとまずいんじゃーないですか……?」
スミレさんは、うなだれて倒れそうな茜さんを両腕で支えていた。
「なに、子供のようなことを言っているのよ!」
「……、子供じゃーないから、問題なんですよ」
「いいから、運んで……」
「え、えー、……、どうやって……?」
「もー、さっきみたいに、お姫様抱っこでいいから、ベッドに寝かすのよ!」
「……、はい……」、僕は、裸の茜さんを抱きかかえた。
「ここ、何処……、……?」
「ホテルですよ……、今からベッドに行くんですよ」
「なんで、裸なの……?」
「茜さんが、服、脱がしてって言ったから……」
「私のこと好きなの……?」
「もちろん、好きですよ……」
「じゃー、キスして……?」
「あとでね……」
「ダメーよー、……、今して……」
「あ、茜さん、……、暴けないで、ください……」
「キスして、キスして……、あー、あ、気持ちいい……」
「まだ何もしていませんよ……、茜さん、ベッドに寝かせますよ」
「ダメー、もっと歩いて……」
茜さんは、僕の首にしがみ付いて、離してくれない。
「んー、じゃー、窓のとこまで……」、窓の近くまで行ってベッドまで帰ってくると……
「ダメー、もっと歩いて……」
「もー、茜なんか、ベッドに放り投げてやりなさい!」、スミレさんの呆れたような言葉。
「ダメー、歩いて……」
「……、茜さん、ベッドに下ろしますよ」
「ダメ、ダメ、ダメー、……、……」
僕は嫌がる茜さんを無理やりベッドに寝かせて、首にしがみ付いている腕を引き離した。
「ダメ、ダメ、抱いてよ……」
「もうー、しょうがないわね……」
スミレさんは、その場で服を全部脱いで、茜さんのいるベッドに上がって添い寝をした。
それから覆いかぶさるように茜さんを抱きかかえ、足を絡ませて、深く深くキスをした。
「う、う……、う……、……」
僕は、二人を見ながら、一歩、二歩、後ろに下がり……
「僕……、研究に帰りますから……」
「あら、いいのよ……、三名で泊まるって言ってあるから、ちょっと待ってて、あとで、いいことしましょう……」
思わせぶりのスミレさんの言葉……
それで、僕は帰れなくなってしまった。
僕は、ダブルベッドの二人を見ながらソファーに座った。
一分もしないうちに、茜さんは静になって、眠ってしまったようだ。
スミレさんは、そっとベッドから抜け出して、茜さんにうわ布団を掛け、バスルームの横のクローゼットから、真っ白なバスローブを着て、僕の前に座った。
「二人で、外で逢うなんて、初めてね……」
「三人ですけどね……」
「何か、ルームサービスで頼みましょうか……?」
「いえ、特に何もいらないですよ……」
「茜の裸で、もう胸がいっぱいとか……?」
「そんなんじゃー、ないですよ」
「私の裸も見たしね……」
「もうー、そんなんじゃーないですよ」
「でも、ジャンパンでも頼みましょう。二人の夜を祝して……」
「だから、三人ですよ!」
スミレさんは、フロントに電話をした。
「でも、なぜでしょう……、酔っている女の人って、色気がないですね。普段の茜さんの方が、ゾクゾクします」
「ゾクゾクって、やりたいってこと……?」
「表現が、あまりにもストレートで、返事に困りますが、ゾクゾクですよ」
「ムラムラ、じゃーないのね……?」
「その言い方もストレートですけど、ムラムラと違った、……、やっぱり、ゾクゾクなんですよ」
「ゾクゾクするのね……、じゃー、今の私はどんな感じなの……?」
「え、……、ゾクゾクです」
「じゃー、今の私はゾクゾクする女って、言うことね。それっていいことなのかしら?」
「もちろん、最大の褒め言葉だと思いますよ。何も感じないと言われるよりも、ゾクゾクするほど魅力的な女性と言うことですから……」
「そう言うことね……、ゾクゾクの次に魅力的と付くといいわね。じゃー、これは、どうかしら……?」
スミレさんは、バスローブの右の襟だけ少し開いて右の乳房を見せた。
「……、そ、それは、……、ドキドキですよ……」
「うー、これは、ドキドキなのね……」
「もー、スミレさん、僕をおもちゃにして遊んでいませんか……?」
「えー、おもちゃなんかにしてないわよ……、貴方を誘っているのよ」
「だから、駄目ですよ……、三人なんだから……」
その時、フロントからの電話が鳴った。
僕は、会話を切るように電話に出て、ルームサービスのシャンパンとオードブルが乗ったワゴンを受け取った。
「じゃー、二人の夜に乾杯しましょう……」
「二人じゃなく、三人ですよ」
「じゃー、三人の夜に、……」
二人で、シャンパングラスを合わせて、チンと鳴らして、乾杯した。
「美味しいわね……、……」
「これ高価なんじゃーないですか……?」
「いいじゃないの……、経費だから……」
「知りませんよ……、経費で落ちなくても……」
「その時は、ご馳走してね……」
「僕が、ですか……?」
「当たり前でしょう。男なんだから……」
「こう言う時だけ、男なんですね」
「何か、不服そうね……、二人も女を裸にして……」
「だから、僕は、裸にしていませんよ……」
「じゃー、私が裸にしてあげるわ……」
「……、いえ、ちょっと、心の準備が……」
「それなら、もっとお酒を飲みましょう。これ、美味しいわ……」
乾杯……、グラスの中の気泡が上がる……、チンと軽い音がする……
「ほんとうに、美味しいです……、シャンパンって素敵ですね。スミレさん、プロジェクトが終わったら、どうするんですか……?」
「どうもしないけど……」
「……、僕と大学の私立天文台に行きませんか……?」
「それって、プロポーズ……?」
「……、いえ、ずーと、一緒にいたいと思って……」
「えー、やっぱりプロポーズじゃないの……?」
「……、そうですね……」
「いいわよ……、結婚しましょう……、私、貴方の赤ちゃん欲しいわ……」
「……、赤ちゃんですか……?」
「もちろんよ……、二人のために乾杯しましょう……」
乾杯……、その声と共に、グラスが揺れる……
「……、スミレさん、酔っていませんか……?」
「酔ってなんかないわよ……、真面目に言っているのよ。赤ちゃん欲しいわ。貴方の……」
「さっき、何処かで聞いたセリフだけど……、乾杯しましょう……」
「二人の赤ちゃんのために……」
更に、もう一度、乾杯……




