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デイズと過ごした一夜

 ロロは、ベッドの上で、差し込む朝日で目が覚めた。

 隣には、裸のデイズが眠っている。

 黒い目で、黒髪ショートカットの、ロロの彼女。

 昨晩は、初めて繋がった快感で、ついつい激しくしすぎてしまった。


 ロロが、デイズの寝顔を見ていると、デイズも薄く目を開けていた。


「あれ?起きてたの?」

「今起きた」


 デイズは、白い肌を(さら)し、起き上がる。

 そして、ロロの胸に抱き着く。


「夢じゃなかったんだ」


 そう言って、頬を赤くするデイズ。

 ロロは、デイズを抱き返す。


「デイズ、可愛かったよ」

「……恥ずかしい」


 デイズは、照れて(うつむ)いた。

 ショートカットの黒髪が、さらさらと落ちる。


 今日は土曜日、学園が休みの日。

 ロロは、自分の日課のことを考える。

 墓場の村に住んでいる、何人かのゾンビが、そろそろ(ちり)へと還るだろう。

 『マナの(きずな)』の効果で、なんとなくわかる。

 みんなに挨拶に行こう。


 みんな、幸せな最期を迎えられるといい。

 ロロの人生は、そのために存在してきたのだ。

 今となっては、デイズのためにも生きることにしたが。


 デイズが、ロロに抱き着いたまま聞いた。


「ロロ。ティナ・シールさんとリリアナさんのこと、どうするの?」

「ん?なにが?」

「だって、あのふたり、ロロの事、好きでしょ、絶対」


 ロロも、自惚(うぬぼ)れでなければ、ふたりの気持ちには気付いていた。

 だが、恋愛に(うと)いロロは、踏み込んでいいのかどうかが分からなかった。

 下手に突っ込んで聞いて、傷つけてしまいそうで怖かった。

 それに、今はデイズがいる。


「僕の彼女はデイズでしょ」

「そうだけど、第二婦人とか第三婦人とかにしないの?」

「ん?」


 ロロには聞き慣れない言葉が聞こえた。

 第二婦人。第三婦人。


「えっ……と、僕、平民だからあんまり貴族の生活には詳しくないんだけど。

 貴族だと普通なの?その、奥さんがいっぱいいるとか」

「うーん。普通じゃないかなぁ。

 私も、お母さん、第三婦人だし」


 それは初耳だった。


「あれ?じゃあ、お兄さんとかお姉さんとか、母親違うの?」

「うん。違うよ。私のお母さんの子供は、私だけ。

 ほら、私、魔法使うとき、目とか髪の色変わるでしょ?

 あれ、私のお母さんの体質」


 デイズが、人差し指を立てて、自分の身の上をあっさり説明する。

 ロロの頬には、汗が一滴。


「そ、そうなんだ……」

「うん、そう。

 だから、あのふたりも、恋人にしてあげた方がいいと思うんだよね。

 好きな人と結ばれないって、やっぱりつらいよ」


 まさか、デイズの方からそんな提案されるとは思ってもみなかった。

 貴族と平民で、こんな部分にも考え方に違いがあるとは。

 意外過ぎて、生返事しかできない。

 ロロは、それでもやはり悩む。


「うーん。か、考えとく……」

「うん。そうしてあげて」


 頭が追い付いていかなかった。

 複数人の彼女。

 たしかに、ティナ・シールもリリアナも、かわいい。

 ひとたび思いついてしまえば、その事が頭から離れなかった。


 彼女、三人か~。

 身体、持つかなぁ。


 ロロは、昨晩のデイズとの情事(じょうじ)を思い出す。


 デイズひとりに、あんなに(おぼ)れてしまったんだ。

 そこに、ティナ・シールとリリアナが加われば……


 ロロは、強い快楽の予感と、強い疲労の予感で、板挟みであった。







 その翌週の月曜日。

 二時間目が終わった小休憩で、ロロは、墓場の村のゾンビたちの、この世に留まれる残り時間を、ノートに書き込んでいた。

 このノートは、昔、蘇らせた人の遺族から、感謝の印として貰ったもので、鉛筆や消しゴムを使わなくとも、魔法を込めて念じるだけで中身が書き変わる、優れ物だった。


 ここ二日間の土日で、六人のゾンビが、塵へと還って行った。

 みな、幸せに死ねただろうか。

 ロロは、常に死者の安寧(あんねい)を願う。




 今日の三時間目と四時間目は、二時間通しで、魔法を使った実践稽古だ。

 模擬戦フィールドを借りて、自分に付いた教師と戦う。

 ロロの相手は、フローレンスと、その眷属(けんぞく)の双子の執事。

 ロロも、眷属二人と組んで、三人で戦う。


 いつもは、ムラサメとティナ・シールの二人組が鉄板(てっぱん)だ。

 だが、ティナ・シールの代わりにリリアナを入れてもいいかもしれない。

 リリアナは、超遠距離が得意分野だが、接近戦も強い。

 あの目茶苦茶(めちゃくちゃ)に頑丈な黄金の弓で、殴打するのだ。

 そこらのメイスやハンマーよりも、遥かに威力が高い。


 がしゃどくろは、出す気はない。

 デカ過ぎ、目立ち過ぎだ。




 そんなことを考えながら、体育着に着替え、模擬戦フィールドへと向かうロロ。

 模擬戦フィールドの前では、フローレンスが元気に手を振っていた。


「やほー!ロロ!こっちこっち!」

「おはようございます。フローレンス先生」

「今日は、誰出してくるんだい?」

「それが、まだ悩み中で……」


 その時、デイズに付くはずの女性の火炎術師の教師が、ロロたちに声をかける。

 この女性教師は、ロロとデイズが付き合っているのを知っている。


「ネクロマンサー君、デイズさん、知らない?」

「えっ?まだ来てないんですか?」


 デイズはいつも、みんなより早く来て、ストレッチをかかさない。

 遅れてきたことなんて、一回も無かった。


 ロロは、フローレンスと顔を見合わせる。

 ふたりとも、何か嫌な予感がした。


「フローレンス先生。僕、デイズ探してきます」

「うん。それがいいね。私たちも探すよ」


 フローレンス先生は、自分の影に杖を向ける。

 フローレンスの影が、墨汁を垂らしたかのように広がり、そこから二組の青白い手が伸びてくる。

 双子の執事の青年たちのゾンビが、フローレンスの影から出現した。


「ジョニー、ヘンリー、話は聞いてたね?行くよ!」


 双子の執事は、揃って返事をする。


「はい!」


 ロロも、自身の影から、アイボールのアイを出現させ、駆け出した。







 デイズは、学園の校舎の廊下を走っていた。

 やたら巨大な建造物の学園だが、今はその巨大さを(うら)んでいた。


 デイズの左手には、金属の手錠(てじょう)がかけられていた。

 着替えが終わって更衣室を出たデイズに、領主の息子キールが、いきなり手錠をかけたのだ。

 それ以降、なぜか魔法が使えなくなってしまった。

 この手錠のせいなのだろうか。

 炎を浴びせることも、炎で疾走することもできない。


「……だれか!たすけて!ロロ!」


 その時、デイズの脚に、真鍮(しんちゅう)の鎖が絡みつく。


「きゃっ!」


 足を取られ、廊下に倒れるデイズ。

 その真鍮の鎖は、廊下の向こうからやってきたキールの体育着の(そで)から出ていた。


「捕まえた。ったく、逃げんなよ。面倒くせえ」


 脚に(から)みついた真鍮の鎖は、倒れたデイズを、逆さ吊りにして持ち上げる。

 デイズの逆さになった体育着が(めく)れて、肌が見える。

 デイズは、咄嗟(とっさ)に体育着を抑えて、肌を隠した。


「隠すな隠すな。どうせ、今から全部見られるんだから」


 キールは、デイズを持ち上げた鎖を操り、近くの空き教室に連れ込んだ。

 キールの袖からは、次々と鎖が伸びてきて、デイズの両手両足を縛る。

 手足を縛られたデイズは、抵抗しようとするも、鎖が強すぎて(ほど)けない。


 キールは、デイズの体育着のシャツを(めく)る。

 薄紫の、ブラジャーが見えた。


「嫌っ!」


 思わず顔を(そむ)けるデイズ。

 キールはニヤニヤした顔で、デイズの胸を(なが)める。


「あの平民の目の前で、ホントは()りたかったんだけどな。

 まあいいや」


 キールはそう言い、デイズの目の前で。


 自分の服を脱ぎ始めた。










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