キース・アーヴィング
何をどうやったのか、所長は本当に二日後に僕宛に書状を送ってきた。
まぁ所長になるぐらいの人にとっては、審議委員を丸め込むなんて朝飯前だろうけどね。
…副所長はそういうの苦手そうだけど。
デトパルトの屋敷からセレスがあの人に連れ去られてから、僕はなんとか理性を総動員して事後処理にあたった。
今にも指先が氷り出しそうなくらい、魔力を抑えるのがギリギリだった。
セレスは僕にとって特別だ。
そう、あの日から。
-6年前-
「緊急出動要請です!!」
バターンッと扉が開いて、イライザ女史が現れる。
「何があったんですか?」
僕は尋ねる。
「緊急依頼書によると、王都近郊の邸で魔力暴発によると思われる爆発事故発生とのこと」
「爆発事故だぁ?そりゃ王都の警邏の仕事だろう?」
エイデンがイライザ女史に口答えする。
「お黙りなさい!私が何も考えず依頼書を運ぶとお思いですか?ここ、ここをご覧なさい!」
指し示された緊急出動先の邸主は…
「ゲオルグ・ガードナー…?って副所長ん家じゃん!あれ!?副所長は!?」
「確か今日は朝から王宮に呼ばれてる」
ケインズ先輩が応える。
「そういや、副所長って最近お子さん引き取ったって話じゃなかったか?」
「その通りです!エイデン・クグルト!いつまでもぼんやりしていてはいけませんよ!さぁ出動なさい!」
僕たちは王宮の副所長宛に緊急通信を飛ばし、王都の邸へと向かった。
向かった先で目に飛び込んで来たものは、凄まじい勢いの炎。
魔力暴発にしては大きすぎる…そんな考えがチラッと頭をよぎったが、要救助者がいる以上ことを急がねばならない。
「ケインズ先輩!中へは僕が行きます!相手が炎なら僕の方が相性がいい!」
「わかった!エイデン、お前は空中から消火だ!俺は地上の警邏を援護する!」
「イエッサー!!」
あの日邸にいた君は、恐怖で空色の目を見開いたまま動けずにいたよね。
…僕が声をかけるとフッと気を失ったっけ。
王宮からすっ飛んで帰って来た副所長の狼狽と焦燥は、それはそれは激しいものだった。
僕たち第一研究室の皆の前で、床にくっつくんじゃないかとばかりに頭を下げて、君の秘密を話してくれた。
君をみんなで守るため、毎日毎日研究所の試験対策やったよね。
ずっと妹のような存在だと思ってた。でも、日に日に大人になっていく君から目が離せなくて、誰の目にも入れたくなくて、それが間違いだと気づいたんだ。
僕は待つつもりだった。…君が大人になるまで、もう少し。
君が僕をヒーローなんかじゃなくて、ただ一人の男だと気づくまで。
なのに………。
「ったく、とんだ伏兵の登場だよ……」
今から僕は、おそらく人生最大のライバルと対峙する。




