魔力を取り込め!
「じゃあここからが本番。君の目はちょっと不思議なんだよね。魔法自体は見えてる。でも魔力が見えない。今僕は君の目に魔法をかけた。その目の状態で魔力の流れを確かめながら自分で体内に魔力を取り込むんだ」
相変わらず早口で語彙数が多いアレンさまに、耳を集中して何とか食らいつく。
「魔力を取り込む…そんなことできるんですか?」
「それを訓練するんだよ。見ててごらん。」
そう言ってアレンさまは右人差し指をスッと上に向けると、クルクルとゆっくり回し始めた。
すると指先から少しずつ銀色の粒子が溢れてきて、空中に螺旋を描く。
「これ…さっきの皮剥きの?」
「うん、正確。これが魔力の流れだよ。僕は今内側から外側に魔力を流してる。君は逆をやるんだ」
「逆…というと、外側から内側に魔力を流す……?」
頭の中でイメージしてみるが、外から内へ〝流す〟という事が今いち掴みにくい。
外から内へは…
「取り込む……」
アレンさまが頷く。
「これが出来たら卒業試験をやろう。君の魔力の秘密もほぼ解明できるはずだ」
目の前の少女は、手の平を上にして銀色の粒子を掴もうとしている。すくってはこぼれる砂のような僕の骸を、その場に留めようとするかのように。
「きれい…か」
このおびただしい魔力の残滓を見て、おぞましいと思うものはいても、美しいと思う者などいないだろう。
邸に纏わりつく自分の魔力の醜悪な姿を見て、僕は溜息をつく。
「所長、今深呼吸してるんですけど、魔力取り込めてます?」
彼女が急に問いかけてくる。その様子が頬を膨らませたリスのようで可笑しい。
「ははは!その調子だと水滴一つ分の魔力を取り込むのに一日中かかりそうだね」
「む〜……」
「じゃあヒントだ。ゲオルグが、一番初めに君に教えたことは何?」
「副所長が…?」
「そう、一番最初にやったこと。それの逆をやるんだ」
…うまくいかない。何をどうやってもうまくいかない。そもそも今までどうやって魔法を使ってたのかもあやふやだ。
人の魔力を奪っているとばかり思っていたから、ちゃんと考えたことがない。
違う。確かに私は人の魔力を使っている。言葉が変わっただけで実態は同じだ。
子どもの頃は自分がそんなことしてるって気づいてさえいなかった。…つまりあの頃は自然に魔力を吸収していたってこと。
今は相手に触れなければそんな事にはならない。
……きっかけは何だっただろう。
私は思考の渦に沈んでいく。




