新しい訓練
「やっぱり同じ作業でも、お喋りしながらだとダメみたいだね」
あらかたの芋の皮剥きが終わった頃、アレンさまは唐突にこんなことを言った。
「ダメって何がでしょうか?」
「ん〜、ま、これも想定内だったけど。よし!今日は訓練のレベルを一段階上げよう!」
「え?え?」
訳もわからず腕を引っぱられ、どこぞへと連れて行かれる。
「わぁ〜、このお邸にこんな場所があったんですね!」
そこは艶を競うように花々が咲き乱れる幻想的な中庭。
「あれ?この花とこの花って同じ時期に咲きましたっけ?」
正直花を愛でるような心根は持ち合わせていないが、流石にクリスマスローズとひまわりが一緒に咲かない事ぐらいわかる。
「あぁここは変な庭だよね。手入れしてた人が変な人だったから」
「そうなんですか。ペットは飼い主に似るって言いますもんね。アレンさま、どんな手入れしてたんですか?」
「……………。」
返事が無いが、とりあえず無視する。
「ところで、新しい訓練というのはこの花たちに関係あるんですか?」
「いや全然。広い場所の方がいいかなと思って」
「……はぁ」
よくわからないが、生徒は先生に従うのみ。
「じゃあセレス、ちょっとこっちに来て」
「はい」
私はアレンさまが立っている庭の真ん中に駆け寄る。
「今から君に僕の魔力をちょっと分けるね」
「え?」
「はい、目を閉じて」
「え!?」
アレンさまの指が目の前に近づく。
私は反射的に目を閉じた。
-フワッ-
触れるか触れないかの一瞬。
「はい目を開けて」
その声におそるおそる目を開く。
キラキラキラキラ…目の前に広がるのは眩いほどの銀の粒子。まるで蝶の大群のように空気中を舞い踊っている。
「これ…は?」
「何が見える?」
アレンさまは穏やかに微笑みながら尋ねる。
「ものすごい量の銀色のキラキラが見えます」
「よかった。これはね、魔力だよ」
「魔力?魔力って目に見えるんですか?」
「うん。体に魔力を宿す人間には基本的に見える」
これが魔力…。
幻想的な花々よりも一層美しいその銀色の粒子にしばしみとれる。
「きれい……」
「きれい?これが?」
「はい。とても…きれいです」
本当にきれいだ。まるでお伽噺の中の世界みたい。
ふとアレンさまを見ると何だか顔が赤い。
「どうしました?何か変なこと言いました?」
「あ、いや、初めて言われたから。その、きれいとか。」
「そうなんですか?みんな見慣れてるからそう思わないのかなぁ。」
「…ちなみに、これは僕の魔力ね。」
「え?僕の?」
「そう、この邸に今いるのは僕と君だけだから、これは僕の魔力」
「へぇぇ!じゃあもしかして、副所長とか他の方々の魔力は違う色だったりするんですか?」
「そうだね。だいたい髪の毛の色に似てるけど、魔力の色は人それぞれ違うよ」
「へぇぇ!知らなかった!すごいすごい!!」
魔法使いのみんなが見ている景色に関心しきりだった。




