仕事とは
もう朝だ。間違いなく朝のはず。でも認めたくない。…だって寝たのは3時間前だ。
結局昨日あれから通常業務を捌いて報告書を仕上げた時には日付が変わろうとしていた。
驚くことにその時点で退勤しているのは職員の半分くらいだった。
「…研究所が不夜城って呼ばれてる理由がわかったわ……」
…ついでに自分が穀潰しと呼ばれる理由も明確に理解したが、それはそれである。
「起きるのよ、セレス。あなたなら出来る。だってあなたは無遅刻無欠勤いつもニコニコ定時退勤…うりゃーー!!」
布団を蹴飛ばしガバッと体を起こす。一瞬クラっと目眩がしたが、何とかベッドを抜け出した。
毎朝のルーティンで何気なく朝食を用意したが、そこでふと気づいた。
「…なんか、ご飯食べるの久しぶり…?」
昨日の朝は間違いなくいつものコーヒーとシリアルで朝食をとった。昼は謎肉サンドイッチを食べ損なった記憶がある。夜は…
「…それどころじゃなかったものね」
今までの日常からのあまりの変化に体がついていけていないのだろうと、思考の片隅に追いやったこの小さな疑問。
近い将来、あの時もっと深掘りしておけばよかったと、少しだけ後悔するのだ。
「やぁコールデンおはよう。よく起きてこれたな〜」
研究所の自席で今日の予定を確認していると、同期入所の魔法使いがのんびりとした口調で朝の挨拶をしてくる。
彼はエリック・ゴードン。ちょっと垂れ目の穏やかな人だ。
「おはようゴードン君。…相変わらず朝から爆発に巻き込まれたような寝癖だね」
「ははは!僕は装飾系の魔法は苦手だからね。自分で寝癖なんか直す時間があったら少しでも寝てたいからさ。それより昨日初任務だったんだろ?どうだった?」
「う〜ん、どうだった…んだろう、何せ初めてのことだらけで、与えられた指示をこなすのに必死って感じだったよ」
…まぁ掃除をしてただけだが。
「へ〜、まぁいつも通りな様子でよかったよ。僕は初任務の次の日体がしんどくて寝坊しちゃったからね」
「いや…それに関してはギリギリだった。ていうか任務から帰った後の書類捌きの方がダメージ大きかったよ」
「ああアレね。ごめんね〜。チームのみんな君が任務に着いたこと知らなくて、いつものように仕事振っちゃって。あーでもコールデンに頼めないとなると、今日から徹夜だなぁ」
「私ちょっとは役に立ててた?確かに報告書作成ってすごく面倒だよね」
「そうなんだよな〜。ほんとコールデン様々だったのに」
いたずらそうに口の端を上げながらそう言って、エリックは自席へと着いた。
誰もが認める魔法研究所の穀潰し。私が5年間やってた仕事は、主に同僚が持ってくる報告書の下書きを清書して、正規の書類として仕上げることだ。
その他資料探しや会議の準備などもあるが、一番仕事量としてボリュームがあるのが報告書作成の代行なのだ。
「私は任務1つだけだけど、みんな2、3個掛け持ちは当たり前だもんね…。頭が下がるわ」
しみじみと同僚の苦労を感じていると、強面上司から低い声で呼び出しがかかった。
「セレス・コールデン、昨日の件で2、3確認したいことがある」




