伝家の宝刀
-『それよりキースとか何とかいうヤツの方を心配した方がいいんじゃない!?』-
今思い出してもムカムカする。
なーにが『キースはいいんだ』だよ。
僕がダメで他の人間はいいなんてこと今まであった?
なのにアイツ…ゲオルグは、一向に彼女を寄越さない。ちょっと気絶させただけじゃないか。え?違う?覚えてないよ、そんな細かいこと。
どうせアイツは僕が魔法薬の治験に使う…とか、新魔法の実験体に使う…とか思ってるんだ。いつの話を蒸し返してるんだ。
だいたい解明できていない事象を前にして検証を止めろだなんて、研究者の風上にも置けないやつだ。
そう思ったから、伝家の宝刀を抜いたってわけ。
あーんなやたらと面倒で、何かと面倒で、とにかく面倒くさい肩書き押し付けられてるんだから、別に1回ぐらい使ったっていいでしょ?
…まぁ今となってはゲオルグの言うこと聞いておけばよかったかな、って毛先ほどは思ってる。
-1ヶ月前-
『ァレーーーンッっっ!お前どういうつもりだ!なぜ勅命が出るっっ!?お前何をしたぁっっっ!!』
「うるさいなぁ、そんなに叫ばなくても聞こえてるよ」
そう言って僕はピアス型の魔法通信機を耳から離す。
『お ま え な あァァ!勅命っていうのは、こう、何だ!国の危機とか未曾有の大惨事とか、そういう時に出るもんだろうが!なんで…なんで…お前の世話が……!!』
「えー?陛下の鏡の中にちょっと挨拶しに行っただけだよ。ロクサーヌ嬢はお元気ですか?って。あ、帰りに王妃殿下にも挨拶に行って来ますって言ったら、〝何が望みだ〟って向こうが聞くからさ?断るのも失礼じゃない?だって相手は陛下だし。だから一筆書いて貰ったってわけ」
『か…か、仮にも公僕が!国王を脅迫するなっっ!』
「人聞き悪いなー」
『………俺は今日をもって退職する』
「えー何で?」
『お前には付き合いきれん!』
「んじゃ僕も辞める」
『……ぐぬぬぬぬ。…とにかくだ!セレスにはちゃんと説明しろよ!』
ブチッ!
うるさいなぁ。元はと言えば自分が勝手に匿名任務にかこつけて彼女を寄越したんだろ?
…今さら彼女に何説明するのさ。




