銀髪優男
-見られている。しかも堂々と。私の一挙手一投足が-
副所長からの任務継続の命を受けて、1週間ぶりにこの邸に戻って来た。
また最初のように入り口で一悶着あるか?と気合を入れて呼び鈴を鳴らそうとしたその時…パタリと扉は開いた。
ちょっと拍子抜けしながら邸内を見やると、目の前にあの…銀髪優男が立っていた。
「来たんだ?」
そう言って美しく薄く笑う彼は、先日のやり取りなんか忘れたとばかりに続ける。
「今回は何の任務?前回の続き?」
ハッと意識を目の前に集中させ私は答える。
「はい。前回の任務の続きです。…目障りだとは百も承知してます。ご迷惑を……」
「あぁ、いいよ。好きにして」
そう言って今日は薄い青のローブを翻す。まるで着いて来いと言わんばかりに。
「はぁ……」
副所長に言われた通り、確かにこの邸は3階まであった。階段はきっと玄関ホールの紙山で隠れていたのだろう。
…しかも明らかに1階より………汚い。
「なになに?掃除するの?へー!君の言う掃除、ちょっと見ててもいい?」
…そして冒頭へ戻る。
「その道具は何?何でいちいち水を入れるの?その布何に使うの?」
「これはバケツで、これは雑巾。バケツに汲んだ水で雑巾を濡らして汚れを拭き取ります」
「さっきパタパタしてた羽で汚れは取ったんじゃないの?あれも汚れを取るものだって言わなかった?」
「あれはハタキです。埃を巻き上げて落とす道具です」
「へえ!僕掃除道具は箒しか知らなかったなー。箒もさ、掃除道具として習ったんじゃなくて、古の魔法使いがそれで空飛んでたって教科書に書いてあってさ、子供の時に手作りする実習があったんだよね」
「へー………」
「だいたいさ、何で汚れを取るのにそんなに何度も違う作業をするの?魔法陣を書く時みたいに何か決まりがあるの?順番間違えたら掃除は失敗?」
…深呼吸だ、セレス。
「…アレンさま?そうなんです。順番が狂ってしまうと掃除は失敗なんです。また最初からやり直しなんですよ。だから今重要なところなんです。少し集中させて頂いてよろしいですか?」
ニッコリ笑って言ってやった。というか…少しその口を閉じろ!!
私の言葉に何だか大ごとが起きるとでも思ったのだろう。銀髪優男はようやくその口を閉じて静かになった。
ジーっとこちらを見つめる視線は痛かったが、途中からは『10年寝るぐらい暇なんだしね』とあさっての方に考えが辿り着いて、彼を意識の外に飛ばした。




