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ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


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40/120

40.おじさん、論理的無敵

「は? なんだ? 呪殺譜は? ない……!? 使用された? なんでだ!? ふざけんなっ!! バグってんじゃねえか!!」


 そのクレームは全く持って正当であった。


 奇跡と言えば聞こえはいいが、この盤面において、ゲーム的に不公正(チート)なのは完全にジサンの方であった。


(…………何が起きた?)


「マスター…………マスタぁあ……!」


 本人らもよくわかっていない。サラでさえ。

 だが、ジサンには何の変化も起きず、呪殺譜は消滅した。

 その結果だけがそこに存在した。


 ゲーム開始時に半分死にかけていたジサンはリカバリ処理が施された際に、"ゲーム的死亡を司る設定値アドレス"、いわゆる死亡フラグが破損していた。

 これにより、ジサンは死亡フラグが書き変わることがない実質的な不死、すなわち”論理的無敵状態”となっていたのだ。


「あの……なんかすみませんが……」


 ライの目の前にはジサンがいつの間にか迫っていた。


「っ……!? うわぁああああああああ!! 化け物がぁああ!!」


(ひどい…………スキル:魔刃斬……)


 ジサンは剣を振り降ろす。


 ライの体幹を真っ二つにするように斬撃エフェクトが発生する。


「ぎゃぁあああああああ!!」


 ルールに守られているので死にはしない。


 だが……オーバーキルもいいところだ。





「うわぁあああん! マスター!!」




「!?」


 サラが飛び込んで来る。


 両目の目尻に涙が一粒ずつ溜まっている。


「ごめんなさい、この無能なサラをお叱り下さい!!」


「えっ!?」


「離れてしまいすみません……! それに、手段はあったはずなのに頭が真っ白に……!」


「…………」


 ジサンはサラの頭にぽんと手を置く。


「はうっ……ごめんなさいっ!」


「俺の方こそすまんな……もう死んでもいいなんて思わない……」


「…………当たり前です……」



 ◇



「で、こいつらどうするの?」


 サイカが自発的に渡してきた魔具”拘束具”によりゲーム的に拘束された三人を見て、チユが確認する。



 ==================================

 ■魔具:拘束具


【効果】

 行動停止状態のプレイヤーを拘束する。この拘束により行動停止が延長されるが、拘束されている者に対し、危害を加えることはできない。

 ==================================


 ツキハが応える。


「自治部隊に引き渡して判断してもらうのがいいかな」


「そうね、わかった。ジサンさんもそれでいいですか?」


「はい、異論ありません」


 となれば……


 ジサンはへたり込むサイカの元へ訪れる。

 離れませんの言葉の通り、サラが付いて来る。


 そして三人同様に行動停止とするべく剣を振りかざす。


「……助けてくれて……ありがとう」


(…………)


「そして……謝らなくちゃいけない」


(…………)


「あの時……素直になれなくて……本当にごめんなさい……」


(……!)


(……あの時とは……学生時代のことだろうか……? 正直、地下ダンジョン30Fでの出来事までは思い出したくもない過去だった。だが、今はもう何とも思っていない……)


「あれ……? どうしてだろう……もっと謝らなくちゃいけないこと沢山あるのに……」


 サイカはそんなことを言いながらポロポロと涙を流す。


「傷つけるって分かっていたのに……ちっぽけなプライドに負けてしまった……その上、逆恨みまでして…………本当に弱い……それ以上に最低な奴だ……」


(彼女もまたずっとあの小さな出来事を引きずっていたのだろうか……)


 サイカは自責の言葉を口にし、拘束されたパーティメンバーに視線を向ける。


「……仲間ももういない……いえ……仲間だと思っていたのは私だけだった……」


(…………)


「全て自業自得ね……」


 サイカは今、何も持っていない。

 それはまるで、ゲームが始まる前の自分自身(ジサン)のように。


 そしてなぜか不意にひきつるような笑顔で言う。


「虫がいいってわかってる……だけど、一つお願い……聞いてくれないかな……」


「……?」


「私を……ゲームオーバーにして……」


「……!?」


「その子なら……できるのでしょう?」


 サイカはサラを見つめる。




 ◇◇◇




[ユウタ:お前ら、一体どこに?]


[ツキハ:あ、ごめん、ユウタのこと忘れてた。今、トウキョウ]


[ユウタ:は? え?]


 彼らの引き渡し等を終え、別れ際、ツキハがポチポチとメッセージを打っていた。


「ごめんなさい、ユウタからでした」


「あ、そういえば置いてきてしまっていましたね……大丈夫ですか?」


「大丈夫、大丈夫! それより、改めて今回は本当にお世話になりました」


「いえ、こちらこそ」


「最後、ちょっと……いや、かなりヒヤリとしましたが、結果的に何もなくてよかったです」


「そ、そうですね……」


「でも……どうして大丈夫だったんですかね?」


「うーん、状態異常耐性が有効だったのか……呪殺譜に不具合があったのか……」


(…………もしくは、ゲーム開始の時に出た謎のメッセージと関係あるのだろうか……しかし、なにぶん、自殺中だったもので意識が朦朧としていてあまり覚えていない……)


「そうですね……よくは分かりませんが本当に何もなくてよかったです。結果的にはよかったですが、どうすればあの危機を回避できたかこちらでも考えてみます」


「はい……」


(今更だが、少し無謀過ぎた……こちらも反省しなければ……)


「それじゃあ……ちょっと名残惜しいですが、これで一旦、パーティは解散ですね……」


「はい……」


「あの! ……もしよければ強敵と戦う際は、またヘルプをお願いしても……いいですか?」


「え?」


「あ、いや、全然、嫌だったらいいんですけど……えーと、えーっと……」


 ツキハは不安そうな顔で尋ねる。


「…………えぇ。私などでよければ……」


「……っ! ……はい! 有り難うございます!」


 ツキハは目を細めて微笑む。




 ◇◇◇




 一週間後。


 ジサンとサラは牧場を訪れていた。


「旦那様! おかえりなさいませ」


 牧場フロアに入ると、来ることを予期していたのか真っ先にディクロが迎えてくれる。


 そして……


「小嶋くん……久し振り……って程でもないか…………」


 そこには農夫姿でつなぎなどを着て、麦わら帽子を被ったサイカがいた。


 ==========================


 牧場レベル:3


 生産力: 6982

 総戦力:46424


 モンスターリーダー:ディクロ

 ファーマー:サイカ


 解放施設:

 自動訓練施設、優勢配合施設、生産施設


 生産対象:

 フックラ・オーク(素材)

 ソラノ・ドラゴン(素材)


 精霊:

 フレア、シード、リトーション・シャドウ


 ==========================



 サイカは罰を課されたのである。



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― 新着の感想 ―
プライヤー有利のバグは修正しない方針wwアイテム補填くらいはしてあげて泣 あの伏線はこういう意味だったんですねえ
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