114.勇者さん、打ち合わせ
2043年5月30日(襲撃イベント開始の二日前)。
エクセレント・プレイスの犯行予告があったその日のこと。
「要請に応じてくれてありがとうございます……月丸隊の皆さん」
「初めまして……P・Owerの隊長……えーと……」
「フェイドです」
「失礼しました……」
月丸隊の三名は最大規模の自治部隊P・Owerに招待され、都内某所の会議室にいた。
会議室側にはP・Ower側も三名おり、その中央にいるのがP・Owerの本部隊長フェイドであった。
「えーと、それでフェイドさん、どういったご用件でしょう? まぁ、大体、予想はつきますけど……」
「そうですね……まぁ、皆さんの予想通りかと思いますが……例の重要なお知らせ……いや、犯行声明の件です」
「……まぁ、そうでしょうね」
それは数日前、突然、全プレイヤーに配信された。
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【エクセレント・プレイスからの重要なお知らせ】
こんにちは、エクセレント・プレイスです。
突然ですが、我々はプレイヤーをゲームオーバーたらしめる手段を有しております。
この度、エクセレント・プレイスは下記のように四つの地域を同時に襲撃することを決定いたしました。
◇
日程:
2043年6月1日 13:00
場所:
トウキョウ、イバラキ、キョウト、オオサカ
(詳細は襲撃開始1時間前に発表)
ルール:
レイドバトル(即死適用)
◇
繰り返しますが、我々はプレイヤーをゲームオーバーたらしめる手段を有しております。これまでも魔王討伐を達成したパーティメンバーを討伐してきた実績がございます。
素晴らしい場所を守るためにエクセレント・プレイスは今後も正義を執行し続けます。
以上。
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「正直言って、未だに信じられない……エクセレント・プレイスがこんなことをするなんて……。数日前まで普通に情報共有の連絡を取り合っていたのです。それが今では音信不通となっている」
フェイドは肩を落とす。
「エクセレント・プレイスっていうとヒロさんか……。私も連絡先は知ってました……」
ツキハはすでにフレンドリストからヒロを削除した。
フレンドリストは片方が削除すると両者のリストから削除される仕組みだ。
フレンドリストに登録するメリットは大きく二つ。
①相手と遠隔地で連絡を取り合うことができること
②相手のHPなどの生命情報をリアルタイムで確認できること
とはいえ、二つ目はまめに確認する必要があり、あまり使いどころがない。
一方で隠れたデメリットもある。
それはフレンドリストにあることで”ステルス・ストーカー”というアイテムにより位置を把握されてしまう危険性があることだ。
逆に言うと、リストに残しておけばこちらから探知できる可能性もある。
しかし、リスクの方が大きいだろう。
ツキハはかつてヒロからは魔王:アルヴァロの情報を貰ったり、その後、悪事を働いたリリース・リバティのメンバーを預けたりという関わりを持っていた。
今となってはリリース・リバティのメンバーが死亡したのはモンスターの襲撃などではなく、彼らの所業であったと思えた。
「しかしあいつら、掲示板ならともかく、なんで重要なお知らせを使えるんだ?」
月丸隊の聖騎士:ユウタがそんなことを言う。
お知らせはこれまでゲームマスター側の機能であり、プレイヤーが任意のメッセージを発信することなど不可能であった。
「わからない……わからないが底知れぬ不気味さを感じるし、このメッセージが事実である確度を上げているように思える」
フェイドは険しい表情で続ける。
「それで本題ですが、月丸隊の皆さんに今日、いらしていただいたのは……単刀直入に申し上げて、彼らの迎撃にご協力いただきたいからです」
「……元より、そのつもりです」
「……! ありがとうございます! やはり月丸隊さんなら、そのように仰って下さると思っていました」
フェイドは安堵したように言う。
月丸隊の大義は”人々を守ること、AIから解放すること”。
このような状況で動かないようなら最初から命懸けで魔王討伐などしていないだろう。
「フェイドさん、ひとまず私の知り合いの強そうな人達に協力要請と、もし協力してくれるのであれば、調整をしてみます。場所がバッティングすると、どこかの地域に大きな被害が出てしまう可能性もあるので……」
「ツキハさん、ありがとうございます! こちらからも可能な限り、部隊を派遣し、情報連携を行います」
「承知しました……さて……まずはあいつらかな……」




