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~執事と恋したら、どうなりますか?~  作者: 石田あやね
第2章『執事は演じてます!』
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memorys,27

 奏の家から帰ってきたわたしは、早速ある人を探す。そう、白藤さんだ。


(思い立ったら吉日って言うし……思い切って話してみよう)


 しかし、こういう時に限って見付からない。


「どこに行っちゃったんだろう?」


 広い屋敷内を隈無く探すも、やはり白藤さんの姿はなかった。ふっと窓を見ると雨が上がり、夕日の明かりが辺りを染め上げている。


「もしかしたら外かな?」


 そのまま中庭へと向かい、周辺に目を走らせていく。だが、誰ひとり庭に出ている人は居なかった。


(どうしようかな?)


「お嬢様、誰かお探しですか?」


 メイドのひとりが声を掛けてくれる。初めて屋敷へやって来た日に、わたしの部屋に荷物を運んできた娘だった。


 名前は、春花(はるか)ちゃんだ。わたしのふたつ下で、夜間学校へ通いながら働いているらしい。働き初めてまだ半年で、よく神木さんに仕事を教えてもらっているのを見掛けたことがあった。


 わたしも年下の妹のような感じで、たまに内緒でお菓子を食べたりしている。


「あ、春花ちゃん……白藤さん見掛けなかったかな?」


「白藤さんですか? きっと、休憩時間なので別館にいらっしゃるのでは?」


「別館?」


「はい、わたくし達メイドや執事の神木さんと白藤さんも皆住み込みですので……仕事以外は別館にある自室におります」


 そんなのが屋敷内にあるとは初耳で、わたしは首を傾げた。


「別館はどうやって行くの?」


「一階東側の一番奥に別館へ続く外廊下がございます。そちらへ行っていただければ……あ、けどお嬢様を直接行かせてはいけませんね! 今呼んで参ります」


「いいよ、春花ちゃん仕事中なんだし……大丈夫。わたしが行くから気にしなくていいよ」


「ありがとうございます、お嬢様……それでは、失礼致します」


 やはり急ぎの仕事があったのだろう。慌てた様子で走っていってしまった。


「別館かっ」


 まだ見たことがない場所があると知り、なんだか探検に行くような感覚にワクワクしてしまう。わたしはまた屋敷の中へと戻り、外廊下のある方へ目指し走った。





 春花ちゃんに言われた通りの場所に、別館へと続く外廊下を発見する。恐る恐る廊下を進んでいくと大きな扉があり、その先にたくさんのドアの並ぶ新たな空間が広がっていた。


(神木さんもここに住んでるんだ……)


 ドアには誰の部屋か分かるように表札が付けられている。左右のドアに目を配りながら進んでいくと、ようやく目的の名前を見付けた。


 “白藤 あおい”


 向かい側のドアには“神木 誠”の名前もあり、少しだけ緊張感が走る。


(なんで神木さんの名前見ただけで緊張してるんだろ)


 最近、神木さんとの距離も縮まった事はなんとなく分かるが、いつになっても本人を目の前にすると戸惑ってしてしまう。


(今は神木さんじゃなくて、白藤さんだ)


 気持ち改め、白藤さんの部屋の前に体を向き直し、ノックしようと右手を上げた時だった。


「お嬢様?」


 突然の声に手を即座に下げる。そして、またも身体中に緊張が駆け巡った。


「か、神木さんっ」


「このような場所に何故いらっしゃるんですか?」


「ええっと……」


 まさか白藤さんに会いに来たとは言えない。言えば、何かあったと勘づいてしまうだろう。案外、神木さんは勘が鋭いから、へたに嘘は付けなさそうだ。


「あの、雨ばかりでつまらなくて……お屋敷の中を探検してたら偶然ここに」


「……探検……ですか?」


 一瞬、神木さんの動きが止まる。すると、顔を逸らし笑い始めた。


「え?」


 何かまたおかしな事でも言っただろうか?


(いや……考えてみたら、女子高生が“探検”って子供っぽかったかな?)


「申し訳ございません。別館まで探検に来るなど予想外でしたので……つい」


「あの、わたし戻りますね!」


 恥ずかしさもあったが、それより何より長居してここへ来た目的が分かってしまったらまずいと思い、怪しまれていないうちにと神木さんの横を通り抜ける。


 しかし、簡単に引き止められてしまった。


 わたしの腕を軽く掴み、自分の方へと引き寄せる。


「か、神木さん?」


 思いもよらない相手の行動に、またも心臓が音を立て始めた。そんなわたしに、変わらない執事スマイルを投げ掛ける。


「そんなに慌てなくてもいいですよ……探検ついでに部屋の中も見ていきませんか? お嬢様の好きなミルクティをお淹れしますから」


(神木さんの部屋でミルクティっ!?)


 一瞬悩む。神木さんと居るのは少し気まずいのだが、ミルクティは捨てがたい。神木さんの淹れるミルクティは格別と言えるほど美味しいのだ。


「……なら、ミルクティだけ」


 誘惑に勝てない自分が情けない。


「では、どうぞ」


 白藤さんと話し合うために来たのに、どういう訳か神木さんの部屋に入ることになってしまった。


「狭いですが……ソファに座って待ってて下さい」


 部屋の中は家具も必要最低限で、無駄なものがない片付けられた部屋だった。小さなテーブルにふたり掛けのソファ、窓際にシングルサイズのベッドがひとつ。


(やっぱり、入らない方が……)


 ソファに腰を下ろすも、キッチンからする物音に敏感に反応してしまうほど落ち着かない。見慣れない部屋にふたりきりというのは、こんなにも人を挙動不審にさせるのだと知った。


 意味もなく辺りを見渡していると、ベッド脇に置かれた小さな棚の上に写真が飾られている事に気付く。


(見ても……いいかな?)


 もしや、彼女とのツーショットではと興味本位で近寄っていった。


 しかし、わたしの予想は外れてしまう。


「これって……」


 写真の中に映る人物に一瞬で目を奪われた。

次回神木さんの部屋で

何かが起きる!?(笑)


さぁ、どんどん恋愛モード

へ突入だヾ(o゜ω゜o)ノ゛

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