第二十一話
「き、キキさん? 何言い出してるんですか? キキさんに限ってアニメの見過ぎですか?」
「そうですわ。さすがに笑えません」
「もー、キキ先輩ったらー」
「私たちにばっかり大変なことを押し付けてくるこんな世界、滅べばいい。いや、滅ぼす」
「これ……まずくない?」
「まずいですわね」
「うん」
「はい」
「皆、キキさんを押さえ込め!」
「「了解!」」
ミカを筆頭に、モモ、レイが二人がかりでキキの腕をふんじばって地面に押さえつけようと背中から突進した。
が、キキはびくともしない。
「キキさん、これ以上は私たちがあなたを止める他なさそうなんで、……この引き金を引かせないでくださいよ?」
「うるさい」
「え⁉︎」「きゃっ⁉︎」
「うあっ!」
拘束していた二人をキキは軽々しく前方のミカへと投げつけた。三人は重なって倒れる。
「キキさん」
キキの顔が横に向く。
「やめてください。いつものキキさんに戻ってください」
アイが、刀の峰を構えながらキキへと向ける。
「邪魔するなら、あなたも潰す」
「なら、私があなたを倒します」
アイの目が厳しくなる。
キキはノーモーションで槍を振るった。アイはいなして槍をつかんでいた左手を叩く。
槍を落としそうになるが右手で掴みなおして突く。
アイは距離をとって再度踏み込んだ。
刀と槍、そして体術の応酬。
お互いに一歩も退かず繰り返される激突。
「はぁっ!」
アイがキキの槍を明確に弾き飛ばした。
これでアイの勝ち……かと、思われたが。
「戻れ」
キキの槍はまるで言うことを理解したかのようにキキの手の中に瞬時に戻った。
もう懐へは入っている。
しかし、一撃を振り切る前にやられる。
どうする、どうする……。
「キキさん!」
アイはあろうことか刀を投げ出し、キキへと抱きついた。
キキは振り上げた槍を、目の前の少女へと振り下ろし、
「……」
その切っ先が背中へ到達する前に、手を止めた。
「アイ……私、何を」
「キキさん、ようやく、戻ってくれた」
アイは困惑するキキの顔を見て、安心したように笑ってから、気を失った。
携帯から着信音が響く。
「キキ、話はあとで! 野次馬が寄ってきてるから、みんなと一緒にそこからすぐに退避して!」
「どこに向かえばいい?」
「カタパルトの発射口! そこから逆に侵入してもらうから!」
「追跡は?」
「こっちで撹乱するから気にしないで!」
「了解」
キキはアイを背負うと、起き上がってきた他の三人と一緒に会社へと帰還した。




