『魔法少女~ライトスメル~』
日本某所。
夏の暑い日に、大金を財布に入れた少女は並べられた机の間を歩いていた。
と、お目当ての場所を見つけた彼女はその机に寄っていく。
「お兄さん、これとこれとこれ、三冊ずつちょーだい!」
財布から手際よく札を取り出しながら、快活に話しかけた。
少女の顔を見た場の主は、顔を輝かせる。
「おぉ、ミカさんじゃない! いつもありがとうございます!」
冊子を渡し、お金をもらいながら青年は嬉々として言う。
「いやいや、それはこっちの台詞ですって。いつもお世話になってます!」
お互い「いやいや」「いやいや」と謙遜し合う。少女が足を進路に向けると、察しのいい青年は別れの挨拶を口にする。
「これからも頑張りますんで、よろしくお願いします!」
「ええ! それじゃ!」
「まいどでーす!」
手を振り合って、彼女らは別れた。
「【サークル主】さん、彼女、誰なんですか?」
同じブースにいた別の青年が問いかける。
「ん? ああ、【趣味友達】さんは知らないんでしたね。彼女はお得意さんです」
「お得意?」
趣味友達の言葉に、青年は頷く。
「ええ、うちだけじゃない。彼女が手を伸ばしてくれた本は、そこから三時間で完売するってジンクスが、各所でまことしやかに囁かれるほど有名な少女です。異名は『ライトスメル』。彼女の名前からつけられました」
「へぇ、すごいですねぇ」
「他人事みたいに言わないでください。ここから忙しいですよ。『ライトスメル』の効果で人がどっと来ますから、覚悟してください、【戦友】さん」
袖を巻くって気合いを入れる青年を見て、趣味友達は少し焦る。
「わ、わかりました。【サークル主】さん」
予言通り、そこから一気に客は増え、一日で売る予定だったものが二時間で捌けた。
鼻唄混じりに彼女は歩く。
数多の紙袋を腕に引っ提げて。
人波を読みそこここへ。
今日もオカズを探して歩く。
明日に悔いを残さぬために。




