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魔王子とメイド、のエトセトラ?

多少の暴力的表現、及びR15を思わせる単語が出てきます。が、直接的なR15場面は……ありません。苦手な方はご注意ください。


 要領がいいとはお世辞にも言えない出来のよくない彼女には、自身の血に反応する呪〔まじな〕いをかけている。もちろん、口外はしていないし、本人にも知らせてはいないけれど……かけていて正解だったな、と沸騰する頭の中で冷静に思う。


 けれど。


 ピュッ、と風を起こしたかと思うとその場にいた数人の女の魔族(王宮に勤めるメイドや護衛騎士の卵)を吹っ飛ばしていた。加減をする気分でもなく、結構強く起こされたそれに彼女たちの声はすぐにかき消える。

 本来、キラは温厚な性格である。特に女子供には優しくしろ、と厳しく教育されたこともあり今まで怒りをぶつけた経験はなかった。

 納戸の壁のところで倒れている少女の額や腕から少なくない血が流れているのを認めて、紅の目を眇めた。

「誰がやった?」

 低く問えば、地面に這っていた女たちが怯えて顔を伏せる。

「俺のモノに、誰が、傷をつけた?」

 悲痛な声で彼女たちは弁明をする。

「その……ような、つもりは。決して……っ」

 と、萎縮した体を震わせて許しを請うが、優しくする気持ちにはならなかった。

「まあ、いい」

 キラが怒りをおさめて口にしたと思った彼女たちは、顔を上げて固まった。

 それほど、冷酷な微笑を浮かべていただろうか?

 自分ではよく、解らない。ただ腸〔はらわた〕は煮えくり返って仕方がなかった。

「解っているだろうが、赦すのは今回だけだ。同じことがあれば、次はない。おまえたちが絡んでいようと、いまいと……すべての責任を、おまえたちで贖〔あがな〕え」

 ルルゥに対するやっかみは彼女たちだけの問題ではない。今まで、側付きの騎士も侍従もメイドすら持たなかった魔王子が、唯一側に置いたのが「彼女」だ。

 今後も、誰が危害を加えてくるか判らない上に、ルルゥ本人では甚だ心許ないことを今回のことで思い知った。

 真っ青になった彼女たちは震え、拒否を口にすることなく項垂れる。屈辱に唇を噛んで請け負った。


「仰せのままに、キラ様」


(――防波堤程度にはなるだろう。まったく、手のかかる淫魔め)

 ルルゥを抱き上げた彼はマントを翻すと、一瞥もくべずに彼女たちの前から姿を消した。




 翌朝のキラの自室にある寝台で、ルルゥがモゾモゾと動いた。

 赤い目を開けると、上掛けのシーツから寝ぼけた様子で顔を覗かせてあたりをうかがう。寝癖のついた彼女のクセっ毛は爆発したみたいに跳ねていて、ちょっとした小動物だ。

「ルルゥ」

「ひゃっ!」

 ビックリのしすぎか、ころんころんと転がって寝台から落ちる。

 全裸だった彼女は真っ赤になって、シーツをたぐり寄せるとどうにか体を隠そうと奮闘した。

 すでに身なりを整えていたキラは寝台の傍らに立って、今更だろ? とは思うものの、その動きが可愛いので黙っておく。隠そうとしながら、あまり大事なところが隠せてないところもポイントが高い。

「痛いところは? 残ってたら言えよ」

「ふぇ? 痛いところ? は、ない……かなぁ?」

 ぼんやりと考えていたかと思うと、真っ赤になって狼狽える。なんとなく心情を察してしまって、困った。

 そうだろうとは思っていたが、昨日彼女は 初めて だったのだ。

(まだ、痛いんだろうな……)

 ひどく痛がっていた様子を思い出し、駄目だと頭を振る。

「あのぅ、キラさま?」

 恐る恐るというふうに声を掛け、ズルズルとシーツを引きずってやってくる。

 あらゆるところが発育途上の中、胸だけは淫魔らしく少し大きめの彼女は色気はあまりないが雌としての機能は十分だった。


「メイドって床の世話まで仕事なんですよね? わたしで大丈夫でした?」


「……そう、来たか」

 処女だった彼女を気遣うつもりだったが、ため息しか出ない。言葉で示さない俺も俺だが、コイツもコイツだ。

 処女を「仕事」で捧げるな!

「だって、わたし、経験ないんだもん。経験豊富なキラさまを満足させる自信が 皆目 ありませんっ!」


 馬鹿だ馬鹿だと知ってはいたが、真性の馬鹿だ。この馬鹿。


 経験がないとは言わないが、経験豊富ってどういう意味だ? メイドに手を出したことなんか、今の今まで一度もないぞ。認識の齟齬は改めるべきだな。

「おまえは俺の専属メイドだ。安心しろ」

 地の底から震える低音に、彼女は驚いていた。だが、もう遅い。

「へ? き、キラさま……笑顔が悪人ですよ? せっかくの爽やかな美貌がぁぁああ! いたいっいたいっ」

 引っ張られた頬をさするルルゥを寝台に押し倒し、シーツを捲る。

「わわわっ、だめっ! ダメです。キラさまっ、見ちゃイヤぁぁ!!」

「自信がなければ叩き込んでやる。この 大馬鹿 がっ」

 恥ずかしそうに抵抗する彼女に手加減なくのしかかり、(一応、痛みは取り除いてやるか)とほんのささやかな仏心を忍ばせて、キラは何事かを叫び続ける小うるさい唇に噛みついた。



はい、お目汚し失礼しました。

馬鹿な子ほど可愛い、とはよく言ったもので……こういうメイドなので、魔王子も可愛くて仕方がない(時々本気でイラッとして、いじめて解消エンドレス)のですよ。

これからも、不定期でコチラの二人の小話を追加する予定です。

が、不定期になるので一旦完結とさせていただきます。


この続きっぽく、ルルゥとキラは「小さき姫と年の差侯爵、の結婚。」にて登場してますのでよろしければ覗いてあげてください(書いたのは、「小さき姫と~」が先です)。

相変わらずのメイドの馬鹿さ(鈍さ)加減に生温かい視線を送るといいと思う!


ここまで、お付き合いありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いしますね!


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