シャムショ前
石畳も美しいシャムショ前につくと、坊主が声を張り上げる。
「伍の宮、セイテツ、スザク、今もどった!それと、コウセン!早く来い!」
怒鳴って背の骸を下ろす坊主へ、シャムショの若い男たちが慌てて手伝いにくる。
それを見ながらセイテツは「シュンカ、親父殿の名は?」と確認する。
「リョウゲツです」
「―― だそうだ。記録を調べろ」坊主が近くの男を奥へ走らせた。
入れ違いに、さわがしいなあ、とのそり現れたコウセンが、横たわる骸を見てセイテツの抱える子どもをみつける。
「これは・・・その子の?」
ああ、という坊主は「詳しくはあとだ」と骸の頭に膝をつき、数珠を取り出して一振りした。
無精ひげの男は子どもに近付くと、「親父殿はまかせろ」とその顔をのぞきこんだが、こどもの細い足の先を見てかたまった。
「・・・おまえら、まさかこの子、歩かせてきたのか?」
「しかたねえだろ」
「しかたねえだとお?ふざけんな!早く靴をぬがしてやれ!血で張り付いたら脱げねえぞ!」
男二人にどなるこの大臣は、昔、『父親』だったことがある。
「だ、大丈夫です!スザク様など、父をずっと背負ってくださっていて、おれなんかべつに」
「あのクソ坊主は驚くほど丈夫だから何も気にすんな。あ~ひでえなあ。セリちゃんとこ行って、靴を裂いたほうがいい。薬を塗ってもらったら、しばらく歩くなよ?」
「い、いえ、おれ、早く帰らないといけないんです!」
こどもの焦ったような答えに、坊主も絵師もしまった、という顔をする。




