門をくぐる
坊主がぬいだ衣で父親の骸をおおい、再度背に負う。
そこからは、だれも口を利くような余裕もなく、三人でただ黙々と先を目指した。
二人のばかでかい大人に遅れをとらないよう、子どもは必死で足を運び、セイテツに何度か、あしは平気か?とたずねられたると、平気です、としっかりこたえた。
三日目の陽がすっかり昇るころ、めざした場所の入り口に着いた。
「わ・・・」
三日ぶりに子どもが感情を表す。
「驚いたか?まあ、そうだよなあ。―― よくがんばったな。いくら坊主の着物をかけていても、やはり親父殿をはやく眠らせてやりたかったから、おれたちの速さで進んだけど、おまえ、よくついてきたなあ」
セイテツはこどもをかかえあげた。
こどもは「そ、そんな、あの」ともがいて降りようとする。
「この階段、その足じゃ登れないだろう?」
見上げた子どもが声をもらしたのも無理からぬほどの、『果てが見えぬ』階段だ。
ただ、仕掛けはある。実際は、下からみあげたほどの長さはないのだ。
雲を突っ切る階段などと、下界ではいわれているが、冗談ではないと下界とここを行き来する絵師などはいつも思う。
やたらと人間が来ないようにそんな仕掛けをしてあるのだが、その幻を操っているのが、この宮の門番をしている二頭の《イヌ》だった。
「ほお」
「これはまた」
門の左右で普段は石の置物になりすましているそれがしゃべると、子どもがまた声をあげた。
「めずらしいものを」
「おもしろいものを」
「阿と吽だ。イヌのようだが、下界の犬と同じに扱うと、すごく怒るから」
セイテツが紹介してやると、抱えたこどもが「シュンカです」と頭をさげて名乗る。
二頭はめずらしく、シュンカまた会おうぞ、と人間の名をよばわった。




