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第76話 入学準備

今日は入学準備のため、午前中はアカデミー用のドレス選び。


部屋で商会の仕事をしていると、セシルがやってきた。

「お嬢様、テイラー様と宝飾店のスコット様がお見えです。」

「通して頂戴。」

テイラーさんは公爵領で活躍するデザイナーで、国全体で話題になるドレスを数多く仕立てる、人気職人だ。

青い髪に片眼鏡をしている人だ。

何というか…職人と出来る秘書を足したような雰囲気の人だ。

お父様が、事あるごとに呼んではたくさんのドレスをプレゼントしてくれるので、すっかり顔馴染みだ。

宝石も保養地からこちらに来た際に、一つも持っていないと知ると、次々にドレスルームに宝石が増えていた。

私も一応物欲ある女の子だからね。

宝石に全く興味がない訳ではないけれど、ギラギラと、大きいだけの宝石や、明らかに高い!!と見せつけるだけの物には興味がない。

髪飾りはメルヴィンに貰ったものがあるので、邪魔しない程度の物があれば十分だし、ネックレスやらブローチや指輪は元々あんまりしないし…

小さい可愛いものを、品よくつける方が好きなのだけど。

そんな訳で、いただいた大粒の宝石は大事に保管して、時々眺めて楽しんでいる。

観賞用だ。

でももしかしたら、羽振りが良さそうに見せた方が都合がいい場合もあるかもしれないから、その時は身につけようかな?


「コーデリアお嬢様。お久しぶりです。」

「テイラーさん、ご足労いただき申し訳ありませんわ。」

「いえ、お嬢様のドレスは仕立てがいがありますよ。」

「コーデリアお嬢様、お招きいただきありがとうございます!!」

「スコットさんもお越し頂き、感謝致しますわ。」

「では早速、ドレスから始めさせていただきますね。」

テイラーさんがたくさんのドレスを広げる。

メイドも手伝い、部屋中がたちまちトルソーだらけになる。


「なんだか動きにくそうな袖ばかりですのね。」

ドレスはどれも美しいが、私がやりたい魔道具研究や魔法薬の精製には邪魔なような。

「袖が?」

「ええ、こうレースがひらひらしていては実験で燃えてしまうかもしれませんし。」

テイラーさんは衝撃を受けたような顔をしている。

ちょっと酷評しすぎた?

「あ、もちろん。デザインはどれも素敵ですのよ?」

慌ててフォローする。

「…いえ、やはりコーデリアお嬢様のお衣装作りは最高です。私の服の至らない点をご指摘いただけるとは…感激です。私の服には着る人が心地良く過ごせる、その視点が欠如しておりますね。いや、お恥ずかしい。」

テイラーさんはやる気がメラメラと湧いて来たようで、その場で袖やスカート部分をなおし始める。

テイラーさんのスキルは思い描いた通りに布を自動裁断したり、糸を持つだけで縫い合わせや、刺繍ができる、人間ミシンのような能力だ。

ちょっとすごくて羨ましい。

あっという間に、先程とはデザインが大きく異なるドレスが現れた。

袖はシンプルになり、袖口のリボンを絞れば袖を、短くしたり、袖口を窄めたりできる。

スカート部分は、前がシンプルな作りになり後ろ側にフリルが付いている。

普通のドレスより体捌きが良さそうだ。

他にも、リボン一つでスカートを広げたり、普通のスカート程度まで縮めたりできるドレスも作ってくれる。

機能的なドレスはどれも素晴らしいので、全部買いしめよう。

「素晴らしいですわ。すべて、いただきますわ。」

「ありがとうございます。では、次にパーティーや夜会用のドレスをご覧ください。」

「そうね…ドレスはちょっと気合い入れた物も、何点かいただきたいわ。」

「はい、公爵様からも見せつける必要も出てくるから、最低限10着ほど作るようにと言われております。」

流石お父様ね。

見せつけると言われて作ってくれているだけあり、どれもゴージャスで着てみるだけで、どこぞのお姫様かな…というくらい迫力がでる。


例えば、ドレス全体がキラキラ光る小さなダイヤモンドで、装飾されていて、動くたびに煌めくアイスブルーのドレス。

ダイヤモンドがあまりにも映えるので、全くけばけばしくなく、華やかなながら品のあるドレスだ。

他にも、紺地に銀色の花模様が、刺繍されている美しいドレスは、花柄の柄すべてが本物のミスリルの糸で出来ている。

「どれも中々いいわね。」

「ありがとうございます。」

「茶会用は嫌味にならないような、ちょっと控え目なドレスもいただきたいのだけど…」

「心得ております。」

テイラーさんは、シンプルな装いのドレスを広げてくれる。

「理想通りね。」

茶会用には気合いを入れたドレス以外にも、茶色生地やグレー生地の地味目なドレスも購入しておく。

高価な装いが苦手な人に会う時にはこう言った服も必要だろう。


「では、私からは装飾具をおすすめさせていただきます。」

スコットさんはいそいそと装飾品を並べる。

「ドレス毎におすすめさせていただきます。」

普段用のドレスに似合いのネックレスや髪飾りを並べてくれる。

正直私はいらないのだけど…

断ろうと思った時…

「お父上様から、普段着に装飾もないとは、実は金に困っているなど下に見てくる馬鹿共がいる。相手にする必要は無いが、話題をわざわざ提供してやる事はない、との言伝をいただいております。」

お父様…

やっぱりお断りしようとしたのバレていたか。

「では、選ばせていただきますわ。」

髪飾りはいらないと毎回主張するか、耳の脇あたりに着けるものや、ヘアピンのような物、さらには髪飾りと一緒につけられるような相性の良いものを用意してくれている。

「いかがでしょうか?」

「とてもいいですね…特にこの真珠をあしらったものがキレイですね。」

「はい!!そちらは自信作ですので、嬉しいです!」


結局おすすめとお父様からの圧により、思ったよりもたくさんの装飾品を買うことになった。


「では、お嬢様。また次の季節前に伺いますので。」

「お嬢様、私も参りますので、よろしくお願い申し上げます。」

2人にお土産をたくさん渡したあと、2人は一礼すると去って行った。

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