幕間8 ヒロイン入学
最近父や母の様子がおかしい。
もうすぐアカデミー入学時期だと言うのに、縁談ばかり持ってくるのだ。
「アリア、ヴェストブルク子爵から長男との縁談の打診があったぞ。」
「まあ!あの子爵様の?…アリア、ヴェストブルク子爵は長年宮廷でカルルス伯爵の補佐を務めている方でとても人望がありますのよ?息子さんも後を継ぐと言う話ですし。真面目な良い青年なのよ。」
母は絵姿を渡してくる。
そこにはふわりとした黒髪の大人しそうな青年が描かれている。
「お父様…?あの、私まだ結婚は…」
「うむ、だが一度会うだけでもどうだね?」
どうして縁談を勧めてくるのだろうか?
本当なら、今頃方々で治療を行なって才能を見込んだ侯爵夫人の勧めでアカデミーに入学の話が出る頃では?
侯爵夫人の名前は忘れてしまったし、そんな話全く出ない上に何故か縁談を勧められている。
以前にも、魔力が少ないのを気にした両親が魔力を増やすための訓練講師を手配しようとしていたので、必死で阻止した事があった。
魔力が増えてしまうと、ストーリーに影響が出てしまうかもしれない…
それに、ゲームでは主人公はそんな事していなかったし。
反動軽減の魔道具を特別に作らせようとした時も、いらないと説明するのが大変だった。
そんな物持っていたら、せっかくのイベントシーンが台無しになってしまい話が意図せぬ方向に分岐してしまうかもしれない…
どうも父はアカデミーに入るように言ってくれる気配がない。
どうしよう…
この縁談もうまく断りつつ、アカデミーに入れてくれるようにお願いしないと。
「アリアちゃん、貴女…もしかしてほかに想う人でもいるの?」
お母様が思ってもみなかった質問を投げかけてくる。
え?
たしかに私の旦那様は、ギルバートって決めているけれど…
まだあった事も無いのに王妃になりたい!!なんて言ったらびっくりされるよね。
しかも、男爵家の分際で。
「いえ、お母様。そうではありません。」
「では、ほかに何かあるのかね?」
きたきた!!
欲しかった質問です!
本当は私からいい出す流れではないはずだけど、このくらいの違いならまだまだ大丈夫だろう。
ギルバートとの出会いイベントはつつがなく終わっている訳だから、入学さえすればあとは自動的にハッピーエンドへまっしぐらだろう。
こんな違いで分岐するとは思えないし…
入学さえすれば良いのよね。
原作では主人公が、わざわざ自分から治療する人を探す描写がないからと言って、原作を大事にするために何もしなかったのだが、まさかアカデミーの打診が来ないとは思わなかった…
もしかしたら、誰かのルートではこう言うパターンがあったかも?
気を取り直し、父に告げる。
「お父様、実は私。アカデミーに通いたいのです。」
そう言った瞬間、2人は顔を見合わせて不思議そうな顔をした。
「アカデミーというと、お前のヒールスキルを高めたり、世に役立てたりしたいという意味かね?」
「はい、お父様。」
「…だが、お前は治療はいつも大変で向いていなさそうだし、対策を考えてもいつもいらないと言っていたではないか。」
うっ。
そうだった。
まさか向いていないのを見抜かれていたなんて…
しかも、たしかにお父様からのスキル向上の申し出は断ってばかりだった。
どうしよう…
いや、ここで諦めてはダメね。
私の話術ならいけるわ。
考えるのよ!!
まずは出来るだけしおらしい様子になる。
「ええ、お父様。その節は申し訳ございませんでした。…ですが、私もお2人のような素晴らしい両親と過ごすうちに、私も世の役に立ちたいという想いが日に日に募ってまいりまして…できれば自ら心身ともに成長したいの望むようになりました。」
「それでアカデミーなの?アリアちゃん。」
「はい、お母様。」
「ふむ…しかし、お前にはやはり厳しい環境だと思うが…」
お父様、手強いわね。
仕方ない。
必殺ウルウル作戦だ。
上目遣いに目を潤ませて、手を前で組む。
お父様に近寄ってお願いする。
「お父様、お願いします。どうしてもいってみたいのです。」
前世でも私のウルウル攻撃に耐えた者はいない。
しばらくすると…
「まあ、行くだけなら構わないか…もし向いていないならすぐに戻ってくるのだぞ。成果が出なくとも恥る事はない。」
「ちょっと心配だわ…」
「心配しないで、お母様。長い休みには帰りますから。」
休みは攻略対象と過ごすから、これはただの口だけだ。
こうして、なんとかアカデミー行きを勝ち取った私は、アカデミーに入る事になったのだ。
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