第38話 お茶会
今日はいよいよ、フローレンス様とメアリ様とお茶会だ。
女子会ってなんとなくだけど緊張するな。
マナーは、講師をリュカ様につけてもらったから大丈夫なはず。
講師のコリン伯爵夫人からも、まだ公式なお茶会には早いけれど、友人同士のお茶会であれば出しても恥ずかしくないと言ってもらっている。
コリン伯爵夫人は、リュカ様からの紹介だけあり、ヴァンパイアの女性だ。
紫色の髪の美女で、まだまだ若く見えるけれど、実年齢はかなり年上なんだとか…
お茶会に招かれたら、ちょっとした手土産を持参するのが流行と聞いたので、アイシングクッキーを焼いた。
カメオ風にデコレーションしたり、ドレスの模様を描いてみたりと、会心の出来。
あんまり高価な物だと。
「貴女には、こんなに高い物は買えないでしょうからあげますわ。オホホホホ!!」
みたいな嫌味になるらしいから、注意が必要だ。
「お嬢様、本日のお召し物は、こちらでよろしいでしょうか?」
持ってきてくれたのは、深緑色のドレス。
これまたリュカ様からのプレゼントなので、センスがいい。
リュカ様からいただいた服を着ると、コーデリアが2割り増しくらい可愛く見える気がする。
まあ、実家では素敵な服はみんな、義妹が着ていたからかもしれないけど。
私には残り物ばかりだったものね。
それから薄くお化粧をしてもらい、手やデコルテにもクリームをぬってもらう。
今日のアップルパイはセシルにサーブ方法を教えて、出してもらうことにしたので、ハーブの香りのハンドクリームも問題ない。
自分でやろうと思っていたら…
「貴族のお嬢様は、お茶会で通常そのような事をしません。」
などと、セシルに止められてしまった。
前にシナモンロールをあげたけど、あれは予定立てたお茶会じゃないしね。
貴族のお付き合いは大変だ。
空はよく晴れており、お茶会日和だった。
「コーデリア様!ようこそおいでくださいました。」
フローレンス様が、お辞儀をして迎えてくれる。
「…とても嬉しく思います…」
相変わらずポソポソとメアリ様が続ける。
「お招きいただき、ありがとうございます。本日を楽しみにしておりましたわ。」
私も挨拶を返す。
フローレンス様は、赤髪によく映えるロイヤルブルーのドレス。
メアリ様は、茶色の髪に合う焦げ茶とアイボリーのドレスを着ている。
「こちら、もしよろしければお2人に…」
2人にクッキーを手渡す。
「まあ!!大層可愛らしい置物ですわね!」
「…すごく…かわいいです…精巧な装飾をした石かしら…」
2人ともかなり嬉しかったらしく、袋から取り出してキャッキャと眺めている。
「あの、そちらは置物でも石でもなく…クッキーです。」
「…あらいやだわ。コーデリア様、からかっていらっしゃるのね。こんな可愛らしい食べ物は見たことなくてよ。」
フローレンス様は、冗談と思ったらしくコロコロと鈴を転がすように笑っている。
「…ほんとに…食べられるのですか?」
メアリ様は食べる方に興味がありそう。
「ええ、こちら余分に作った物ですが…」
2人の目の前でパキッとかじって見せる。
「あらまあ…」
「…美味しそう。」
2人とも目を見開き、びっくりしていたがようやく食べ物とわかってくれたようだ。
「私が作った物ですので、味は至らない点があるかもしれませんが…」
「いえ、むしろそれを聞いて、ぜひ食べたく思いましたわ。」
「…でもかわいい…飾りたい…」
メアリ様は見た目に未練があるらしい。
「またいつでも作りますので、よろしければ召し上がってください。でも、お気に召さなければ、しばらくの間は観賞用にもできますので。」
「まあ、楽しみですわ。」
「…宝物…」
メアリ様はそっとクッキーを抱きしめている。
そんなにかわいい物好きなのね。
あげた方としては嬉しいわ。
「では、宜しければ始めさせていただきますわ。」
セシルに合図して、紅茶とアップルパイを出してもらう。
アップルパイは焼きたてを本の倉庫に入れておき、今取り出したので、アツアツだ。
アイスクリームも同じく溶けていない。
「こちらはどういったパンなのですか?」
「こちらは、パンと言うより…パイですわ。」
「…パイ?」
「これがパイなんですの?」
パイと言うと、この世界では包み焼きを指すが、周りの生地は食用ではなく、アルミホイル代わりのような立ち位置だ。
「はい、こちらはアップルパイと申しまして、パイ皮も美味しく召し上がっていただけます。さらに、本日は冷やしたクリーム…アイスクリームもお持ちしましたので、そちらをのせてお召し上がりください。」
「まぁ…不思議な食べ物ですが、とても良い香りがいたしますわ。」
「…シナモンのいい匂い。」
2人とも、嫌悪感は無いようだ。
「パイに合うソースもご用意致しましたので、もし宜しければ、こちらもお試しくださいませ。ブルーベリー、ラズベリー、キャラメルの3種ございますわ。」
2人とも、未知の食べ物に少し身構えたが、意を決したように食べ始めた。
「甘い!!とても甘いですが、同時にパイのサクサクとした香ばしい香りと、シナモンの爽やかな香りが加わって…とても美味しく感じますわ!!…私このアイスクリームというものが、大層気に入りました。なめらかで豊かな味わいです。」
「あつあつ…冷たい…幸せです…」
「お口にあったようでよかったですわ。」
「こんなに複雑で美味しいデザートをいただくと、普段のお菓子が物足りなく感じますわ。」
「…毎日食べたいです…」
2人は、私がキャラメルソースをかけているのを見ると、それもマネしてみた。
「こちらも、香ばしくてとても美味しいですわ。…はあ、私の料理長をコーデリア様の弟子につけていただきたいですわ。」
心底残念そうにフローレンス様がため息をつく。
「…お友達になりたいです…」
「まあ!メアリ、名案ね!コーデリア様、もし我々がお嫌でなければ、お友達になっていただけませんか?私、コーデリア様の自立した雰囲気に、とても憧れていて…」
「…コーデリア様、素敵な方。」
2人とも裏表の無さそうな令嬢達だし、嬉しいな。
「私でよければ…ぜひお願いいたしますわ。」
こうして…フローレンス様とメアリ様仲良くなり、談話室でお菓子を食べたり、メアリ様が得意な刺繍を教わったり、フローレンス様が得意なピアノを聴いたりして過ごすようになったのだった。
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