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第4話 生活改善計画

部屋は思ったよりもまともで、大きなバルコニー付きの窓や外が見えない天蓋付きのベッド、人が大いに隠れられそうな、衣装収納があるのが気になるくらいだ。

テーブルもあるし、本棚まである。

まぁ、見た感じは保養地に違いないわけね。

部屋続きのバスルームも狭いけど普通…


一般的な貴族のお嬢様なら、こんな質素なところイヤ!!とかなるのかもしれないけど、長らくワンルーム暮らししていた私には、むしろ広々空間に感じる。

生前庶民でよかった。

当面の目標は、生活の改善ゆくゆくは財産をつくる。

まずは味方を作りたいんだけどな…

どうしたらいいのか…

とりあえず、熟成練習でもするか。

生焼けの毒蛙を取り出し、熟成させる。

うんうん、いい感じ…

あとは発酵させて堆肥にでもしたら捨てやすいかな?などと考えていると、セシルが何故かモジモジしている。

ん?何、もしかして欲しいのかな。

「セシル、どうかした?」

「あ、いえ…申し訳ございません。」

「いいの、もしかしてこの蛙欲しいの?」

サッと顔が赤くなる。

「あの、ただお嬢様は召し上がらないのかと思っていただけで…」

「え?だってコレ毒あるし。」

少し考える。

「もしかして、あなた食べられるの?好きとか?」

「…あの、恥ずかしながら、我々白蛇人一族にとっては貴重なご馳走でございます。」

「これが…?」

「はい、お嬢様のお義母様のご実家が独占して飼育しておりまして…好物とする者に肉を高く販売しております。もちろん、毒としてもそれなりに流通しておりますが、食肉がメインですね。」

そうなんだ…

義母頭弱いからか、私生きてるやつも持ってるんだけど…

戯れに収納したら、生き物でも入ったから入れてある。

そんな貴重だったなんて…

追加で2匹出す。

「よかったら食べて。」

「よろしいのですか?!」

「うん、でもあなたが他の人に食べさせるとは思わないけど…念のため、ここで食べて行ってくれると嬉しいわ。」

椅子を勧めると、おずおずとやってきて食べ始めた。

さっきまでの無表情が別人のように、恍惚とした顔をしている。

「まだまだあるから、また食べてくれたら嬉しいわ。」

コクコク頷きながら夢中で食べている。

意外…あの蛙が役に立つ日が来るなんてね。

この世界、調味料が塩と酢しかないのよね。

ハーブとかスパイスもあるけど、やっぱり私には物足りない。

ソースとか醤油は絶対作りたい。

いつのまにか、ほんの小さな骨だけ残して食べ終わったようだ。

表情的には大満足そうだ。

辞典によると、骨には毒がないみたいだしこれで気軽に捨てられる。

「骨は私が、処理いたします。」

またクールに戻ったセシルが、さっさと片付け始める。

そのまま手早く荷解きと、お風呂の支度をしてくれた。

お風呂には薔薇のバスソルトが入っている。

実家にいた時でも、私にバスソルト入れてくれた人はいなかったし。

蛙…

そんなに気に入ったのかな?


「ちょっと聞いてもいいかしら?」

「なんでしょう?」

「ここには、成人前までの子しかいないんでしょう?成人した後はどうなるの?」

「女性は皆様、ご結婚されますね。男性はそうですね…養子に入ったり、事業をはじめる方や一部爵位を継ぐ方もいらっしゃいます。」

「そうなのね…」

「もちろん…事故や病気で亡くなる方もいらっしゃいます。」

あれね、義母に脅されたやつね。

「どんな子達がいるの?」

「そうですね…ほとんどの方は、正妻以外の子達ですね。そういった方達は、大概メイドや護衛を連れて来ております。あとは、問題を起こした子供を、一時的に隔離する目的で連れてくる方もいますし…性質が粗暴だからと連れてこられる方もいます。」

「名目は保養地…だものね。」

生きていると都合が悪い子を送り込んだり、手に負えない子供を閉じ込めておく施設みたいなものなのね。

あとは、家に置いておけない愛人の子供達ね。

若い子なら、老人貴族の後妻には人気あるものね。

「そうです。教育施設ではなく保養地ですので、特段教師やマナー講師などはおりません。必要な方はご実家が個別に手配なさっております。」

なるほどね。


初日にメルヴィンと肉を交換してからというもの、

腐ったお肉を毎回熟成肉にしてメルヴィンにあげて代わりに硬い肉をもらって過ごしていた。

1週間が経ったある日…

いつものようにカチカチのパンを食べていると、メルヴィンが不思議そうに見てきた。

「何か?」

「気に入らないのか?」

「パンですか?私には硬過ぎて…」

「パンは硬いものだろう。」

「ええ、まあそうなのですが…歯が折れそうなのでできれば自分で作りたいなと思いまして。」

「作る?」

貴族のお嬢様は作ったりしないよね。

でも私は自分の厨房が欲しい!

「えぇ、少しですが調理ができるものですから。」

嗜み程度なら、ちょっと変人に思われるだけかな?

「ふーん。」

そのあとは特に興味無さそうにしていたのでまぁ、いいだろう。

またセシルに帰ったら蛙あげようかな?

セシルも熟成肉の方がいいらしいので、毎回熟成蛙を食べてもらっている。


セシルへのお礼が終わった頃、不意にバルコニーに人影が現れた。

「誰!?」

音もなくセシルがバルコニーに近づいて、カーテンを引いた。

「俺だ。」

「メルヴィン?」

外にいたのはメルヴィンだった。

「ちょっと、どうしたのよ。びっくりしたじゃない。」

思わずお嬢様口調を忘れてしまう。

「来い。」

「どこに?」

バルコニー?

焦れたのかいきなり抱えられる。

荷物みたいな担ぎ方だ。

「メルヴィン!ちょっと、何なの?」

「舌、噛むぞ。」

短く言うとバルコニーから飛び出した。

「!!!!!!」

叫びが声にならない。

着地するとそのまま走り出した。

そして屋敷のそばの家のドアを開ける。

「ついたぞ。」

中は入ってすぐに広い台所とテーブルがあり、部屋の奥には鉄格子があるが、無惨に曲がっている。

その鉄格子の奥に、ベッドやらお風呂やらがある。

誰かのおうち?

かなり埃っぽいけど。

「ついたとは?どういう意味でございますか?」

「口調。」

「口調?先程は申し訳ございませんでしたわ。少し驚いてしまいましたもので。」

「戻せ。」

「?戻すとは…先程の口調にですか?」

コクコク頷く。

「…わかったけど、無礼とか言わないでよ?」

「言わん。」

「ならいいけど…ここどこ?」

「調理、したいんだろ?」

「へ?したいけど…勝手に借りるわけには…」

「ならやる。」

銀色の鍵を首から外してくれる。

「やるって…ここメルヴィンの家?」

「家ではない、檻だ。俺はいらないからやる。」

「いいの?」

「好きに使え。ただ使用人は逃げたからいないぞ。」

「そうなの?別に使用人はいらないからいいんだけど…」

コンロの魔石はまだまだ予備もあるし、綺麗にしたら全然使えそう。

「でも、今はどこで寝てるの?」

ここで寝ている形跡がない。

「三階。」

屋敷の三階って意味かな?

野宿じゃないならいいや。

「もしかして、これお肉のお礼とか?気にってくれてたの?」

首をふるふる横に振る。

「礼じゃない。」

「そうなの?」

「礼はこっち。」

銀の髪飾りをくれる。

不思議な模様が彫られた綺麗な品だ。

「キレイ…いいの?私、大したことしてないわよ?」

「いい。いつもつけとけ。」

「ありがとう。なら大事にするわね。」

ハーフアップを止めていた髪飾りを交換する。

「肉旨い。」

ぶっきらぼうだけど、案外律儀でいいやつなのかも。

期せずしてキッチンを手に入れてしまった。

「キッチンキレイにして、お肉が手に入ったらご馳走するわね!!」

メルヴィンの耳がピーンとなり、尻尾がワサワサ振れている。

嬉しそうで何よりね。

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