実態調査、ポーション屋①
商人を追う予定でしたが、ポーション屋さん先に行きます。
ふと寝返りを打つと、わっさ~とした温かい物に顔が埋まる。息苦しさから、逆を向けば、これまたふわっふわとした感触にこそばゆくなった。
眠い目をこすり、上半身を起こしてみれば右ニマ君、左にノヴァが。他の二人はどうしたのだろうと後ろを振り返れば、枕の上でグレイシアの羽毛に埋まってオリジンが寝ていた。
ふふっ。聞こえて来るオリジンのすぴ~~ぷふ~~という寝息に一人笑い。ノヴァとニマ君を軽く撫でてベットから降りる。カーテンの合わせに出来た隙間から差し込む光を見る限り、昼に近いようだ。
まだベットで寝ていたいけど、今日はクルル様とポーション屋に行って。それから、あの教会にも、もう一度行きたいし。あぁ、でも、街へでるからって、学園用の制服も今日ついでに作りに行くってイリュス様が言ってたし、教会は寄る暇ないのかな? って、昨日書くはずだったお義母様の交換日記もかかなきゃ。それから、クリスティアちゃんの分も……って、アレ? あたし意外と忙しくない??
寝起きの頭で今日やるべきことを思い出しているといつの間にかベットの淵へ来ていたメアリーが「ハク様、お目覚めですか?」と声をかけてくる。
「あ、おはようございます。メアリー」
「はい。おはようございます。お仕度の前に、お風呂へ参りましょう」
「はぁ~い」
メアリーに答えながら、案内された浴室に移動して服を脱ぐと湯舟に浸かる。「ふあぁ~!」と、親父臭い声を出してしまうほど、気持ちのいいお風呂を十分に堪能した。
お風呂からあがり、スッキリした後は着替えと昼食。
今日のお洋服は動きやすく、機能性重視の薄いクリーム色をしたワンピースだった。靴は歩きやすいようにと皮で出来たショートブーツ。
昼食はいつもより少なめにしてあって、きちんと食べ切る事ができた。そうこうしている内にオリジンたちも起き出し、昼食と言う名のお菓子祭りを終える。
そして、タイミングを見計らったように、相変わらずのイケメンスマイルのクルル様とピシっとしたイリュス様が部屋を訪れた。
「おはよう。行けるか?」
「おはようございます。白様」
「ふたりともおはよ。うん。大丈夫だよー」
食後の紅茶を飲み終え立ち上がる。クルル様に差し出された腕に手を添えて、馬車までエスコートして貰いながらイリュス様に今日の予定について聞く。
「まずは、ポーション屋に参りましょう。それから、制服を作りに行って、時間があれば例の教会へ参りましょう」
「わかった。他に行きたいところはあるか?」
クルル様に問われ、行きたいところを思い浮かべる。
どうせなら、動きやすい内にコインを集めた方がいいよね。王都にあるコインの場所は、中央広場の大噴水、北の農場、西の廃屋、東の壁画側、南の花畑なんだけど……。中央広場は、東西南北のコイン取った後じゃないと開かない。西の廃屋は夜中、東の壁画は朝日が昇ると同時、南の花畑は太陽が丁度、真上に来た時で既に過ぎてるし。
うーん。時間的に、夕方行ける北の農場なんだけど。服作りに行くのにどれぐらい時間がかかるか判らないし、微妙なところ。
「ん~。ちょっと気になるところもあるけど……。多分、間に合わないからいいよー」
「どこか聞いても?」
「あぁ、うん。えっとね~。王都の北にある農場」
「農場?」
「そう。前にクルル様たちには話したと思うけど、この王都の東西南北と中央にコインがあるの。それを取りに行きたいなと思っただけだよ」
「そう言えば、仰っていましたね」
「なるほど。直ぐに向かった方がいいのか?」
あたしはゆっくり首を振る。今はまだ、焦る必要はない。年齢的に卒業まで、二年も残されているしその間に、集められる。
「大丈夫。まだ時間はあるし、それよりも制服楽しみですね!」
「あぁ、そうだな。この学園の制服は少し特殊で、見目も女性とが好む可愛らしいものらしいから、きっとハクにも良く似合うはずだ」
馬車に乗り込んだ途端、クルル様がデレてきた。少しだけ視線を彷徨わせ頬を赤らめるクルル様が、可愛すぎる!
ちょっと、クルル様。ここで恥じらいなんて見せて乙女ですかっ! どうしよう、クルル様の女子力が、あたしより高いかもしれない!
「ハク。」
脳内でプチパニックを起こす。隣に座るクルル様がやけに真剣みを帯びた声であたしを呼んだ。
「今朝がた、父上と話してきた。そなたが私やイリュスに話してくれた事柄については、許可が必要だろうとできうる限り隠しはしたが、宰相と父上は気付いていらっしゃるかもしれない。それで、その、白が許すのならすべてを父上に話そうと思うのだが、どうだろうか?」
クルル様なりに悩んでくれたらしいことが言葉の端々から伝わる。隠していたのは、クルル様やイリュス様、オリジンたちの記憶が消される。もしくは、あたしが消える可能性があったからだ。クルル様たちに話した時点から今まで、で何も起こっていないと言う事は大丈夫なのだと思う。
「うん。ただ、あんまり多くの人に知られるとどうなるか判らないから……」
「あぁ、白の不安は十分に考慮する。父上と宰相にだけ話をしようと思う」
「うん。それなら、わかった」
馬車が速度を緩め、馬の嘶きと同時に止まった。それからものの数秒で、扉がノックされイリュス様が到着を知らせてくれる。開かれた扉を降りたクルル様が、あたしに手を差し伸べ馬車を降る。
広がった視界の先には、この中世ヨーロッパ調の建物が並ぶ街には到底似つかわしくないファンシーな――どこかのテーマパークの売店のような、フューシャカラーの蛍光ピンク色の屋根に赤や黄色のリボンやハートのモチーフが飾られた、キノコの形をした店が建っていた。




