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商人を追って③


 扉を抜けるとそこは異世界だった――なんてことはなく、ゲームをしている頃に良く見たアリュスート国・王都アリューの西門だか東門だかの門の側の森だった。

 あたしの知識が正しければ、町の最北端に王城があるはず。そして最南端に大神殿がある。壁が邪魔で見えないけど、壁の色合いとかは一緒だから多分間違いない。


 消えていく扉を見ながら、クルル様とイリュス様の方を見る。するとその近くに再び扉が現れ開く。そして門を超えてきたのは馬車に乗った御者件護衛の王太子付きの護衛の人二人とメアリーさん、そしてオリジンとニマ君だった。


「白様、馬車にお乗りください」

「はーい」


 荷を積んだ馬車が二台並び、イリュス様とメアリーさん達が後方の馬車へ乗り込む。あたしはイリュス様に呼ばれ、クルル様の立つ馬車へと走った。

 馬車に乗るときにクルル様がすっと手を差し出してくれる。その行動が紳士的で、萌えた!


「……早く乗れ」

「だってぇ~。乗ったらコレ離さないとだめですよね?」


 一方的に握りしめた手を見ながらゆっくりと上目遣い気味にクルル様に女子力を発揮してみた。


「……はぁ、いいから乗れ。時間が押している……」


 盛大な溜息を吐き出され、さっさと乗れと促される。

 なんでかなぁ? なんであたしのこのウルウルオメメが効果を発揮しないの? 美人じゃないし効果的とは言えないかもだけどさ……。

 ブツブツ愚痴りながら馬車に乗り込み、項垂れる。

 あー外の景色綺麗だなー。くそっ、すぐそこに門があるだけでなんも景色わかんないし!


「ほら、これでいいだろう?」


 ほんのりとほほを染めたクルル様の少しだけひんやりした指先が、座席に置いていたあたしの指に絡んで握りこむ――!!

 ちょ、イケメンコノヤロォォ、ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイバイ。あぁ、もう何この人あたしを萌え死にさせたいのかな? そうだよね? もうそうとしか思えない!!


『ハクどぉしたのぅ~? 鼻息荒いよ~?』

『アーニマ、これは病気だ。我らには治せにゃいにょだ。気にするにゃ』

「どうした? 手を繋ぎたかったのだろう?」

『そっかぁ~。わかった~♪』


 敢えて横に座りなおしたクルル様が再び、指を絡め手を繋いでくる。その顔はどこかニヤニヤとして嫌がらせのような気がしないでもない。けど、興奮したあたしはそんなクルル様の手をヒシッと握り返し、脳内妄想の旅へと旅立ったのだった。


 妄想の旅の終わりは意外と早く、門に到着したと同時に終わりを迎えた。


 馬車の中から見るアリュスート国の王都アリューは、ゲームの世界で見た景色と同じ。木造で作られた家々の屋根は全て赤く、壁の色だけが違う。街行く人々はみんな元気で、それぞれの目的地に向かって歩いたり話したりしていた。

 ただ一つだけゲームと違うところは、白いローブを羽織った神殿関係の人が多く街にいたこと。しかも住人が、その白ローブを避けているように見えた。


「やけに白が多いな」

「……やっぱり、クルル様もそう思うの?」

「あぁ、以前来たときはこんなに多くはいなかった」


 あたしと同じ感想を抱いたらしいクルル様が、窓の外を見ながら思い出すかのように呟いた。

 街の雰囲気は、ゲームと同じように見えた。でも、空気と言うか、なんかよく分からない靄っとしたものがこの街を包んでいるように感じてしまう。


「そっか……なんか、やなかんじだね」

「気を付けておいた方がいいだろう。とりあえず、まずは王城へ向かう。この国の王に挨拶する必要があるからな」


 王様との謁見かー。確かここの王様って、顔見えなかったんだよね~。ゲームだと……。顔は赤茶のくせっけ気味の髪を肩まで伸ばしてて、体形は結構大柄な感じだったと思う。印象は、カイゼル髭以外にない。王子の方はメインの方で出てきてたなぁ~。

 名前は、ユーシグルド・ディア・アリュスートだったっけか? 推しじゃないからぶっちゃけ名前が曖昧。クルル様とは一つ違いのはずで、見た目は金髪に亜麻色の瞳の持ち主。声優さんは好きだったけど、キャラデザとセリフがキザっぽくって好きになれなかった。


「そっか~。髭に会いに行くんだ~」

「髭? そんな事より、白、お前も来るんだぞ?」


 快く送りだそうとしたら一緒に行く発言をされてしまった。驚愕に固まるあたしの腰にクルル様の腕が回される。

 いやいやいや、無いでしょ。きっと聞き間違い、そうに違いない。アハハハ、あたしってばもう、お馬鹿さん。


「……一緒に行くからな? そのためにメアリー達が来ている」

「……え? 聞いてないよ?」

「今、伝えたろう?」

「ちょ!」


 心を読まないで下さい! ただでさえ、あたしの心を読むのが二人いるのに、クルル様までエスパーになったらあたし……もう、本心駄々洩れのただのバカじゃん!


 ガッチリホールドされた腰に視線を向け、これを解かない限りあたしに自由はないことを知る。腕を解くためには、大好きな、大好きなクルル様の横から、対面に座る必要がある。ここは背に腹はかえらないと足に力を籠め立ち上がろうと…………無理ゲーでした。トホホ。


遅くなり申し訳ありませんでした!

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