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精霊救出作戦 ⑨

 クレープが並ぶテーブルにイリュス様が、小汚い袋を取り出し置いた。その袋どこにでもありそうな袋で、いつもはそんなに気にならないのに今日はやたらと気になった。

 麻袋からは、僅かに気配的なものを感じた。


 クルル様によって取り出された一枚の水晶に似た六面体。

 それを手渡さ瞬間『悲しい、苦しい、こんな所に居たくない』といった思いを感じた。

 オリジン曰く”精霊の成れの果て”だそうだ。


 あたしは知っている。精霊の成れの果てが私の知るゲームの中で”精霊のコイン”という呼び名だった事。精霊のコインは、ヒロイン専用の収納コインケースに入れ再び呼び出すことができる事。ただし、一度精霊を呼び出すと二度とコインには戻らない。だが、精霊自身が力を失くしてなったコインは……。


「……この子達は戻せない……の?」


 手に持った赤く透き通ったそれを優しく撫でる。

 伝わってくる感情からこのコインは力を失ったコインである事がわかる。その名は消失した精霊のコイン……。

 縋るような気持ちでオリジンに視線を向けた。その視線の先で、オリジンは寂しそうにゆっくりと頷いた。それが意味するのは、戻せないと言う肯定。


「…………酷い。どうしてこんなことが出来るの? ひろ――聖女は何を考えんの!」


 どうしてこんなことが出来るんだろうと言う怒りの感情とコインになってしまった精霊達への同情? 助けられなかった悔しさ? から目頭が熱くなる。そんなあたしの頭をクルル様が引き寄せた。クルル様の服を掴み顔を押し付ける。


「すまない。貴族たちを止めることが出来ず……」


 ぽつりと耳元に零されたクルル様の掠れた声に、違うそうじゃないと頭を振るけど何度も何度も優しい声で謝られてしまった。背中に感じるクルル様の腕が優しくあたしを撫でてくれていた――。



**********



「……はっ! 知ってる天井だ……」


 起き抜けにボケをかまして、見知った天井から視線を外し身体を起こすと硬くなった腕や体を伸ばした。

 昨日……は、えーっと……あぁ、そうそう消失した精霊のコインを見て、その感情に引っ張られて泣いちゃったんだ。それから……あっ! クルル様に抱きしめられて――。


 そこであたしの記憶は止まっていた。どうやらその後泣き寝落ちしてしまったらしい。泣き寝落ちした上に着替えまでして貰うとか、子供か! と自分で自分にツッコミを入れながら、ベットを降りた。


「白様。おはようございます。お身体の方は問題ありませんか?」


 出来るメイドのメアリーさんがベットを降りたあたしに声をかけてくれた。その声がどこか気遣わし気だった。


「おはよう、メアリー。大丈夫だよー。昨日はその、ごめんね……泣いちゃって」


 気恥ずかしさから、頬をポリポリかきながら謝るあたし。そんなあたしに微笑んだメアリーさんが「まぁ、大変!」と声を上げ急いでソファーに連れていかれた。

 何が大変なの? て言うか、え? え? 


「白様。ここにいて下さいね。すぐに、すぐにお湯を持ってまいりますから! アマンダ、大至急お湯を……殿方は誰一人として通してはなりませんよ!」


 女性らしい良く通る声でメアリーさんは、アマンダさんに指示を出すとほかのメイドさん達を見てそう言った。

 それからすぐに、クローゼットへと入っていったところを見ると着替えのワンピースを取りに行ってくれたようだ。

 

『ハクぅ~おはよぉ~!』

「ニマ君おはよう。オリジンもおはよう」

『うむ』


 庭から戻ったらしいニマ君が朝の挨拶と同時にその頭をスリスリと摺り寄せる。その頭を撫でながら、挨拶を返しいつのまにか肩に乗っていたオリジンの頬を突っつき朝の挨拶を交わす。周囲にいる精霊達にも挨拶をした方がいいのか少し悩んで「みんなおはよう~」と声をかけておいた。


 それから暫くして、戻ったメイドさんたちに色々とされた……朝から体力、精神力共に削られた感半端ないんですけど……。そして、ようやくの朝ごはん。


 今日は軟らかめに焼いたパンケーキとなんかのお肉の蒸し焼きっぽやつと卵とサラダだった。味付け的には日本のご飯とかわらない。あぁ、みそ汁飲みたい。日本にいた頃はたいして好きではなかったみそ汁が、こっちに来てからというもの酷く恋しい。

 ま、それでも朝からモリモリ食べるんだけどね?


 そんなあたしに、メアリーさん達が苦笑いを浮かべていたけど気にしない。だって……お腹すいてたんだもん。


 ご飯を食べ終わり、お茶を飲んで一息ついた頃メイドさんが一人訪ねてきた。その人は、王妃様――未来のお義母様のお使いの人で「本日は、王宮内がごたついており講義はお休みとなりました」とわざわざ知らせにきてくれた。


 ごたつかないはずがないよね……カザス夫人の実家とアリュースト国の聖女――ヒロインかもしれない子――が精霊殺したんだもん。カザス夫人本人が、加担してる可能性もある。あんなことしといて、簡単に許せるはずはない……よね? お義父様やクルル様達がきちんと対処してくれるはず。しなかったらオリジンに精霊の怒りとか言って魔法使ってもらおうかな……。


 なんて恐ろしいことを考えながら、紅茶を一口飲みこんだ。


足を運んでくださりありがとうございます。

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