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精霊救出作戦 ⑦ 侵入組編@クルル

 カゴから救出した精霊様たちをオリジン様とアーニマ様の力を使い開けた扉へと移動させる。扉の先は、王城の白の部屋だ。

 とそこに、バタバタと足音が近付いてくる。


『オリジン~。僕足止めしとくね~』

『任せたぞ』

『うん~。クルル達は鍵開けてね~』


 誰よりも物音に敏感な? アーニマ様が、率先して動いてくれた。外見だけで判断してはダメなのだろうが、どうしてもそう見えてしまうのでしかたない。

 迫る来る屋敷の者たちはアーニマ様に任せ、己の焦る手元を落ち着けるように息を吐き出し鍵を開ける作業を続けた。


『クルル、イリュスどうだ?』

「もう終わります」

「こちらもです!」

『わかった。アーニマ! 我の力で扉を塞ぐ、その間にクルル達を連れ先に戻れ!』

『うん。わかったよー!』


 オリジン様の生き生きとした魔力が、地下室内を覆う。それと同時に、入り口の扉に何処からともなく大量の樹木が生えた。

ガタガタとなる扉の向こうでは、この屋敷の主と思われる男の「何をしている! 早く開けろ! 精霊を逃がす訳にはいかん!」などと言っている怒声が響く。

 

『クルル、イリュス。終わったら扉に入って!』


 最後のカゴを開けた私たちにタイミングを計ったかのように、アーニマ様が扉へと誘う。その声に頷く事で答え、私達は光り輝く扉の中へと走り飛び込んだ――。


 一瞬の浮遊感と共に、視界が急激に切り替わる。

 

「お帰りなさい。クルル様、イリュス様。ニマ君……」


 視界が明瞭になる。そこは、見慣れた私の婚約者の部屋だった。あぁ、帰って来た、そう実感するよりも早く、立ち上がり安堵したような顔をした白が私達を迎えた。


『ただいま~。はくぅ~! 僕ちゃんとお仕事してきたよぅ~!』

「あぁ、ただいま……す、ご、いな」

「ただいま戻りました」


 飛びかかる勢いで白の元へかけよるアーニマ様を追った私は、白の周囲に集まる精霊の多さに目を見張った。


「ねぇ…………お、オリジンは?」


 帰った私達の周囲を見回した白が、不安だと言う声音でオリジン様の名を呼んだ。そんな彼女に「大丈夫だ。心配要らない……」そう言いかけた私は、自分の胸に黒い何かを感じてハッとした。


 オリジン様を心配する白の姿は、まるで思い人を案じる様な様子だ。その表情、声は……本来ならば私に向けられるべきものではないのか? まさか……そんな、そんなはずはない。大丈夫、彼女は私を……だが、今までの私の行動を思い返せば、愛想を尽かされていたとしても白を責める事は出来ないのではないか?

 以前に感じた彼女に対する暖かな気持ちとは違い。これが愛や恋と言った感情なのかは良く分からない。だが、私の中で白に対する何かが、変わった事だけは理解できた。


 落ち着き無く室内をウロウロする白にソファーに座るよう促した私は、当然のように彼女の隣へ座る。普通の令嬢よりもほんの少しだけ柔らかい腰に腕を回した。


『はく、オリジンなら大丈夫だよ~。残りの精霊を連れて帰って来るから心配しないで~?』


 白の膝に顔を置いたアーニマ様が、視線だけを彼女に向け落ち着くよう促した。


「うん……ありがとうね。ニマ君」


 上手く笑えていない笑顔を浮かべた白は、アーニマ様の頭を優しく指で梳きながら撫でる。それがよほど心地よかったのか、アーニマ様はされるがままになっていた。


 未だ閉じない扉を見つめた白が、何度目かの溜息を吐きだした時だった。それまで何の変化もなかった扉が淡く発光する。ハッと顔をあげた白が、そこに現れた人物を目にして本当に嬉しそうに微笑んだ。

 

「お帰り! オリジン」

『うむ。戻ったのだ。白、菓子は?』

「もぅ~。すぐお菓子って言う! それよりも、心配したんだからね!」

『我が早々やられる訳が無かろう』

「それでも、心配したの!」


 ぷぅっと頬を膨らませ、幼子のように怒る白とそれを当たり前のように受け入れているオリジン様のやり取りを横目に、何故かチクリと痛む胸を押さえた。


『あぁ、そうだ。クルル、イリュス。あの屋敷のやつらを全員捕えて置いた。陽が昇り次第、屋敷へ向かうがいい』

「お手数おかけします。オリジン様」

「ありがとうございます」


 本来ならば私達がやるべき仕事をオリジン様が一人残りして下さっていたことに心から感謝すると共に、遅れていた理由が分かり安堵した。


「そうでした、クルル様……これを……」


 思い出したかのようにイリュスがアイテムボックスから、例の麻袋をテーブルに取り出す。それを視線に収めたオリジン様は、再び怒りの形相になったものの今回は理性を失くすことはなく、魔力が乱れる事はなかった。


「これ、なんですかぁ?」


 首をコテンと傾げた白に、オリジン様は「精霊のなれの果てだ」と伝えた。


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