精霊救出作戦 ③
こめかみを両手で押さえられた状態で、無理やりくっつけられていたおでこが離れる。
寝起きはどこか疲弊していた身体がおでこを話した途端、癒された気がする。きっと、オリジンが回復してくれていたのだろう。そう思ったあたしは「ありがとう」とお礼を言う。
ベットからオリジンが離れると、メアリーさんが冷たい水を手渡してくれた。それを受け取り、カラカラに乾いた喉を潤す。
落ち着きを取り戻した所で、さっきの夢について考えようとしていたあたしに、オリジンが酷く真面目な顔と声で記憶の中に残る、さっきの事を聞いてきた。
「ハク。あれはなんだ?」
何だか……。正直な話し、あたしにも何なのかわからない。ただ、あの場所は知っている。あの時は思い出せなかったけど、今ならハッキリと分かる。love with youで、ヒロインが聖女に選ばれて初めてあてがわれた部屋があの部屋だ。
「ハク? 何を考えている?」
訝しげに、青い瞳がこちらを見る。
オリジンの今の言葉で、ひとつだけはっきりした。
やっぱり、オリジンはあたしがゲームの事を考えている間、あたしの思考が読めないだ。
「白?」
何も答えないあたしを心配してか、クルル様がベットに座りあたしの顔を覗き込んだ。
「……あぁ、ごめんね。大丈夫だよ。オリジン、あの場所については分かるよ。けど、あれが何なのかはあたしにはわからないんだ」
ひとまず心配そうに見る皆に謝り、大丈夫だと伝える。オリジンした質問に対して、あたし自身答えようが無い。だからこそ、正直に伝えてみた。
「ふむ……ハク。今回あったような事を以前にも経験したのではないか?」
少しだけ考える素振りを見せたオリジンが、再びの質問をして来る。
「前にも経験? どうなんだろ? うーん。違和感はあるけど……経験したかどうかはわかんない。オリジンは、何か見た?」
質問に質問で返すのは最悪だと知りつつ、オリジンの方へ視線を向けた。するとオリジンは、眼を伏せ黙り込んでしまった。
あたしはあたしで、自分の中の記憶を探る。二人して黙り込んでしまった為に、クルル様、イリュス様、メアリーさんも話さず、カップを置いたりする音だけが静かに響いた。
*****
徐に、クルル様をイリュス様が呼ぶ。その声にハッと顔を上げたあたしは、クルル様の後ろに見える色に驚いた。どれ位の時間、ニマをもふりながら記憶を漁っただろう? 高く登っていた太陽が、夕焼け色に変わっている。
「あぁ、わかった」
目配せし合い話したらしいクルル様が「晩餐には顔をだす」と言い残してイリュス様を伴い部屋を出て行く。それに頷き、オリジンに視線を向ける。
未だ眼を閉じているオリジンは、あれからミリも動いていないようだ。
「お、おりじん」
あたしの呼びかけに、オリジンが降ろしていた瞼を開け此方を見る。その眼はどこか冷たく感情が読みにくい。
「思い出してみたけど、思い出せない」
「……そうか、我も記憶を思い返してみたが……」そう言って、オリジンは言葉を濁しながら首を振った。
「ま、忘れたころに思い出すと思うし、仕方ないよ~。それよりさ、精霊の救出作戦について教えて?」
忘れてしまったものは仕方ないし、考えても時間の無駄! それよりも今は精霊を助ける事が先! そう考えたあたしは、気持ちを切り替えオリジンに作戦内容を聞いた。
あたしの考えを読んだらしいオリジンは、仕方ないと言うような表情を見せ、ニマは大人しく眼だけであたしを見上げると尻尾をゆっくりふっさふっさと振った。
「ふむ。そうだな、思い出す事があれば我に言うのだぞ?」
「うん。分かった」
「では、作戦についてだが……決行は今夜だ」
「え? 今日の夜行くの?」
オリジンの今夜と言う声に、聞き返してしまう。そんなあたしに、頷いたオリジンが言葉を続けた。
「実はな、弱っている妖精が多く出来る限り早く救い出してやりたいのだ。囚われた屋敷への入り口は、我とニマで開けるが、精霊を入れている檻が我らでは開けられんのだ。多分、あの檻には消霊石が使われている。それ故クルルトイリュスも共に行く」
消霊石って、お妃様教育で教えて貰った奴だよね? 精霊に近付いて欲しくない場所や人に危害を加える精霊を捕えて逃がさなくするって奴。あれって、マナを吸い取るから精霊を殺すことになるってメリル先生が言っていた。
オリジンとニマが付いて行くならクルル様たちは大丈夫かな? でも、戦闘になって怪我とかしないよね? オリジン達が強いっていっても、やっぱり誰かが怪我したりするのはやだな。
「大丈夫だ。屋敷内にここから直接扉を開く」
心の中で、不安になるあたしの思考を読んだオリジンが、当然のように返す。
「むっ、また、読んだ? 乙女の思考を読むのはダメ!」
『ハクは直顔にでるからぁ~』
「確かにニマの言う通りだ。ハクは直に喜怒哀楽が顔にでる。思考を読まずとも、今のは分かりやすかったぞ?」
読まれて困るものじゃないけど、やっぱり秘密にしたい事もある。だからこそ心の声を読むのを禁止しようと思ったら、まさかの表情で読みました宣言をされてしまう。
まじかー。あたしそんな分かりやすいのか……、凹むわ。
『ハク、大丈夫だよぅ。僕が、ちゃんと三人とも守るからぁ~♪』
「むっ? 三人とは我も含まれておるのか?」
『うん! 僕強いからぁ~』
あたしが凹んでいる間に、精霊二人がじゃれあっている。その会話がなんとも可愛くて、凹んだ気持ちが浮上する。
「とにかく、大丈夫だとしても出来る限り怪我しないようにしてね? あたしにとって、オリジンもニマも大事なんだからね?」
素直な本音を口に出せば、じゃれていた二人? が動きを止めてあたしを凝視する。
な、なに? 何かマズイ事いった? って言うかちょっと、そんな眼で見られると恥ずかしいんだけど!
カーっと顔が熱くなるのを感じて、パッと顔を逸らした。
足を運んで頂きありがとうございます。




