精霊救出作戦~序章~
あの日ニマの魔法で聞き取れたオリジン達の会話には、いくつかあたしのゲームと被るキーワードがあった。
アリュスート国、聖女、精霊……。
うーん。ゲーム内のヒロインと思われる聖女が精霊達を誘拐してる? ていうか、聖女なら精霊達が自分から集まってくるんじゃないの? そもそも、認められて聖女になったんじゃなかったの?
そう思いつつオリジンを見れば、クルル様達と話しこんでいる様子。やっぱり、ゲームの内容を考えている時だけはオリジンにあたしの思考が伝わっていない気がする。なんで? うーん。こんなことならもっと勉強しとくんだったぁ!
激しく後悔する。どうやら予想外の方向に進んでいるらしいストーリーのど真ん中に、あたしがいるようだった。もしかしたら、あたしがいる事でストーリーがねじ曲がった可能性もある。
数日かけて必死にない頭を使い、ゲームの攻略本の内容を思い出した結果オリジンは、ゲームには登場していない。
アーニマは、ヒロインが三番目に迎えるはずの精霊だった。犬の形をした風の精霊で、僕っ子。性格は優しく大らかながら、自分の契約者のためなら死をもいとわぬ覚悟で相手を討ち取る。そんなアーニマが、現在あたしの契約精霊になっている。これがどういう意味を示すのか……。
「うーん。謎過ぎてわかんない! だー。もう無理―! これ以上考えてたら鬱になりそう……もういいや、もう知らない!」
ニマが来てから十日経った。幾ら考えても纏まらない事に嫌気がさしたあたしは、ある意味考える事を止める。ニマもオリジンも大事な精霊だし、何よりクルル様が側にいる時に他の事考えるのは嫌だったから……。
漸く、動いても良いですよと言われたあたしは、庭先でニマが遊ぶのを眺めていた。元気に芝の上を走り、風を楽しむ風の精霊――犬にしかみえないけど――は、考えつかれたあたしにとって結構な癒しになっている。
あのモフモフに顔を埋めると天日干しした布団みたいで気持ちいいしね。
『ハク~。見て、見て~』
元気なニマの声に呼ばれ顔を上げる。するとニマは、軽くジャンプすると同時にクルンと前周りに回り着地する。
「おぉ~! 凄い、ニマは運動神経抜群だぁ~!」
両手を叩き、ニマを褒めた。
『ハフハフ。これ楽しいの~』
そう言って色々な動きをしてみせるニマを微笑ましく思いつつ眺めていたあたしの側にゆっくりとした動きでクルル様が歩み寄って来た。
「白、少しいいか?」
「?」
バツが悪そうな顔をしたクルル様に、やり過ぎたかな? と反省しつつ「どうぞ~」と隣を勧めた。どことなくぎこちないやり取りをした後、クルル様が隣に座る。普段なら、椅子に座るはずのクルル様が珍しく、その場に敷かれた絨毯に座る。
珍しいこともあるもんだ!
「オリジン殿と話し合ったんだが、白にも話を聞いて貰うべきだと思ってな……」
歯切れの悪い言い回しをするクルル様。そんな彼を見上げ、話の続きを促した。
まぁ、もう内容はほぼほぼ知ってるんだけどね?
「実はな、母上達の実家が絡む事件が起きているんだ」
「カザス夫人の実家ですよね? 精霊をさらってアリュスート国の協会に売ってるの」
そうなのだ。実は、オリジンが居なかったあの日オリジンは、仲間の異変に気付きある屋敷へ行っていたらしい。
その屋敷と言うのが、お義父様の二番目の夫人であるカザス夫人の実家だった。カザス夫人の人柄から考えれば、それぐらいはしてそう。厭味ったらしく、ネチネチと……挙句、自分の体形を余所にあたしの事をディスってくる。っと、話が逸れてしまった!
囚われた精霊達は、強力な魔力を放つ檻に入れられ衰弱しているとオリジンはクルル様達に話していた。
「!!」
瞳大きくしたままクルル様が沈黙しあたしを見つめる。
驚きすぎじゃない?? そんな顔も素敵だけど……ちゅーしたら怒られる? 今なら行けそうな気が……って、ダメダメ更に嫌われるかもだし、ここは我慢しよう。
キスしたい衝動に駆られならがグッと我慢して、クルル様に話を続ける。
「フェアブロク公爵が絡んでるんでしょう? 攫われた精霊達は大丈夫なんですか? あたしに手伝えることはありますか?」
放心して固まったクルル様の手をこっそり握る。途端、ハッとしたように息を吹き返してしまう。
……チッ、良い所で!
「あぁ、その。白に手伝って欲しい事はあるが、今はまだないな」
「そうですか」
「ところで、どうしてカザス夫人の実家の事を?」
「あぁ~! それはですね。ニマのおかげなんですよ~。オリジンは心の中の声を聞かせてくれるけど、ニマは周囲の人達の話声を聞かせてくれるんです。だから、クルル様たちが話してる内容を全部、聞いちゃいました!」
久しぶりの触れあいに嬉しくなったあたしは、包み隠さず全てを教えてしまう。その結果、ニマと二人オリジンから説教を食らうことになった。
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