お妃修行、敢行中②
あれだけ自信満々だったリーンさんの表情を、ここまで曇らせるほど追いつめた宰相さんをギャフンと言わせたい! リーンさんの味方になりたい。そう考えたあたしは、リーンの手を引き王城を闊歩する。
「ハク様……もう昔の事ですわよ?」
「確かに、エスコートの件は昔かもしれないけど、今現在メイドなんですよね?
二人が話してるのとか見て、リーンさんは嫌な思いをしているんですよね?」
「まぁ……そうですけど・……」
「なら、はっきり言うべきです! 止めて欲しいって」
「いえ、ですが……そのような器量の狭い女だと思われるのは……」
「でも、いやなんですよね?」
「それは……」
勢い良く歩いているのは良いけれど、あたしこのお城の中の事良く知らない!!
今更道が判らないとも言えない状況に、一人なんとか上に登る階段を探す。
確か、謁見の間とかに王様がいる時に宰相いたよな? とか考えながら……。
えっと、場所! 宰相って基本どこにいるの? うーん……。
『ハク。左だ』
おぉ? オリジン場所わかるの?
『クルルの居場所にゃらばわかるにょだ』
え? なんでクルル様?
『クルルに聞けば良いのではにゃにょか?』
あぁ! なるほど、頭良い! 流石オリジン。
『任せるにょだ』
オリジンさっきはごめんね。お菓子食べるしかしてないとかいちゃって……。
流石精霊様、あたしの望みを叶えてくれるらしい彼は、クルル様の所まで道案内をしてくれるらしい。
今度、おいしい日本のお菓子を……料理長さんに伝えて作って貰おう。それをオリジンにあげよう。なんて事を考えながら、リーンさんの手を握ったままクルル様がいるらしい分厚い茶色の扉の前に辿り着いた。
扉の両側に立つ衛兵みたいな人にペコっと頭をさげたあたしは、扉をノックする。
返事は無いものの中から人が近付いて来る足音が聞こえた。そして、開く扉から顔を見せたのは、ドS大王ことイリュス様だった。
「え?」
「どうもー! クルル様いますかー?」
「え、えぇ。いらっしゃいますが、どうしたのですか?」
「まぁ、事情は追々話します。で、クルル様に会いたいんですけど……?」
「失礼しました。どうぞ……」
「ありがとうございます。さぁ、入りましょうリーンさん!」
目が合った瞬間固まるドS大王。それを無視して元気に明るく開いてる方の片手を挙げてご挨拶しつつ、クルル様がいるかを確認した。
中にいると言う事で入れて貰おうとしたのだけれど、固まったドS大王が動かない。そこで、あたしは中に入れろと言う意味を込めて会いたいと言う言葉を強調する。
ようやく開いた扉の中へ腕を掴んだままのリーンさんと一緒に入れば、執務机で難しい顔をして書類とにらめっこするクルル様が見えた。
「イリュス。誰だっ――は?」
クルル様相変わらずイケメン! まぁ、惚れ惚れするぐらい素敵なのは初めから知ってるけど惚れ直すわ! って固まってる顔もイイ! などと思いつつ、目的を果たす。
「やっほ~。クルル様久しぶり! あのね。聞きたい事があるの」
「ハク様……礼節を持って!」
「あぁ、うんそれはまた今度で! でね~。宰相ってどこにるの?」
軽く挨拶を返し、宰相さんの居場所を聞こうとしたあたしに、リーンさんがいつも通り注意する。けれど、今はそんな場合ではないと勝手に話を終わらせた。
「宰相?」
「そう、リーンさんの旦那さんの宰相!」
「それなら、父上の執務室にいると思うが……?」
「そっか、場所ってどこ?」
「それならば、どうせ私も父上にこの書類を持っていく用事があるし一緒にいこう。少しだけ待ってくれるか?」
「やった。ありがとー。クルル様! 待つよ~!」
「あぁ」
流石、クルル様。地図書いて貰おうと思って聞いたのに、わざわざ用事を作ってまで案内してくれるなんて!
「ところで、どうして宰相に会いたいのですか?」
「えっとね、深い事情があるの。今はまだ話せないけど、大事な事なの……宰相さんの態度いかんでは、この国にあたし失望するかもしれない」
「はっ?」
「えっ?」
「な、なんだと?」
イリュス様に後で説明するとは言ったけど、これってリーンさんの家庭問題だから簡単に話したりできないよね。ってことで、ちょっと話を盛って伝えてみたんだけど……どうやらやり過ぎたらしい。
明らかに顔色を悪くするイリュス様。
そんな大事になっていたのですか? と言いたげな表情のリーンさん。
両手を机に着き立ちあがるほど驚いたらしいクルル様。
三者三様の驚き方を見事に表現してくれた三人に、あたしは内心盛り過ぎたと少しだけ反省する。
失望は言い過ぎた……。でも、この国の男の人がそう言う考えなら確実に失望するしなー。かと言ってクルル様を嫌いになるかと言えば全くないとけど。
「そ、そんなに重要なことなのか?」
「うん。ある意味では凄く重要だね~。だって、あたしたちにも関係ない事じゃないし?」
「そ、そうか……と、とりあえず書類を書きあげるからもう少しだけ待ってくれ」
「は~い」
あたしが何をするつもりか分からないイリュス様の表情が険しくなった。
重要か? と聞かれたので、内容伏せてる手前そうだと言うしかなかったけど、クルル様が凄く焦ってる気がする。
まー。いずれね、結婚するかは分からないけど……仮にした場合に、一夫多妻制持ち出されて、浮気なんてされたらあたし発狂すると思うし……まったく関係ない話じゃないよね? 重要だよね?
「では、いこうか……」
「はぁぃ。リーンさん行きますよ!」
「え、えぇ」
10分位して立ちあがったクルル様と一緒に、リーンさんの手を引いて王様の執務室へ向った。
向かった王様の執務室の前でクルル様が一瞬だけ不安そうにあたしを見ると深呼吸をして扉をノックする。中から現れた騎士さんがクルル様に丁寧に頭を下げ、中に入るお義父様に確認を取ってから室内に招き入れられた。
クルル様が仕事をする様子を見ながら、リーンさんの視線を辿り宰相と思われる中年のイケメンを発見した。
明るめの茶色の髪を後ろに撫でつけ、それと同じ色のカイゼル髭を生やし、深い緑の目に頭の良さそうな顔。その上で優しげな表情をして笑っている。
これは多分若い頃、超イケメンだわ~。しかも頭も良さそう~。
そんな感想を抱きながら宰相を観察していたあたしに、お義父様がソファーを進めてくれつつ声をかけてくれた。
「それで、ハクよ。何やら重要なことがあると王太子から聞いたがどうしたのだ? 私で相談に乗れる事ならばなんでも言うが良い」
「そうだぞ、私たちはいずれ夫婦となるのだ。なんでも相談して欲しい!」
緊張した様子のクルル様とそれに良く似た顔立ちのお義父様。
そんな二人に視線を合わせニッコリ微笑みを浮かべ、まずは浮気についてどう思うのかを聞いてみる。
「あのですね~。王様って、既に奥さんがいて他にも四人奥さんがいるじゃないですか? 政治のため?
王様も大変だなとは思うんですけどね……一人じゃなんでダメなんですか?」
「……そ、それは、だな」
「……」
少しだけ痛いと言うような表情をしたお義父様に、更にたたみかけるように言葉をつなげた。
「はっきりと言いますけど、奥さんがいて他にもって言うのはダメじゃないんですか?
だって、女は妊娠した時に子供が誰の子供か分からないからって言う理由だけで一人以外には嫁げないのに、男は平気で何人も妻を作れる。それって不平等ですよね?」
「国同士の繋がりのためには必要な事でございますよ。ハク様」
浮気について、はっきりと口に出して言えば宰相さんが自分の事を棚に上げた回答をした。
国の為ね。確かにこの国ではというかこの世界では、一夫多妻制がまかり通る。
それは国の事だし色々理由があるのだろうとは思うけど、宰相にはリーンさんと言う素晴らしい奥さんがいるのに、幼馴染をメイドと言う体で受け入れている。
それは浮気にならないの? おかしいってなんで思わないの?
一夫一妻制で生まれ育ってきたあたしはそれを受け入れられない。ていうか、マジありえない。もしクルル様と結婚して、他のお妾さんを迎えますとか言われたらあたしはそれだけで、もう愛されていないと思ってしまう。
足を運んで頂きありがとうございます。




