リーンの正体④
いじめられた原因は私の行動じゃなかった。だからと言って、あの時の恐怖が消えるかと言われれば、無理だ。金平さんは謝ってくれたし、心の生理がついたら許したいと思う。彼女は隠れオタクだったらしいし、ある意味で同志だったから。
呆れ顔のままイリュス様が、金平さんに質問を始めた。内容は、教会のこと。リーンの身体に入った理由。ポーションを使った理由なんかだけど、ほとんどが教会の司教の仕業っぽい。
「あたしもそこは良くわかってないんだ。気付いたらこの身体に居たし、意識が冷めたらここにいたって感じで、何がどうなってんのかさっぱりなんだよ。ただ、意識を失う前に必ず教会の司祭の部屋に連れて行かれたのは覚えてる」
「司祭の名前は?」
「あれやってたなら知ってるだろうけど、クリス・リチャード・ベディルナート。見た目は、小悪魔系の少年って感じで金髪青眼野郎だよ」
「うそっ! クリスがいるの?!」
クリス・リチャード・ベディルナーは、クルル様と同じ隠し攻略対象だ。笑顔が可愛い色白の男の子で、歳は――クルル様が十八だから――十七歳か。金髪はクリクリパーマのショートで、瞳は青の中でも濃いめの青。
教会で司教なんてしている理由はわからないけど、クリスは北の大国ベディーナの第三王子だったと記憶している。出てくるのはクルル様の二か月後だからまだいないはずだけど……どうなってるの?
「クリスとは誰だ?」と聞くクルル様に「クリスは、北の大国ベディーナの第三王子だよ」と答える。
「え! そうだったっけ?」
「クリスは隠しキャラだから、クルル様とは別ルートだねー」
第三王子と聞いて驚いたのは金平さんで、彼女はクリスの存在自体を知らなかったみたい。イリュス様はジッと眉を寄せ瞼を落として、記憶を漁っているようだ。
三人三様の反応にあたしは、オリジンたちの方を見る。契約精霊の中で北と関係があるとすればグレイシアだけど……彼女はベディーナ国を嫌ってアリュスート国に来た設定だ。そんなグレイシアに嫌っている国の事を聞くのはなんか違う気がする。
そう言えばさっきから気になってたけど、金平さんがクリシュアに反応しないのはなんでだろう? ゲームの知識があって、自分がリーンだと自覚しているのに、契約精霊であるはずのクリシュアのことを覚えている?
「金平さん」
「ん?」
「彼が誰かわかる?」
あたしは、敢えて名前を言わずにクリシュアを指さす。すると金平さんはクリシュアを見て大きく頷いた。
「クリシュアでしょ? 知ってるよー」
「……そう。ありがとう」
確認してみて、ハッキリしたことがある。
攻略本に書いてあったことだけど、精霊と契約を交わしたヒロインは何らかの理由で契約が解除された場合その精霊に関するすべての記憶を失う。けど、金平さんはクリシュアを見て名前を言った。名前が出るってことは、見た目リーンであっても金平さんとクリシュアは、契約を交わした間柄じゃないってこと。
この疑問が解けた所で、謎が増えるんだけどね……。
じゃぁ、誰が契約したのかとか、命令したのか、とかね……あぁ、なんでこうも増えるのぉぉぉぉ! 発狂しそうだよぅぅぅ。
「そう言えば、金平さんに聞きたいことがあるんだけど」
「なんでも答えるよ~」
「あのさ、いつぐらいからここに居たかわかる?」
「うーん……それがさー、途切れ途切れで……ハッキリしないんだよねー」
いつ頃からこっちの世界に来たのかはわからないか……。
――クリシュア。辛い思いでを思い出させるようで悪いんだけど……前に『あの者たちに会ってからリーンは変わった』って言ってたけど、アレはいつぐらい?
『確か……教会に連れて行かれて月が二十三回ほど昇った頃だ』
――そっか。ありがとうね。リーンが連れて行かれてた部屋は、教会のどの辺りか分かる?
『すまない。奥としか効いていない』
――ありがとう、クリシュア。これでも食べてね
答えてくれたクリシュアにお礼を言いながらクッキーを手渡す。
ってことは、リーンがおかしくなるまでひと月かかってないって事だよね。部屋はどこかわからないけど、精霊すら近づけない部屋がある。そこで何をやってたのかわかれば……あぁ! 金平さんに聞いてみよう。
「何回もごめんね。金平さんは、教会の奥に部屋があるらしいんだけどここかなって場所はある?」
「あーあるわ! 教会の最深部でさー、ゲームにはなかった部屋があるよ! 部屋全体が真っ赤に染められててさ気味悪いったらないの。床と天井にでかい魔法陣っぽいのが浮かびあがっててさ……そこで司教と……あれ? あたし何してたんだっけ?」
あたしの質問に答えていた金平さんが、言葉を区切り眉根を寄せて頭を傾げた。司教、あたし、何してたっけ?と、言葉を短く区切り、必死にあったことを思い出そうとしていた。
また来週と言いたいところですが、15日過ぎに引っ越し予定のためストックできれば予約投降しておきます。無理だった場合はごめんなさい!




