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大好きなカレはツンツンからツンデレになるみたいです③

 過去を思い出し落ち込んだあたしはオリジンの言葉に救われ、クルル様、イリュス様と言う思いやりのある優しいイケメン3人に囲まれている。

 メアリーが用意してくれた冷えた布を目に当てながら、この部屋で一生引き籠りしていたいとさえ考えていたあたしの部屋を再び誰かが訪問した。


 冷やしていた布を取り扉の方を見たあたしの視界に映った幼い容姿にピンクの可愛いフリル、赤いリボンが沢山ついたドレスを纏ったクルル様の妹クリスティアちゃんだった。


 室内を見回したクリスティアちゃんは、クルル様とイリュス様を見つけると「どうして……? わたくしお姉さまと仲良くしたいだけなのに……」そう言葉を零し、瞳を潤ませ一筋の涙を零した。


 イリュス様が、立ち上がり涙するクリスティアちゃんの元へ行くと、そっと頭を撫でハンカチを差し出した。大人な男性の対応だなぁ~。と関心しつつ見ていた私の腰にまわされた手が肉を掴む……。


 何するんですか? と言いそうになりながら掴んだ本人を見れば、ジト目を向けてあたしを見ていた。あたし何かマズイことした? 

 クルル様の視線の意味がわからずコテンと首を倒しその瞳と言うより眉間を見つめてみる。


「……」


「……っ!」


 ぽっと頬を染めたクルル様が、口元を手で押さえ顔を背けた。それを見ていたらしいオリジンが、ボソっと『ハクは、男心がわかっていにゃいにょだ』と言っていた。


 は……?? 女の子だし判るわけないじゃん! なんて考えていた私の目の前に立つクリスティアちゃんが、私とクルル様の間を指さすと「ここに座りたい!」と言い出した。


「いいよぅ~。座ってクッ「だめだ。イリュスの隣が空いているだろう? そっちに座ればいいだろう?」」


 仲良くなるチャンスと捕えたあたしが、横にずれながら一緒にクッキー食べようと言いかけたところで、クルル様が少し怒っているらしい事が判るきつめの口調でそれを却下する。

 困惑した様子見せたクリスティアちゃんの瞳がまた潤みだし、あたしは一人あたふたと二人へ交互に視線を向けた。


「お……お兄様、ど、どうして?」


「クリスティア……それはダメだとわかっているだろう?」


「だって……お兄様はいつもティアと一緒に座ってくださいました……!」


 二人? いやイリュス様を含めれば三人……にしかわからない会話をされ、軽く蚊帳の外に居る私は、なんだか気まずい気分になった。

 どうしよう……やっぱりここは、席を外すべきだよね? ちょっとお花摘みに行ってきますとか言って席を立ってばいいかな? よし、言おう!


「ぁ――「嫌! ティアはお兄様の隣に座りたいの!」」


 声を発しようとした刹那、三人で会話を続けていたクリスティアちゃんが徐に叫ぶと、クルル様に抱きついた。その横に座るあたしは、必死に自分の存在感を消し空気になる努力をした。

 

『ハク……そにゃた(そなた)にゃにを(なにを)しておるにょだ(しておるのだ)?』


 海の底に漂うクラゲのように存在感を消そうと、髪で顔を隠すあたしの様子に気付いたらしいオリジンが、あたしにだけ聞こえる声で質問した。


『えっと……とりあえず、邪魔しないためには空気になってた方がいいかなって思って……』考えを読めるオリジンにそう答えたあたしを、丸い目で見つめていたオリジンはクッキーを掴んだままコテンと首を横に倒した。


「はぁ……クリスティア、以前と言っている事が逆転していないか?」


「そっ、そんなことないもん! お兄様が記憶違いしているだけじゃないのですか?」


「大変失礼ですが、私もクルル様と同様の内容を覚えておりますが……?」


「イリュスは、黙ってて! とにかくここに座りたいの!」


 困り顔のクルル様が、以前嫌がっていたはずだとクリスティアちゃんに言えば、彼女も負けじと応戦する。けれども、そこにイリュス様と言う強敵が現れ最終的には座りたいの一点張り。


 別に座らせてあげればいいと思うし反対意見を出したつもりも無いけど? 涙目で何故かずっとクリスティアちゃんに睨まれている……あたしにはこの状況が耐えられそうにないんですけど……。

 どうにか逃げ出すチャンスを待っていたあたしに最大の好機が訪れたのは、その数分後だった。


「あっ、あのぅ~?」


「何よ!」


「どうした?」


 無言で睨みあう二人が沈黙した瞬間、好機だとばかりに声をあげれば、クリスティアちゃんは怒鳴りつけるようにあたしを睨み、クルル様は、何故か微笑みを湛え優しく答えてくれた。


 何これ? マジでどうしたらいいの? 必死に何か良いアイデアは無いか? と探す私の頭の中は既にキャパオーバー状態だった。


 それでも、なんとか当初の目標である席を立ちたいと言う意思を伝える。


「おっ、おはなを摘みに行きたいので、クルル様放して下さいませんか?」


「そうか……わかった。イリュス、メアリー悪いが、庭園の方にお茶の用意を頼む」


「「かしこまりました」」


「ちょっと! わたくしのお茶会には出席しない癖にお兄様とはお茶会するって言うの?!」


「え……? クルル様?」


「ん? クリスティアは部屋に戻りなさい。ここは私の婚約者の私室だ」


「いやよ! お兄様のバカっ!!」


「どうした? 白?」


「ぷくぅ~すぅ~。ぷくぅ~すぅ~」


「あ……え?」


「ううぅ。シクシク」


「庭園に準備させているからもうしばらく待つと良い。白は花が好きなのだな……覚えておく」


 お花摘みに行きたいと言ったあたしの言葉に、クルル様は酷い勘違いを起こし、何故か庭園でお茶会をすると言う。そして、ついにクリスティアちゃんが泣きだしてしまう。

 助けを求めようとオリジンを見れば、鼻提灯を膨らませプク~スゥーと繰り返し爆睡中……。


 オリジン~~!! 可愛い、確かに寝息もその姿も可愛いけど、今は空気読んで!! どうしたらいいの……? ていうか、なんでこんなことになったの? もうこれ、トイレに行きたいだけだとか絶対に言えない空気じゃん。はぁ~誰か助けて……。


 誰か、誰か空気を読んで? そう思いながら周囲に視線を向けた。

 妹姫に厳しい目を向けながらも腰にまわした手でがっしりとお腹のお肉を掴むクルル様。

 爆睡中のオリジン、可愛い顔を歪ませ泣くクリスティアちゃん。


 嬉々としてお茶会の準備をするため他のメイドさんたちへ指示を出すメアリーさん。警護の人員を用意するためか、扉の外にいる警備の人に声をかけているイリュス様……結果、誰もいなかった……。


 その様子にがっくり項垂れたあたしは、未だ続く兄妹喧嘩の声だけをBGMにどうすればこの局面を乗りきれるのか一人頭を悩ませていた。

 

足を運んでいただきありがとうございます!

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