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「ほぉぉ……。これはこれは……。何か感じるものがありますねぇ」


 マンホールから首を出して、その先に広がる光景に感心した声を上げるにこやかな笑顔を浮かべる男。

 そのまま地上へと這い出ると、ぱんぱんと膝についた砂を払う。


「一応、来訪者の人たちは皆さん代表者のところへ来てもらうってことにしてます。面通しって感じなんで、木下さんたちも疲れてるかもしれないですけど、このまま一緒に来てください」

「はいはい。了解です」


 代表して木下和人が答える。

 彼以外も特に異論はないようでその言葉に頷くと、周りをきょろきょろと見回す。

 彼らにとっては人の居住しているコロニーの様子が気になるからだろう。

 だが、逆にアキカンヒロイの居住者たちにとっても見慣れぬ来訪者には興味がある。ぶしつけに向けられた視線に落ち着かないということもある。

 さらに言えば、明らかに自分たちとは違うかなり「個性的」な風貌の彼ら。

 まだスーツ姿の姉崎敏郎や「旅立ちの服」の木下和人は、そういう装備アイテムもあるのか、という反応で済むだろうが、ゴリゴリの近未来的サイバネティックなボディーアーマーの南方詩音に、コミカルなゲームキャラのコスプレにしか見えない御沢亘はその限りでない。

 明らかに注目を集めていた。


「じゃあ、悪いけど健太。祥子さんたちのトコ、声だけ掛けにいってくれね?」

「あ、大丈夫ですよ雄一郎さん。俺たちの方でもう人やってますから」


 マンホールの警備についていた瞬にそう声を掛けられる。

 片手でもったパイプ槍が頼もしく見える。


「そっか、悪いな」

「皆さんが戻ってきたらすぐに連絡をって言われてたんで。会議室の方に行ってくれれば」

「オッケ。じゃ、仕事頑張ってな」

「うっす!」


 片手で敬礼の真似をして見せた瞬に片手を上げて雄一郎が全体を先導する。

 この場にいないのはポンコツトラックをガレージに隠しに行った後に、そのままそこに残ったジェットだけだ。

 因みに亘の「ブットビカート」のレースカーも一緒に格納してある。

 こちらは亘以外の人間では動かないという仕様でどうにもできないようだが、念の為ということもある。

 それにあのカラーリングは目立って仕方ないということも理由の一つだが。

 ジェットはそれの管理として残る、という名目を勝ち取り、祥子たちへの報告を雄一郎に丸投げしてバックレたわけだ。


(面倒ごと全部ぶつけんだもんな。……祥子さん、もう後は任せますよ)


 何故か孤高を気取る彼女であっても祥子とはそれなりに話はするらしい。人徳というヤツだろうか。





「失礼しまーす」


 ノックをしてから会議室に入室する。

 会議用のデスクで仕事をしていた祥子が帰ってきた皆を出迎える。

 立ち上がってすぐに、彼女は雄一郎たちの後ろに立つ皆を見た。

 そしてそのままある人物の顔を見、その視線が止まる。


「あらあらあら! お客さんと一緒に帰ってきたって話だけど!」

「あはは、やっぱりですかぁ。聞いた感じだとそうじゃないかなぁと思ってたんですが」


 とと、と祥子が歩いてその人物、人のいい笑みを浮かべた木下和人の前で立ち止まる。


「久しぶりですね、和人さん」

「いえいえ、こちらこそ。私は半年ぶりってかんじなんですが、こっちじゃ三カ月ちょい余計に時間が過ぎてますからね。まあどちらにしてもお久しぶりです」

「日本にはいつ?」

「一昨日、と言いたいですがそれも三カ月を足すと……。ああその計算が面倒ですねぇ」

「三カ月を足す? ん?」


 事前の情報がないためにおかしな会話になりつつあるのを察した祥子が、周りを見て棒立ちになる皆に気付く。


「あ、ごめんなさいね。どうぞ、皆さんお座りくださいな。立ったままでは何ですから」


 そうやって席を進める祥子に雄一郎が口を挟んだ。


「あの、祥子さん。こちらの木下和人さんとは、どういうご関係で?」


 皆の疑問を口にした雄一郎に、祥子が説明なしで気軽に和人に話しかけたのがどういうことなのか皆が分からないことに気付いた。


「ええ、ご紹介しておきましょうか。こちらの木下和人さん。私の不出来な娘のダンナさんだった人よ。お別れしてしまって、元がつくけれどね」

「そういうことですね。ということで、祥子さんからすると義理の元息子、私からすると祥子さんは元お義母さんということです。あっはっは」


 恥ずかしそうに笑い合う二人を見て、その場の全員がどんなリアクションすればいいかを真剣に悩むのだった。


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