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響くは『ハーメルン』の笛の音  作者: 勇寛


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(危ないところでしたねぇ……。まさか、こういう手でくるとは)


 てくてくと「笠村砦」へと歩いていく和人。

 一応の礼儀として「こじゃれたリクルートスーツ」というネタアイテムを装備しておく。

 ネタ装備という事もあって、尋常でない守備力や何かしらの効果があるわけでは無いが、それでもこれで「鉄のよろい」とトントン位の守備力を持つおかしな装備だったりはするのだが。

 地面には爆炎の跡と、その跡に転がるゾンビが数十体。

 全員がこんがりと殲滅されている。

 自分が作り上げた惨状に目もくれず、和人はいまの戦闘で自分の手に入れたドロップ品を確認した。

 雄一郎の持つ「テキパキニッパー」のような解体用のアビリティを用いずとも、自動で入手したアイテムが自分の背負う「ナップザック」に入ってきていた。

 ドロップしたアイテムは「ポーション」「兵糧丸」「おにぎり(うめ)」などの低ランク品がほとんどだが、レアドロップが一つあった。


「リボルバー式の拳銃、ですか。……弾が無いでしょうに。どこで用立てろと?」


 ドロップした中に、「回転式拳銃・ハンドメイド」が一点ある。

 WE3の装備品であり、ゲーム開始から少し進んだくらいで時たま手に入る程度のものだ。

 最初期に入手できるレア銃器として拡張性が高く設定されていて、自由度がウリのWE3で武器・防具のカスタマイズを施す人間も多かった。

 所謂、チュートリアル用の武器の一つだ。

 とはいえ、和人の独り言でもわかるように今の段階で消耗品の弾丸を定期的な補充ができる術がない。

 それ以前に一発も弾丸というものをお目にかかっていないのだ。

 ゲーム内ではほぼNPCキャラとの売買取引での入手か、銃器を使用する敵からの剥ぎ取りしかなかった。


(……NPCの解除と同時の銃器の解禁。なるほど、いやらしいマネをする)


 恐らく、今後銃器がドロップする機会が増えるのだろう。

 そして銃器を用いる“ヒューマノイドタイプ”の敵が現れる事態に世界が移行したということでもある。

 ざっざっ、と荒れた地面を革のポインテッドシューズで歩くという不思議な光景。


(NPCの街をコロニーとして認定、そして一定数の住人がいればそこに初回のモンスター襲撃を仕掛ける、と。……平和的な街であった場合はひとたまりもない。プレイヤーが救援しなかった場合は即崩壊でしょうね。しかもウチの場合はゾンビ系。崩壊したらそのまま一番近い町がゾンビのテリトリーになる。これはプレイヤーを殺しにかかる罠か。……誰が考えたか知らんが悪辣だな)


 プレイヤーである皆が助けに入らなければ拠点が陥落、そしてそこが新たな敵対的拠点へと変換される。

 今回、「アキカンヒロイ」が手をこまねいていれば「笠村砦」はゾンビに襲われ、居住者はゾンビへと変わっただろう。

 そしてそのゾンビの拠点が目視できる範囲で存在することになるコロニーの運営はどうなるか。


(……できれば多くのコロニーが手を差し伸べてくれていればいいんですがねぇ)


 難しいだろうことは誰にでもわかる。

 相手が友好的かどうかが不明瞭なまま、そこが襲撃されているとして救援に向かうかどうかを即決する必要がある。

 完全無視は論外だが様子見という事も出来ないとなると、このクエストの裏に潜む悪意をひしひしと感じざるを得ないだろう。


(戦国一閃の街、というか砦だからもった。……ゲーム内容によっては)


 平和的な牧場、コンビニ、スーパー。

 その辺りはNPC街としてアンロックされるかも、と想定されている。

 そこに大挙するモンスター、もしくはヒャッハーを代表とするような敵対的NPC。

 あまり愉快でない結果になるはず。

 和人が雄一郎の報告を聞いてすぐに飛び出したのはそういうことだ。

 明らかに出現したNPC街を防衛することができないと、かなりの不利益を被るようになっていると理解できた。


「あー。すみませーん」


 てくてくと歩き、「笠村砦」正面の門に辿り着く。

 正門にもたれかかるように倒れているゾンビが戦闘があったことを示している。


 ぎぎぎぎ……!


 重い音をさせて正門が開いていく。

 中からまず、先行した詩音が顔を出した。

 和人が飛び出すと同時に、彼女はそのまま砦に向かい、まずは挨拶をしておいてくれとの和人の指示に従ったわけだ。


「お待ちしてました、和人さん。……向こうの責任者は席を作る、とのことです。少し時間が欲しいと」

「まあ、当然ですね。急に襲撃を受けて、それで私たちが横殴りしてきた形ですから。それにコロニーからも人が来ますし。話はそれと合流してからがいいでしょう」


 廃ビルの間から砂煙が見える。

 どうやら軽トラを出してきたらしい。荷台に数人が乗っているのも確認できた。


「祥子さん、来るんですか?」

「いや、多分羽田さんだろうね。あとは医薬品関係持ってきてと言っておいた。少しは警戒を解く助けにはなるだろうさ」


 あっけらかんという和人。

 横にそっと来た詩音がトーンを落としてぼそりと尋ねる。


「やっぱ、わかります?」

「そりゃあ、ねえ? あんなあからさまに矢をつがえられると」


 ははは、と軽く笑ってみせる和人。

 仕方ないこととはいえ、ここからどうやって彼らの心を解きほぐすか。


(さぁて、交渉交渉! まずは笑顔ですね!)


 にこり、と笑みを浮かべて正門前に陣取る「笠村砦」の皆に向けてみる。

 因みに残念ながら彼らは持っていた武器に、さらに力を込めるだけだったのだが。

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