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第6話 必歩流帝〜酷等との抗争③

 燃え上がるバットを手に、空玲須(クレス)は戦場に立った。「酷等(ヒドラ)」の手下たちは、火を恐れるように腕で顔を守る。

 空玲須(クレス)の前に、道が開いた。その向こうには「酷等(ヒドラ)」のヘッドが見える。

「うおぉー!」

 隙を見逃さず、必歩流帝(ヒッポリュテー)が突撃。あっという間に距離を詰めて一撃!「酷等(ヒドラ)」のヘッドは倒れた。

 いや、倒せてはいなかった。手下と同じく、ゆらりと立ち上がるヘッド。じゃらりと音がして、何かが必歩流帝(ヒッポリュテー)の腕をつかんだ。

「!チェーン!?」

 ヘッドが必歩流帝(ヒッポリュテー)の腕に巻き付いた鎖を引っ張る。投げ飛ばされる必歩流帝(ヒッポリュテー)。

「こいつ、なんて力…。」

 復活、不死性…?

 空玲須(クレス)は岩を探したが、ここにはない。仕方がない。建物のトタン壁をぶち破り、柱に力を込めた。

 グググ…、バキッ。

 空玲須(クレス)は、留め具のところから外れた鉄骨の柱を頭上に持ちあげた。

「必歩流帝(ヒッポリュテー)、よけろよ!」

 一応声をかけてから、空玲須(クレス)は鉄骨を「酷等(ヒドラ)」のヘッドに向けて投げた。


 遠くから、パトカーのサイレンが聞こえます。

「…今日はよくやったね。ありがとう。」

「あねさんこそ、お疲れっす!」

「よし、解散!」

 空玲須(クレス)に鎖を外してもらいながら、必歩流帝(ヒッポリュテー)はメンバーを逃がしました。

 「酷等(ヒドラ)」のヘッドは、鉄骨の下敷きになって、その上には、黒い影がゆらゆらと浮かんでいます。

「これが、『怪化』…?」

 必歩流帝(ヒッポリュテー)が聞きました。

「ああ。駅土奈(エキドナ)先生のところに連れて行かなきゃ。」

 空玲須(クレス)は、必歩流帝(ヒッポリュテー)の顔を見て、そして、必歩流帝(ヒッポリュテー)の手を握ったままの自分に気がつきました。急いで手を引っ込めます。

「ふっ…。」

 必歩流帝(ヒッポリュテー)は、すすで汚れた頬を手の甲で拭きながら微笑みました。

 空玲須(クレス)は、女鹿蘭(メガラ)にもらったレジ袋をポケットから取り出し、黒い影を入れました。

「さあ、ウチらも行くよ。」

 必歩流帝(ヒッポリュテー)がバイクにまたがり、空玲須(クレス)を呼びます。

 パトカーが到着する少し前に、バイクのテールランプは港の倉庫エリアを出て、街へと消えていきました。


 一夜明けて。

 駅土奈(エキドナ)先生は、美しく妖しい微笑みを浮かべて、空玲須(クレス)からレジ袋を受け取りました。

「…うふふ。

 あと、何人いるかしらね。

 また、よろしく頼むわね。」

 教室に戻った空玲須(クレス)。男子が皆、噂しています。

「あの二組の…」

「ああ、久しぶりに学校に来たらしい。」

「美人だけど、怖いんだよな。」

「レディースの総長だからね。…でも、イイよなあ。」

 どうやら自分のことではない、と安心した空玲須(クレス)。そのとき、教室の扉が勢いよく開かれ、美しい金髪が入ってきました。そして、

「よう。昨日はありがとな。」

と、笑顔で言いました。

 周囲がざわつく中、するりと、空玲須(クレス)の腕に自分の腕を回します。

「えっと。キミは…。」

「必歩流帝(ヒッポリュテー)でいい。その呼び方で慣れちゃったよ。となりのクラスだから。いつでも会いにきてくれよ。」

 胸に金属製のベルトを煌めかせながら、教室を去る必歩流帝(ヒッポリュテー)。空玲須(クレス)と男子たちは、その姿を目だけで見送りました。

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