1話 カイとエドガー
空と水平線だけが見える崖の上には草原が広がり、一軒家がぽつんと建っている。二人暮らしにはちょうどよいくらいの広さで、いかにも研究家や発明家が好みそうな本や物が家中に溢れていた。
そんな家に住むのは、8歳の少年カイと祖父のエドガーだ。
「じいちゃん、オレも一緒に行きたい!」
まだ夜が明けて間もない。荷物の準備をしているエドガーにカイが元気よく言う。
「カイ、お前も変わり者だな!みんなが馬鹿にしたワシの研究に興味を持つなんて。」
エドガーはガハハハと笑いながら、少しくせ毛なカイの黒い髪をガシガシと撫でた。
「よし、まずは腹ごしらえだ!」
食卓にはパンとゆで卵、そしてソーセージ。エドガーが慣れた手つきでテーブルに並べていく。ミルクの準備はカイの仕事だ。冷蔵庫からミルク瓶を取り出し、あらかじめテーブルに置いたコップへと注ぐ。
腹ごしらえを済ませると、カイとエドガーは森へと向かった。
森に着くと、エドガーは大きなリュックから自作の測定器を取り出した。
「やはり一定にはならんか…。」
エドガーはゆっくり揺れる計測器の針を目を細めて覗き込んだ。カイも同じように覗き込む。針の指す一番低い数値と一番高い数値の両方をエドガーは手早くノートへ記録していった。
森の中の様々な場所で同じ事を繰り返し、進んでいく。そう何度かしているうちに、さっきは水平線から出たばかりの太陽が真上を通過しようとしていた。
「そろそろお昼にするか。」
エドガーはまた大きなリュックから今朝用意しておいたお弁当を取り出した。カイも同じく自分のリュックからお弁当を取り出す。
白米に魚を焼いてほぐした身をかけただけの簡単なものだが、カイはこれが大好きだった。
昼食を食べたあと、エドガーは先ほどの記録をまとめ始めたので、暇になったカイは木に登って遊んでいた。
木の中間くらいまで登った時だ。上の方に何かキラキラしたものが見えた。少しずつ近づく…
「なんだこれ?」
手を伸ばしてそれを取ると、ふわっとした感触だった。
「……羽?」
白い羽のようだが、ただの羽ではない。先に金属の装飾とキラキラした石がはめ込まれていた。
なんだが宝物を見つけたような気持ちになったカイは、自分のリュックに羽が折れないように大切にしまい込んだ。
森を抜け、家の近くの草原の帰り道。もうすっかり夕方だった。
「なんだ…あれ…」
カイは少し震える声でエドガーの服を引っ張った。カイが目を見開いて見ている方向をエドガーも不思議そうに見るが、いつもの空と水平線の景色が広がっているだけだった。
しかし、カイの目には、いつもの風景にさも当然のようにそれは存在していた。
それは空に浮く巨大な島…。




