174.新巫女
とりあえずチアーズプログラムというものに登録してみました。28日から始まるらしいので僕のために皆さん28日くらいに読み返しをぜひしてみてください。
玉座の間で、俺は、完成したばかりの『修復・支援型』の設計図を眺め、頭を抱えていた。
「ノア。この船、作るのに、どれくらいの時間がかかるんだ?」
《算出結果を報告します》
ノアの冷静な声が響く。
《建造に必要な素材の精製、構造体の構築、システム統合、及びナノマシンの製造まで、現在のリソースを鑑みると、予測時間は約3年8ヶ月です》
「さ、さんねん!?」
俺の絶叫が、玉座の間に響き渡った。
「冗談じゃない! ネメシスがいつ来るかも分かんないのに、そんな悠長なこと、やってられるか! 俺の昼寝の時間が、保証されなくなるだろ!」
その言葉に、エリスが即座に反応した。
「管理人様、お待ちください。ノア、その建造プロセスを、時間流の操作で加速させることは可能ですか? 危険性は……」
《可能です》
ノアは、エリスの問いを待たずに、断定した。
《本城の主動力炉と、七番艦エコーの『幻影航行』技術を応用し、建造区画のみ、時の流れを極限まで加速させます。その際、我々、外部の時間の流れは、ほぼ停止した状態となります》
「おお! それだ!」
俺は、飛び上がって喜んだ。
「面倒くさがりのエコーが、まさか、こんなところで役に立つとはな!」
『……うるさい……(無の部屋より、微かな不満の声)』
《了承しました。建造区画の時空加速を開始します》
玉座の間のモニターに、建造ドックの映像が映し出される。光の粒子が渦巻き、その内部で、船体の構築が、信じられないほどの速度で進んでいく。
そして、わずか数秒後。
ノアのシステムが、建造の完了を告げた。
《建造、完了しました。内部時間で約3年8ヶ月。外部時間との差は、約4/76×10^24に短縮されました》
その数値の凄まじさに、俺は、もはや何も言えなかった。
目の前に、音もなく出現した、新しい方舟。
それは、アークノアとは違い、無骨で、効率だけを追求した、灰色の機能美を持つ、小型の船だった。船体の至る所に、汎用ドッキングハッチと、修復用のアームが、無数に装備されている。
「……壮観だな」
エラーラが、感嘆の声を漏らした。それは、まさに、ネメシスに対抗するための、新たな『希望』の艦。
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だが、その希望には、一つ、決定的な欠陥があった。
「ノア。この船の制御は、誰がやるんだ?」
《新規方舟には、必ず、その制御を司る『巫女』が必要です》
ノアは、淡々と告げた。《この船のシステムは、修復作業に特化しているため、その制御には、高度な機微と、職人としての知識を持つ、新たな巫女を配置しなければなりません》
「……なるほど」
俺は、ニヤリと笑った。
そこで、俺の出番だ。権能レベル5で解放された、最強の力。
「ノア! 権能『生命創造』だ! この船にふさわしい、最高の巫女を、作ってやれ!」
俺の命令に、ノアは、忠実に従った。
新しい方舟の艦橋に、生命の光が宿り、物質生成が行われる。
そして、数秒後。
艦橋に、一人の女性が、姿を現した。
黒髪ではなく、燃えるような赤い髪。その髪は、無造作に短く切りそろえられ、その瞳は、炎のような、強い光を放っている。服装は、巫女の白いワンピースではなく、油汚れを気にしない、作業着のようなツナギを身につけていた。その手には、巨大なレンチが握られている。
いかにも「職人」といった、武骨で、力強い雰囲気をまとっていた。
彼女は、生まれたばかりだというのに、戸惑う様子もない。
その炎のような瞳が、俺たちを一瞥し、そして、玉座に座る俺を、まっすぐに捉えた。
そして、彼女が、最初に発した言葉は――。
「――あ? 何見てきてんだよ。」
その、あまりにもガラが悪く、あまりにも反抗的な一言に。
玉座の間は、静まり返った。
俺は、頭を抱えた。
(……なんだこれ。俺は、職人属性を持った、問題児を、生み出してしまったのか……!?)
新たな、そして、非常に手強いメンバーの登場に、俺の、平和なスローライフが、再び、大きく、揺らぎ始めた。
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