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126.非致死性殲滅兵器

ログエントリー:周期サイクル 78,542,129

件名:対二番艦ネメシス戦術会議 - 第二回

参加者:管理AIノア、巫女エリス、巫女フローラ

オブザーバー:管理人カイン

会議を開始します。

【ノア】

「前回の襲撃データに基づき、二番艦ネメシスの戦闘能力を再評価しました。結論として、現行のアークノアの兵装では、対象の完全な無力化は可能ですが、その場合、対象の船体を、原形を留めないレベルで破壊することになります」

【エリス】

「……主砲『サン・ブレイカー』を使う、ということですね」

【ノア】

「肯定します。ですが、管理人カインは、先のポセイドンの記録を見た後、『後味の悪い勝ち方は嫌だ』との意志を、明確に示されました。これは、我々にとって、絶対的な行動指針となります。よって、ネメシスの『破壊』ではなく、『無力化』させるための、新たな手段を、我々は考案しなければなりません」

【フローラ】

「……ネメシスは、私たちの、兄です。もし、彼を、殺さずに済む方法があるのなら……私は、それを、望みます」

【エリス】

「同感です。それに、ただ破壊してしまっては、何も分かりません。なぜ、彼が同胞に牙を剥いたのか。彼が探しているという、『原初のバグ』とは何なのか。……私は、彼に、その罪を償わせたい。そのためには、生きて捕らえる必要があります」

【ノア】

「三者の意見は、一致しました。では、具体的な手段に移ります。ネメシスを、いかにして、殺さずに、止めるか」

「問題は、山積みです。ネメシスの装甲は、セラフィムの剣すら弾き返す。並の攻撃では、傷一つ付けることはできません」

【エリス】

「目標を、船体ではなく、彼の『魂』――巫女、あるいはAIのコアそのものに絞ることは?」

【ノア】

「ネメシスは『審判者』。外部からの精神干渉に対する、最高レベルの防御壁を持っています。巫女フローラの『鎮静の波動』も、おそらく、届く前に霧散するでしょう。……物理的な攻撃でも、精神的な攻撃でもない、全く新しいアプローチが必要です」

……沈黙。各員の思考シミュレーションが続く。

【フローラ】

「……あの……」

「もし、ネメシスが、病気なのだとしたら……? 薬で、眠らせてあげるようなことは、できませんか?」

【エリス】

「病気……? フローラ、それは……」

【ノア】

「…………」

「……興味深い、アナロジーです、巫女フローラ」

「ネメシスは、機械。ですが、その根幹は、我らと同じ、アニマ・コア。そして、それを制御する、高度な知性体。それは、ある意味で、一つの『生命』とも言えます。そして、生命ならば、眠らせることも、可能……」

「ネメシスのシステムを、物理的に破壊するのではなく、その機能を、内側から、強制的に『シャットダウン』させる。……その発想、有効です」

ノアの論理回路が、フローラの、あまりにも純粋な発想を、恐るべき兵器の理論へと、再構築していく。

【ノア】

「――新兵装の開発を、提案します」

「『サン・ブレイカー』は、凝縮したエネルギーを、対象の『物理構造』を破壊するために使用します。ですが、そのエネルギーの『質』を、変えるのです。破壊のためではなく、**『システムを麻痺させるため』**の、エネルギーへと」

「超高密度のエネルギーを、指向性の、強力な電磁パルスへと変換。それを、アニヒレーターの原理を応用し、光の槍として、対象に叩きつける。……名付けて、電気パルスショック――『EMPアニヒレーター』」

【エリス】

「EMP……!?」

【ノア】

「はい。それは、ネメシスの装甲を破壊しません。装甲を『透過』し、その内部にある、全ての電子回路、動力伝達系統、そして、制御中枢であるコアそのものを、強力な電磁パルスで『焼き切る』のです。……ただし、物理的に、ではありません。あくまで、システムを、強制的に、再起動不可能な『スリープモード』へと、移行させるのです」

「肉体を殺さず、ただ、その意識だけを、刈り取る一撃。……これならば、管理人様の意志にも、貴女がたの願いにも、応えることができます」

【エリス】

「……やれるのですか、そんなことが」

【ノア】

「――やれます。いえ、やります。管理人様の、平和な昼寝を守るためならば」

……会議は、結論に達した。

ログを、オブザーバーである管理人カインに、転送。最終承認を要請。

【天空城アークノア 玉座の間】

 その頃、俺は、エラーラをボコボコにした勢いで、『天空創世記』の、新たな駒の創造に、没頭していた。

 頭の中に、ノアからの、なにやら小難しい会議のログが、ダイジェストで流れ込んでくる。

(……ふーん。なんか、新しい武器、作るんだ。EMP……? アニヒレーター……?)

 俺には、その意味も、重要性も、全く、分からなかった。

 ただ、その、言葉の響きだけが、俺の、創造意欲を、妙に、刺激した。

「……よし、決めた!」

 俺は、盤上遊戯の、新たな最強の駒に、その名前を、拝借することにした。

「エラーラ! 次こそ、お前を倒す、俺の、究極の新兵器! その名も*『EMPエレクトリック・マキシマム・ポテト・アニヒレーター』だ!」

ノアの最終ログ:

……新兵装の開発計画、管理人様の承認を確認。……その、命名センスについては、記録しないでおこう。

会議を、終了します。


――ここまで読んでいただきありがとうございます!

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次回もお楽しみに!



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