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葬送

「蒸し焼き、まだかかる」


串焼きを食べて、まだ少し物足りないな、と思ったら先にフリーダがそう言いました。

フリーダ、見た目だけじゃなくて賢さもあるみたいね、わたくしの様子を見て取って先に言ってくれるんですもの。

いろいろと教えてあげたらきっとこの子は伸びるわ。

……まずはしゃべりにくそうだから人間の言葉を教えてあげたらいいかもしれませんね。



「スコップと灰を入れれるものってあるかしら?」


「ある」


すばやくささっと走っていって、フリーダは木製のスコップと小さな片手で持てるようなつぼをもってきました。

つぼなら気にせずに灰でも入れられますね。



辺りはもう真っ暗で星々と焚き火の火だけが光っている感じです。

フリーダが火のついた薪を持ってついてきてくれます。



首を燃やしていたところではすでに火は消えて、炭になってくすぶってる感じになっていました。

炭になった薪を燃え移らないように木の枝でのけていきます。

首は……肉は全て燃え尽きてくれているようですが、骨は砕けてはいますが形は残っていました。

最初からしゃれこうべだった方も割れただけで焼け残ってますね。

……薪では骨を灰にすることはできないようです。

今後肉を食べても骨が出るでしょうから、燃やせないのは困りますね。



『専用といっていい魔法あるぜ。それなりに魔力使うから、あまり使わないほうがいいかもしれないけどな』


「そんなのがあるんですの? 明日にはゴブリンの死体も処理しないと腐ってしまいそうですから覚えておきたいですわ」


死体をそのまま放置すると腐ってしまいます。

先程の頭程度の大きさならそれほどでしょうけど、あれだけの量が腐るととても怖いです。

ですからできるだけ早く埋めるか燃やすかする方が良いですよね。

数日ぐらいは大丈夫みたいですが、人間の頭2つを燃やすのにもこんなに薪を使って時間をかけても骨が焼け残ってしまうのでしたら、魔力を使ってでもすぐに処理出来たほうがいいと思いますし。



『その魔法の名前は葬炎だ。火属性に強い適正あるみたいだし、使えるだろ?』


なんだか気持ち悪いですね。

うっかりど忘れしていたかのように知らなかったはずの葬炎の魔法を思い出しました。

これがルファが言う魔法を教えることが出来る、ということかしら?



「フリーダ、ちょっとわたくしの後ろにいてね」


フリーダは駆け寄って、わたくしの影に隠れました。小さな子供が親の後ろに隠れるような感じで可愛いです。


「ちょっと危ないかもだから、……えーっと」


葬炎は設置型魔法な上に時限式魔法でもあるらしいです。場所は……骨が置いてある地面、発動タイミングは……十秒後でいいですか。


「少し下がるわよ」


数歩後ずさります。

一緒にフリーダも下がります。

魔力を設置場所に注ぎこんでいきます。


「葬炎!」


十秒後に範囲に指定した地面から、青白い炎の柱が立ち上がります。

凄まじい光と熱です、数歩離れて良かったですわ。

範囲に対して魔力を注ぎこみ過ぎたようで炎の柱が無駄に高いです。


何秒ぐらい青白い火柱が立っていたのか、正直数えていませんでしたわ。

気づくと消えていたって感じなぐらい幻想的な光景でした。

青白い炎なんてあるんですね、自分で出しておきならびっくりしましたわ。

その炎の威力は絶大だった様子で、骨があったはずのところにはもう何もなく灰すら残っていませんでした。



『そういや葬炎で燃やしたら灰すら残らないことが多いんだったな』


もう、そういうことは先に言ってくださいまし!

まあ灰を回収しなくても良くなったし、あの方々は世界に溶けたということで。

それほど信仰心はありませんでしたが、国教では世界は全てのものが循環しているという教えでしたので、悪い待遇でなく弔いには適しているはずです。


最後にもう一度祈りを捧げます。



「おまたせ、フリーダ」


後ろを振り返って、大人しく待っていてくれたフリーダに声をかけます。


「そろそろ、蒸し焼き、できる」


そうだったわね。

まだメニューがあったんでしたわ。

とりあえずこの場も明日明るくなってから片付けるでいいでしょう。

結局使わなかったつぼとスコップだけ持って最初の焚き火のところへ戻ります。

気づくと三匹のコボルドたちの焚き火が消えていました。

コボルドたちも見かけません。

もともとコボルドの集落だったと聞いていますから、建物の中に入って寝ているのでしょう。

……好きにさせておきましょう。



フリーダが焚き火の中から葉っぱの塊を取り出しました。

葉っぱを剥がしていくと、むわっと湯気を出して蒸された肉が出てきました。

肉にはすでに香辛料や塩がかかっているようで大変良い香りです。

それを先程渡しておいたナイフで切り分けてくれました。


うわぁ、美味しそう!

昨日のわたくしが焼いたきのことは雲泥の差ですわね。

環境はそれほど変わらないはずなのに……。


「美味しい!」


実に野性味溢れていますが、逆に今まで食べたことのない感じでとても美味しいです。

どことなく国境の砦で食べた夕食みたいな感じですわ。

ということはこれが野営ご飯の味、というか庶民の味なのかもしれませんね。

ソースなんかかかって無くても美味しく出来るものなのですね。



あっという間に全部食べてしまいましたわ。

学園でしたらはしたないとか言われそうですね。でも今のわたくしははしたなくてもいいんです、国外追放の身なんですから今更はしたあっても仕方ありませんわ。



「どうぞ」


あれ? フリーダが自分の分をわたくしに差し出してきましたわ。

……今までの扱いがよほど悪かったのでしょうか?


「いえ、それはフリーダ、あなたの分よ」


「え、さっき、串、食べた」


「蒸し焼きも食べていいのよ、というかさすがにわたくしももう食べれないわ、フリーダが食べてちょうだい」


振り切れそうなぐらい尻尾振ってるわね。


「ありがとう、ございます」


別に施したわけでなく、最初からそれはフリーダの分よ。

ちょっと痩せすぎな感じだからもっと食べないと、ね。



お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃいましたわ。

今日はいろんなことがありすぎました。

面倒なことは明日にしましょう。


警戒の魔法を昨日と同じく三重にかけて、拠点の中だしもう夜だからハンモックは普通の使い方ではもう使えないし、今日はフリーダもいるし、ハンモックを地面にひいて、フリーダと二人で毛布に包まって寝ましょう。

フリーダは最初は嫌がりましたが、ここは無理を言って一緒に寝ることにしました。

だって今まで通りだと檻の中で寝るってことになるしね。


それじゃ聞こえないだろうけど、クァルもおやすみ。ルファもおやすみ~。

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