↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/3

Ep,3




「それで?ノアが探してるものは何だ?」


部屋の前で待機していた部下達と別れて、シュバルトは自分の執務室のソファに腰掛けた。


「私が今日、城下で保護した火蜥蜴(サラマンダー)が関わっていそうな密猟事件、とかないかしら?」


ノアが出されたレディ・グレイの紅茶に蜂蜜をいれながら答えた。


「・・・その件か。」


シュバルトは腕を組み直した。


「何か問題があるの?」


ノアは優雅に紅茶のカップに口をつけた。蜂蜜が足りなかったのか、もう一掬い足している。


「問題か、問題がなぁ。事件自体は単純明解なんだよ。」

「単純明解?」

「あぁ。今回の密猟事件の裏には貴族が関わっている。最近の貴族の聖獣事情って知ってるか?」


ノアはふるふると首を横に振った。


「だよな、ノアはそういうことに疎そうだし。」


ノアはむっとしながら、紅茶に更に蜂蜜をいれた。そして、その上から魔法で出した小花を浮かべた。


「最近の貴族は、自分の元にいる聖獣でステータスを表しているらしい。」

「ステータス・・・。」

「あぁ。珍しい聖獣や美しい聖獣、強い聖獣に可愛い聖獣、人間的に価値のある聖獣が人気になっているらしい。」


ノアはコトンっとティーカップを机に置き、シュバルトを見た。


「その考えは気に入らない。」

「全くもってその通りだな。聖獣達は人間の道具やアクセサリーじゃない。ちゃんと生きていて、俺らと対等なはずだ。それを理解できねぇ、貴族(バカ)が多い。」


ノアはゆっくりと視線を紅茶へと戻した。


「それで、それのどこに貴方の言う問題があるの?まぁ、問題しかないのだけど。」


シュバルトは言いにくそうに顔をふせた。


「俺達も取り締まってはいるんだ。だが、貴族達を取り締まっても、密猟を行っている奴等には未だに辿り着いていない。毎回、蜥蜴の尻尾切りのように足取りが掴めなくなる。」

「現場を押さえることは?」

「・・・難しいだろうな。」

「ということは、次の取り引き場所もわからないのね。」

「残念ながらな。」


ノアは考えるように目を瞑った。


「・・・わからないなら聞いてみましょう。」

「は?」


ノアはスッと立ち上がった。


「"私の音が届いたなら来て。風霊(シルフ)"」


ノアとシュバルトの前に、透明な美しい女性(シルフ)が現れた。


【ノア、お久し振り~。中々呼んでくれないから、もう暇で暇で~。・・・って、あらぁ?あらあらあらぁ~?】


風霊はノアとシュバルトを交互に見て笑顔になった。


【結婚の報告かしら~?それとも、婚約?】

「なっ!?」

「どちらも違うわ。風霊(シルフ)、こっちは黒の騎士団長のシュバルト。昔の同僚よ。」

【そぉなの~?残念、ノアに春が来たとおもったのに~。】

「当分そんな予定はないけれど、その時は報告するわ。」

【必ずよ、必ず~。】

「それで、貴女を呼んだ件なのだけど。」


風霊はにっこりと笑った。


【ノアが今追ってる事件のことを聞きたいのでしょ~?密猟事件のやつ~。】

「話が早くて助かるけど、盗み聞きはよくないわ。」

【今回はたまたま聞いてしまったの~。ふふふ~ごめんなさいね~。】


風霊の毒気のない笑顔にノアは溜め息をついた。


【実は私達も密猟のことで、近々ノアに相談しようと思っていたの〜。それで密猟について色々調べていて〜。】


風霊は同じ場所には留まらない性質を持っている。日々世界を気ままに風と共に巡り、旅をしている。それ故に、色々な場所で密猟の話を他の聖獣から聞き、ノアに情報提供をしなければと考えていたらしい。


「なるほど、事情はわかったわ。密猟者の特徴とかわからないかしら?」

【黒い頑丈そうな馬車を見たってよく聞くかしら〜。】

「黒い頑丈そうな馬車?そんな目立つ風貌なら、俺らの報告書に上がってきてもよさそうだが、今のところはねぇな。」

「それも不可解ね?何か細工をしているのかしら。」

【あとは〜、人間が何人もいて武装していたって聞いたわ〜。それに魔法を使用する人もいたって聞いたわ〜。】


少なくともアテ通りの組織的な犯行か、とシュバルトが顎に触れながら呟いた。


【調べたって言ってもあまり情報がなくてごめんなさいね〜。仲間が襲われた子達からはあんまり聞き出せなくて〜。】

「聖獣たちも私達と同じように心があるのだから、当然よ。風霊(シルフ)は自分に出来る最善を尽くしてくれたわ。本当にありがとう、ここからは私達の仕事よ。信じて任せて。」


風霊は綺麗に微笑んで、空気に溶けて行った。


「さぁ、どうしますかねぇ。調律者サマ?」


ノアは脚を組み直し、腕を組んだ。


「情報がやはりまだ足りないわ。不本意ではあるけど、当面の間は黒の騎士団に留まり調査継続をするわ。取り敢えず、この後の巡回に同行させて。」


ノアはサッと立ち上がり、ドアへと向かって行った。



黒の騎士団の巡回は日毎に場所が違う。他の騎士団は管轄毎に巡回場所が決められているが、黒の騎士団は事件の度に巡回場所が違う。そのため、今日は火蜥蜴が事件を起こした場所へと向かうことになっている。


「えー、暫くの間、こちらのノア=フローラ調律者様が我々と共に巡回等を行われる。それぞれ、不敬のないように。」


シュバルトの説明に騎士達がざわついた。ノアを知っている者は歓喜し、知らない者は怪訝な顔をしている。


「一応言っておくが、こんな見た目でも強いぞ、こいつは。前任の騎士団長を投げ飛ばしたこともある。」

「ちょっと!変なことをバラさないで!」


今度は別の意味で騎士達がざわついた。ノアは一歩踏み出し、咳払いをして口を開いた。


「ご紹介に預かりました、ノア=フローラです。お久しぶりの方も初めましての方も、よろしくお願いします。変に噂が立つのも嫌なので、先に伝えて起きます。私は以前、ここの副騎士団長でした。またここで共に仕事が出来て嬉しく思います。必ず、密猟者を暴き捕えましょう。」


ノアの固い決意のこもった言葉に、騎士達は背筋を伸ばした。

ノアが話は終わったと一歩下がろうとした瞬間、ノアの影が揺れた。


【ご主人、我を紹介してくれないなんて酷いではないか。】

「ちょっと、突然出てこないで。」


シュバルトは突然のことに驚きつつも、臨戦態勢をとっていた。


「ノア!なんだこれは!?聞いてないぞ!」

「あとで紹介する予定はあったのよ、多分。」

【多分とは酷い扱いではないか。相棒に挨拶をさせてくれないなんて、酷いご主人様だ。】


マッドは姿勢を正し、帽子を脱ぎ、恭しく一礼した。


「この憎たらしいのは、影人間(シャドーマン)のマッド。色々あって、今は私の相棒よ。」

「影人間(シャドーマン)とは珍しいな。明るい場所が得意でない性質と聞いたが、デマか?」


シュバルトが興味深そうにマッドを見た。影人間は、通常闇夜に生きる聖獣である。また、力のない個体は見た目が人間でも意思疎通はできない。そもそも、人間と流暢な意思疎通が出来る影人間は珍しい。聖獣の中でも、人型の個体は人間と意思疎通ができやすいが、その中でも影人間は、本来ならば獣に近い種族である。


【いやそれは正しいぞ、人間。我には特に効かぬがな。】


マッドはそれだけ伝えて、またノアの影の中に戻って行った。


「自由か。お前、意味わかんねぇもん相棒にしてるな。」

「私もたまにおかしいって思う時があるわ。」


そうして、密猟事件の本格的な調査が幕を開けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。