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#7 巨大な土の壁

20時更新にしてました……


申し訳ないです・゜・(ノД`)・゜・

 シャックスさんに手を借り、立ち上がる。未だ暴れ狂っている魔獣に、思わず鳥肌が立ち体が震える。


 魔獣のような生き物は、僕が元いた世界にはいなかった。あんなに巨大で、恐ろしいものはいなかった。


 魔獣はそばにある建物を簡単に脚で踏み、破壊している。僕が元いた世界では、せいぜい2mくらいの魔物が一番大きかった。それの比じゃないほどの巨体。



「この城の守備は、どうなってるんだか」

「ノエル様、今のうちに屋内へ」

「ダメだ。うかつに動いたら危険だ!」

「あ……」

「やばいね、気づかれた。二人共離れないでくれ」


 魔獣の獰猛な瞳が、僕らの方へ向いていた。そして唸り声を上げた次の瞬間、黒い渦を巻いた球を僕らの方に向かって飛ばしてきた。


 それを見てシャックスさんは、僕とネネさんに覆いかぶさり、かばってくれた。


 大きなその球はその存在だけで、僕らの逃げる場を失わせている。どこへ逃げても、無駄だと言われているかのようだ。


 目前にまで迫っているそれに、僕はもうだめだと瞳をとじ、シャックスさんにしがみついた。球が当たるものすごい轟音があたりに響いた。


「ご無事ですか?」


 そっと瞳を開けると、魔獣と僕らのあいだには、巨大な土の壁が隔たっていた。そしてその土の壁を背にし、温和な笑みを浮かべていたのは――――


「アグレアスさん……」

「遅いぞ、アグレアス」

「魔獣のせいで、敷地内の気が乱れていたものですから、あなたがたを見つけるのに手間取ったんですよ。ノエル様にお怪我がなく、なによりです」

「俺は?」

「せいぜい、ノエル様の盾になっていれば十分です。あなた攻撃系も、防御系もからっきしでしょう」

「はぁ、やだやだ。これだから頭の固い、可愛げのない野郎は嫌だわ」

「あなたには好かれたくないですので、結構です」


 この二人、仲良くないのでしょうか。言い合いをしている最中も、笑を絶やさないアグレアスさんが怖いです。


 その時、魔獣が土の壁を足でえぐろうとしているのか、ものすごい音と振動が伝わってきた。だけどとても頑丈なようで、なかなか壊れない。


「しかし、まさかこれほどまでとは……。城の防御を、さらに強化してもらわないといけませんね。あんな魔獣、ここらに来るなんて珍しいですし」

「そうなんですか?」

「えぇ。あのように巨大な力を持った魔獣は、知性も理性も備わっているものなのです。ですから見境なく暴れまわったりはしないんですが……」

「では、なぜこの魔獣はここに」

「おそらく、暴走の原因が有り、それのせいで我を忘れているのかと」

「原因……ですか?」



 こうしているあいだも、魔獣は鋭い爪での攻撃をやめることはない。僕たちはアグレアスさんの防壁によって攻撃を受けていないが、魔獣の繰り出す攻撃の余波はあたりの建物や地面等をえぐり破壊している。いくら壁が上部でも、このままでいるわけにもいかない。

 防壁を見つめたまま、何かを考え込んでいたアグレアスさんに、シャックスさんが話しかけた。


「こういう時は、王の出番だろう?」

「残念ながら、王は現在、行方知れず3日目です」

「またか。王なら王らしく、王座にいればいいものの……」

「そうもいかないんでしょう」

「あの……やはりというか、この世界にも王という存在は、おられるのですね?」


 未だ会ったことはないんですが、お城に住まわせてもらっている以上、ご挨拶をしたほうがいいと思うんだけどな。


「えぇ。世界が融合する前の魔王のご子息です。世界が融合し、前魔王は消失しました」

「消失?」

「世界が融合し、光分子が消え失せました。世界を構成する二大分子のうちの一つが消えることは、世界の理が崩れることでもありますから……。前魔王だけでなく、天帝もその他要職に付いていた悪魔も何名か……」

「今の王が生き残ってたのは幸いだったな。じゃなきゃ今頃この世界は、めちゃくちゃだった。俺らも生きていたかどうか……」

「王さえいてくだされば、この場はすぐに収束するのですが、行方知れずですので仕方ありません。我々で何とかしましょう」


――――頭の中を……かき乱すな……


「え?」


 あたりの空間にどこからか響き渡る声。苦しげな低く唸る声は、さらに続いた。


――――力の塊の……分際で……何をする気だ……

――――やめろ……苦しい……


「誰なのですか?」

「ノエル様?」

「苦しんでいるんですね……。あなたは……そう……」

「ノエル?どうかしたのか?」

「かわいそうに……」


 そう呟いたノエルは、背中に純白の羽を生やす。そしてそのまま天高く舞い上がり、地の壁を飛び越えた。それを見て、そこにいた誰もが驚き、慌てた。


「ノエル!!」

「あなたはそこで、彼女のそばにいなさい。私が行きます」


 そういうと、アグレアスも背中に黒い羽をはやし、ノエルの後を追った。





悪魔と天使は自由自在に、羽を出したりしまったりできます。

羽は魔力量に応じて出したりでき、魔力が尽きると羽も出せない、という設定です


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