神山ゆあ
登場人物の概要はもう少しお待ちください。
「私、何もしてないよ」
警察に呼ばれたあと。
ホテルのロビーから戻ってきたゆあは、部屋に入るなりそう言った。
ひな、あやか、くるみ、あんず。
みんながゆあを見る。
「何が?」
あやかが聞く。
ゆあはスマホを握ったまま黙った。
「……りゅうやの写真」
その名前が出た瞬間。空気が変わった。
「撮ったの?」
くるみが驚いた顔をする。
「違う!」
ゆあはすぐに否定した。
でも。その否定が少し遅れた。
ひなは気付いた。ゆあは何かを隠している。
「じゃあ、なんで知ってるの?」
ゆうかの声がした。
いつからいたのか。ドアの前に立っていた。
ゆあは目をそらす。
「……昨日の夜」
「昨日?」
ゆあは小さな声で続けた。
「佐伯先生のこと調べてた」
「先生を?」
ひなが聞く。
ゆあはうなずいた。
「変だったから」
新幹線で。先生が何度もスマホを確認していたこと。
ホテルでも落ち着かなかったこと。
ゆあは気付いていた。
でも。
誰にも言わなかった。
「面白そうだったから?」
あんずが少し責めるように言った。
ゆあは黙る。
その沈黙が答えだった。
ゆあはいつもそうだった。
人の秘密。
クラスの噂。
誰が誰を好きだとか。
誰と誰が揉めただとか。
全部知っていた。
そして時々。
それを楽しんでいた。
「私……」
ゆあがつぶやく。
「先生のこと、調べたら出てきたんだ」
「何が?」
ひなが聞く。
ゆあはスマホを開いた。そして画面を見せる。
古い記事。
数年前のものだった。
『生徒指導中の教師、生徒とのトラブル』
そこに。
佐伯先生の名前があった。
「これ……」
ひなの声が震える。
記事には詳しい内容は書かれていない。
ただ、
『学校側の対応について問題視される』
とだけ。
「先生、昔何かあったんだよ」
ゆあは言った。
「だから気になって」
その時。部屋のドアが開いた。
りゅうやだった。
「おい」
全員が振り返る。
「その記事、どこで見つけた」
ゆあは少し怯えた。
「ネット」
「違う」
りゅうやが低い声で言う。
「誰から聞いた」
沈黙。ゆあは答えない。
りゅうやが一歩近づく。
「神山、」
「……」
「知ってんだろ」
ゆあの顔が変わった。
そして。小さく言った。
「先生のことを一番知ってる人がいる」
「誰」
ひなが聞く。
ゆあはゆっくり顔を上げた。
「れお」
その名前に全員が固まる。
れお。クラスで一番真面目。
先生から信頼されていた人。
誰よりも先生の近くにいた人。
なぜ。れおが?
その日の夜。
警察が新たな証拠を見つけた。
先生の部屋から。
破られた紙が一枚。
そこに殴り書きで書かれていた名前。
『ゆづき』
そして。もう一つ。
『れお』
だった。




