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修学旅行1日目《出発》

はじめまして!ひよりです。

前作『未来を知ってしまった僕らへ』とは打って変わり、ミステリーを書いてみようかと。

こちらも50話以内に完結させるので、時間がある時に読んで欲しいな〜なんちゃって。

それではどうぞ!


「富士山見えた!」


 誰かの声で、車内のあちこちから歓声が上がった。


 修学旅行初日。

 新幹線の車内は、いつもよりずっと騒がしかった。


 トランプをしている男子たち。お菓子を交換している女子たち。スマホで写真を撮る人。窓に張り付いて景色を見ている人。


 どこを見ても楽しそうだった。


 私――天城ひなは通路側の席に座りながら、その様子をぼんやり眺めていた。


 「ひなー!」


 前の席からあやかが振り返る。


 「見てよこれ!」


 スマホには、いつの間に撮ったのかアホづらで寝ているくるみの写真が映っていた。


 「やっばwwwwこれあとで送ってー」


 「やめてよー」起きたくるみが顔を真っ赤にして叫ぶ。


 その隣ではあんずが大笑いしている。


 いつもの光景だった。


 クラスの中心にいる私たち。

 特別仲がいいわけじゃない。でも、気付けばいつも同じ場所にいる。


私はそんな毎日はとてつもなく好きだ。


 そんな時、ふと、車両の後ろに目がいく。


 ゆづきがいた。


 窓際の席に座り、本を読んでいる。


 周りには誰もいない。いや、正確にはいる。


 いるけれど、話しかける人がいない。


 私の胸が少しだけ痛む。だけど、その感情をすぐに押し込めた。

 今さらだった。それに可哀想って勝手は決めつけだし。


 中学の頃から続いていることだ。

 誰かが直接悪口を言うわけではない。

 物を隠すわけでもない。

 ただ、話しかけない。

 誘わない

 存在しないみたいに扱う。


 そんな空気ができていた。

 そして私も、その空気の中にいる。


 止められなかった。止めようともしなかった。


 「ひな?」


 あやかの声で我に返る。


 「どうしたの?」


 「なんでもない」


 私は笑った。


 笑えたと思う。たぶん。


 その時、車内アナウンスが流れた。


 『まもなく東京に到着いたします――』


 歓声が上がる。修学旅行の始まり。


 みんなの期待が車内を満たしていた。


 だけど。


 その中で一人だけ、浮かない顔をしている人がいた。

 担任の佐伯先生だった。


 先生は車両の前方に立ち、生徒たちを眺めていた。


 普段ならもっと騒がしいのに。

 普段ならもっと怒るのに。

 今日は妙に静かだった。


 先生は何度もスマホを確認していた。


 誰かからの連絡を待つように。

 何かを恐れるように。


 その表情は、私の知っている先生のものではなかった。


 「先生、顔色悪くない?」

 ゆうかが小さくつぶやく。


 「確かに」

 私は答えた。


 その時。


 先生のスマホが震えた。先生は画面を見る。


 そして――。


 ほんの一瞬だけ。顔色が変わった。

 血の気が引く、という言葉がぴったりだった。


 先生は慌てて席を立つ。


 そしてデッキの方へ消えていった。


 ゆうかが不思議そうに首をかしげる。


 「なんか変じゃない?」


 「そう?」


 あやかは興味なさそうに答える。


 「仕事じゃない?」


 その会話もすぐに途切れた。


 みんな荷物を持ち始める。


 わくわくした空気。笑い声。期待。


 だけど私は、なぜか先生の顔が頭から離れなかった。


 何かがおかしい。 そんな気がした。


 それが、この修学旅行の始まりだった。

 そして私はまだ知らない。


 この二日後。

 佐伯先生が突然姿を消すことを。


 そしてクラス全員が、「34人の容疑者」と疑われることになるなんて。


更新はまばらですが、お付き合いください!

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