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愛玩人形シャーロッテは家族が欲しい。  作者: 薄荷あいす


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1/2

私を作ったのは人形職人の夫婦でした。


作成したものの私の出来が気に入らなかったらしく

殆ど廃棄物扱いを受けていました。


夫婦は私の次に作成した人形の出来には

やっと納得がいったみたいで

次の人形は手入れも良くしてもらっていつも綺麗でした。


汚れて台所の隅に放置されていた私を

見かねた老夫婦が引き取り

そこでやっと愛玩人形として扱われるようになったのです。


老夫婦に引き取られて4年


「可愛い可愛いシャーロッテ」

質は良くなくとも清潔な服を着せてくれ毎日髪を梳かしてもらい楽しく過ごして居ましたが

2人は呆気なく病気で儚くなりました。

そしてすぐ夫婦の息子が家に住むことになりました。


「はじめまして私はシャーロッテです。」

礼儀正しく挨拶しましたのに

男は優しい夫婦の子とは思えない下卑た顔をして

初対面の私のスカートを触りました。


私は右手の指を男の顔に突き刺し

仰け反る顎に頭突きを入れ

足の上で何回も飛び跳ねました。

バキッパキッと男の指の骨が折れたようでした。



人形だからと言って

同意なく勝手に触っていいわけではありませんからね。

家から叩き出された私は

町を彷徨いました。


そこで出会ったのは旦那様です。

伯爵という貴族の旦那様です。

私は旦那様の病弱な娘

カトリーヌ様の愛玩人形として屋敷に連れて行かれました。


ブルネットの髪に青い目をしたお嬢様はとても可愛く人形のようです。


「シャーロッテも綺麗よ。薄い金髪に紫の目。まるでお姫様みたい」


お嬢様は私にお揃いの薄い水色ワンピースを誂えてくれ

小さいお揃いのリボンも髪に結んでくれました。


身体が弱いお嬢様は屋敷の外には出かけません

暇を持て余し私と遊びます

お気に入りは貴族令嬢のお茶会ごっこです。

本物のお菓子とお茶をテーブルに載せます。

私は人形ですから

本当に食べる事は出来ません。

口に入れても味という感覚は無いのです。


時にはベッドで一緒に眠り

友達のように語り合います。


「気持ちが悪い人形だな。」

お嬢様の弟のポールが来ました。せっかく髪に結んで貰った水色のリボンを取られ振り回します。

全く意味の無い行為です。

暇なのでしょう。


「私は人形だから構いませんが、人間に対してはそのような言葉は使わない方が良いですよ。人格を疑われます。」


頬を叩かれました。

痛みはありませんが

いけないことです。旦那様に報告をします。

私は旦那様の持ち物ですから傷付けてはいけないことをポール坊ちゃまは学ばないといけません。


次の日坊ちゃまが頬を腫らし

お嬢様の部屋に現れました。

新しい紫のリボンを手に持っています


「詫びの印だ。」

「要りません」

「何故だ?」

「リボンなぞ貰っても叩いた事は赦しませんので詫びても無駄です。」


頭をボグッと殴られました。


「お前なんか廃棄だ!糞人形!!」


耳から部品が出た気がします。

勿論旦那様に報告しました。


ポール坊ちゃまは見かけはお嬢様と似ていますが中身は全く違います。

彼は愚かで質の良くない人間ですが

その婚約者のブリジット嬢は更に悪質な人間です。


ブリジット嬢は歳が近いからとカトリーヌ様と交流を持っていました。

ある時お茶会ごっこを手伝っていた若い侍女がお茶をほんの少しブリジット嬢のドレスに溢しました

水で叩けばすぐ落ちる程度の薄い染みです。

ブリジット嬢は侍女が泣き出すほどに責め立て

クビだと喚きました。


「伯爵家の侍女に処罰を与えるのはお父様だけです。」

苦言を落としたカトリーヌお嬢様に


「私がこの家の女主人になるのだから分からせたのです。当然の事ですわ!」


と言い返します。私も発言しました。


「まだブリジット嬢は女主人では無いです。

それに侍女は子爵家の三女で行儀見習いで伯爵家に来てくれています。

立場は男爵家のブリジット嬢より上になります。ブリジット嬢は短絡的で愚かです。」


顔を赤紫にして怒り狂うブリジット嬢を置いて


「シャーロッテったら使用人の事よく覚えているのね!偉いわ!」

「人形は1度聞いたことは忘れません」


「このっ!このっ!壊れた頭の癖に!!」

「人間は愚かですね…」


ブリジット嬢は帰りました。そして以降お茶会には現れなくなりました


18歳になられたお嬢様が結婚をなさり

遠く離れた地に向かう事になりました。身体はすっかり良くなったそうです。


「シャーロッテを連れていけなくてごめんなさい。」

「大丈夫です。私は人形ですから、特に悲しくはありません。」


カトリーヌお嬢様が旅だった後

ポール坊ちゃまの婚約者が我が物顔で屋敷を歩くようになりました。


その日はお祭りで使用人も休暇になり

屋敷は門番と耳の遠い年寄の下男だけしかいませんでした。


人形にお祭りは関係無いので

いつも通りお嬢様の部屋で椅子に座り飾られていました。


「この部屋も私のものになるのよ!!あんたなんか邪魔なのよ!!」


2階のお嬢様の部屋から突き落とされました。

私は庭の芝生の上に仰向けになっています。

動こうとしますが足が壊れて歩けません。叫んでも屋敷には誰も居ません


「シャーロッテ!!」

ポール坊ちゃまです。

私は汚れて壊れてしまいましたから

廃棄処分でしょうか。


連れて行かれたのはお坊ちゃまの部屋のバスルーム


初めての浴槽です。

お湯がたくさん入っています。お坊ちゃまが何回も厨房と浴室を盥を持って往復してくれたのです。


今までは1杯の盥のお湯で身体を拭かれた事しかありませんでしたので浴槽の中で石鹸を使って洗うのは身体が滑って大変でした。


壊れた膝は布で巻かれ

お嬢様のお古のネグリジェを頂き

私はお坊ちゃまのベッドに置かれました。


ポールお坊ちゃまはソファで寝ました。


翌朝

使用人が私がポールお坊ちゃまのベッドに居た事に気付き屋敷は大騒ぎになりました。


「お坊ちゃまから不埒なことはされていません。

婚約者のブリジット様には怪我をさせられました。」


お坊ちゃまが人形好きの変態と思われたら可哀想ですからね。

ブリジット嬢は私の虚言だと訴えたようですが

人形は嘘をつきません。

ポール坊ちゃまとの婚約は解消されました。


「人間は愚か…」



月日は経ち


お嬢様が赤ちゃんをつれて遊びにやってきました。

とても可愛い赤ちゃんです。

旦那様も奥様も我先にと赤ちゃんを抱き頬擦りをします。


「赤ちゃんはとってもいい匂いよ」


お嬢様は幸せそうです。

私は初めて人間になりたいと思いました。

赤ちゃんの匂いを嗅いでみたい。

自分の家族が欲しいと願いました。




「人間になれる薬がある」

「飲みたいです。」

「なんでも俺の願いを聞けるか?」

「なんでもポール坊ちゃまの願いを聞きます。」


手渡されたのは青い瓶に入った液体です。

とても飲み辛い

でも我慢して飲みます

目の前が真っ暗になりました。



起きると心配そうに私を見つめるお坊ちゃまが居ます


「結婚しよう。シャーロッテ」

「それがポールお坊ちゃまの願いですか?」

「そうだ。」

「元人形が結婚出来るのでしょうか」

「どうにかなるさ。坊ちゃまはもう止めてくれ」



私はポールと結婚しました。


伯爵家にそのまま暮らしているので

殆ど生活は変わりません。


1度私の後に作られた人形がやってきて

「姉ちゃんだけズルい!私もこの屋敷に住む」

と叫び暴れたことがありました。


旦那様も奥様もポールも新しい人形は要らないそうなのでお断りをしましたが

とてもしつこく騒ぎます。

仕方がないので音が鳴らなくなるまで

顔の部品を殴りつけました。


人形の時と違って殴った手が痛みます。


「拳が痛い…」

人間は大変です。足や腕をどこかにぶつけたらすぐに痛いのです。傷が出来た拳はポールが優しく手当てをしてくれました。

ポールは随分質が良くなったのです。




出産はとてもとても痛くて


人間になったことを後悔しました。

でも産まれた子供はとってもとっても可愛い


黒髪に紫の目の

ちょうどポールと私の真ん中の子供です。

ずっと嗅ぎたかった匂いをやっと嗅げます。


赤ちゃんは石鹸のいい匂いだったり

吐いた乳臭かったり毎日色んな匂いがします。

排泄物は臭いです。


赤ちゃんは2年経つと赤ちゃんではなくなります。

それでも可愛いですが

寂しいのでまた赤ちゃんを作ります。


私は5人赤ちゃんを産みました。

5人の赤ちゃんは大きくなり

5人からまた赤ちゃんが産まれます

どんどんどんどん増えた赤ちゃんはもう数え切れません。


人間の寿命は短く

私は動けなくなりました。


目の前には髪の白くなったポール

私の髪も真っ白です。何故か水色と紫のリボンが結んであります。


「お婆ちゃんなのにリボンなんてつけては恥ずかしいわ」

「でも似合ってるよ」

ポールは優しく私の唇にキスをします。



「家族になってくれてありがとう。」

私はお礼を言いました。






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