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地道に村発展と無口青年

村に宿を建ててからと言うもの 割と賑やかになって来たことで発展のために拓海は手伝いをすることに そんな中 新たな出会いが始まる


宿が一軒できた。

たったそれだけのことが、村を動かし始めていた。

旅人が泊まり、商人が立ち寄り、「あそこに泊まれる」という噂が道沿いに広がっていった。宿の前には毎朝、前夜に到着した旅人の荷馬車が二、三台停まるようになった。

俺は宿の部屋をもらい、日当ももらうようになった。

生活の基盤ができた。

問題は、やることが山積みだということだ。

宿はまだ一軒しかない。満室になるたびに断られる旅人が出る。飯屋は村人が軒先でやっている鍋一つだけ。道は整備されていない。水場も少ない。

この村はまだ、宿場町と呼べる段階じゃない。

そして俺には、もう一つ気になっていることがあった。

この世界には、まだ見ていない村がいくつもある。

地形がどうなっているのか、どんな問題を抱えているのか、何がうまくいっていて何がうまくいっていないのか。地理歴史オタクの血が、じっとしていることを許さなかった。

早く見て回りたい。この世界の地形を、全部歩いて確かめたい。 


「おい! 早く手伝え! この村に泊まれるところができてから噂が広まって人が集まってくるぞ!」

ロック村長の声が、朝の空気を叩き割った。

「アハイ、すぐ行きます」

俺は走りながら心の中で呟いた。

村の探索は、だいぶ後になりそうだな……。うぅ。


その日から、宿の増築工事が始まった。

空き家をもう一軒改装する。今度は部屋数を増やして、荷物置き場も作る。ロック村長が段取りを仕切り、村の男たちが次々と集められた。

俺も混じって作業した。

壁の補修、床の修繕、柱の補強。異世界に来てから体を動かすことが増えた。元営業マンの体には正直きつかったが、文句を言える立場でもない。

作業しながら、周りを眺めた。

屈強な男たちが並んで木材を運んでいる。声をかけ合いながら、手際よく動いている。

その中に、一人だけ妙に目立つ若者がいた。

年は二十前後だろうか。体つきは他の男たちに引けを取らないが、表情が違った。他の男たちが笑いながら作業しているのに、その若者だけが無言で、淡々と手を動かしている。

なんとなく目が止まった。

しばらく見ていると、向こうがこちらに気づいた。

目が合った。

若者は数秒、無表情に俺を見た。そして「なんか用?」と言わんばかりの、微妙に不機嫌な顔をして、視線を外した。

「……あいつは誰ですか」

隣にいたロック村長に小声で聞いた。

村長は腕を組んで言った。「俺の息子だ。ハロットという」

「村長の息子さんが」

「村の発展に人手がいる。使えるやつは全員使う。息子も例外じゃない」

なるほど。

それであの顔か。俺でも不機嫌になる。


昼の休憩になった。

男たちが思い思いに座り込んで、水を飲んだり飯を食ったりしている。

ハロットは少し離れた木陰に一人で座っていた。

俺は水の入った革袋を持って近づいた。

「お疲れ様です。俺、拓海といいます。先月からここに厄介になってる者で」

ハロットは俺を一瞥して、「……ん」とだけ言った。

返事はそれだけだった。

俺は隣に座ることにした。

「慣れない作業で疲れませんか」

「……別に」

「毎日こういう仕事してるんですか」

「……最近は」

会話のテンポが極めて遅い。でも無視はされていない。続けてみた。

「普段は何をしてるんですか。趣味とか」

ハロットは少し間を置いた。

「スライム狩り」

「スライム」

「あと、寝ること」

それだけ言って、また黙った。

俺も黙った。

木陰に風が通った。遠くで誰かが木材を叩く音がした。

会話は、そこで終わった。


夜まで作業が続いた。

日が落ちる頃、ロック村長が「今日はここまでだ」と声を上げた。男たちが散り散りに帰っていく。

「拓海、晩飯を食っていけ」

村長に言われた。

「よろしいんですか」

「うちのメルトが多めに作ったと言っている。一人分くらい余裕がある」


村長の家は、村の中では大きい方だったが、中は質素だった。

テーブルに並んだのは、野菜の煮込みとパンと、干した肉を戻したもの。飾り気はないが、温かくて量があった。

料理を運んできたのはメルトさんだった。

四十代くらいの、落ち着いた目をした女性だ。ロック村長とは対照的に、声が柔らかい。

「ようこそ。宿のことは聞いています。本当に助かりました」

「いえ、たまたまうまくいっただけで」

「たまたまじゃないと思いますよ」とメルトさんは言って、俺の椀に煮込みをよそった。「宿がなくて困っていたのは、村の全員が知っていました。でも誰も動かなかった。それは、どうしたらいいかわからなかったからです」

「この村に来る前から、宿がなかったんですか」

「ずっと前からです。旅人が広場で野宿するのを見るたびに、申し訳ないと思っていました。でも私たちには知恵がなかった」

俺はパンをちぎりながら聞いた。

「この村、他に困っていることはありますか。水場とか、道とか」

「それを今聞くか」とロック村長が苦笑いした。

「職業病みたいなもので」

メルトさんは少し考えた。「水は、雨の季節になると広場のあたりが水浸しになります。あと、東の道が泥で荷車が通りにくいと、商人に言われることが多くて」

俺はメモを取った。

水はけの問題。東の道の整備。

「ハロットさんのことを聞いてもいいですか。普段はどんな」

「俺のことを話すな」

ハロットが飯を食いながら、低い声で言った。

俺とメルトさんとロック村長の三人が、同時に黙った。

ハロットは椀に視線を落としたまま、黙々と食い続けた。

メルトさんが小さく苦笑いして、俺に目配せした。

*またの機会に、*という顔だった。


帰り道、夜風が涼しかった。

空を見上げると、星の並びがどこか違った。知っている星座が一つもない。当たり前だが、ここは異世界だ。

メモを開いた。

今日書いたことを読み返す。

宿の増築。水はけの問題。東の道の整備。ハロット、スライム狩りが趣味。

やることはまだある。

見たい場所もまだある。

でも今日一日で、この村のことが少しわかった気がした。

人の顔が見えてくると、地形の読み方も変わる。

俺は空を見上げたまま、しばらく歩いた。

(おわり)

AI補助してもらってます(grok Claude)

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