終章 2 ついでがすぎる
読書の秋らしく、こつこつ本まみれです。
息抜きにお越しいただきありがとうございます。閲覧者が増えると天に昇れそうな気がしますね。
一夜明け、祭りの名残がそこかしこに散らばる中スピカとメレルナは橋へ向かって歩いていた。
「領主邸はいつもと環境が違うけど眠れたかしら?」
「まぁ、私をどんな風に思っているのかわかりませんが全く問題ありませんでしたわ!だってスピカお姉様の隣だなんて…」
嬉しそうにくねくねするメレルナが可愛らしすぎてスピカも目を細める。昨夜メレから「スピカお姉様のお隣で眠りたいです…」と言われたときは驚いたが、姉妹共通の思い出が少ない分今しかできないことをしようと同じベッドで休んだのである。
「そういえば、髪飾りのデザインはどう?布も端切れもたくさんあることがわかったから、自由に試して良いわよ。」
「はい、妄…いえ発想が止まらず本日からでも早速使わせていただきます。」
ちらりとメレルナの本質に触れたような気がするが、そんなところも含めて愛すべき妹である。意外と活動的で芸術家肌なことがわかってきて、やはり血は争えないとそっと微笑んだ。
話をしながらあっという間の道のりを歩き、もう橋が見えてきた。まるで最初からそこに架かっていたかのようなたたずまいはすでに景色に馴染んでいる。
「……あれは何?」
橋の手前に昨夜は無かった「何か」がある。急いで近づくと、あまりの衝撃に令嬢らしからぬ顔でぽかーんと見上げてしまった。
「まぁ!橋を守る女神像ですわね!なんて素晴らしい…。」
メレルナの喜びようを見ればわかる、その女神の石像はもちろんスピカそのものであった。しかもご丁寧に手前に祭壇が造られ、昨夜の祭りの食べ物が山のようにお供えされている。とりあえず手を合わせて橋を渡ることにした。
「ねぇ…メレはあの石像何に見えた?」
「えっ?そんなのスピカお姉様に決まっているではありませんか!まさかお分かりにならなかったのですか?どなたが造ったかわかりませんが完璧に美を写し取っておりましたわ!」
スピカびいきのメレルナに聞いたのが間違っていた。後でもうちょっと冷静に分析してくれる人に聞いてみよう…。そして橋を渡り終えたところには大精霊様がスピカと思われる人に加護を与える姿が石像化されていた。
「………………………。」
とりあえず手を合わせて、きゃっきゃとはしゃぐメレルナを引っ張ってオリゼのところへ急ぐことにした。なんだか生気をごっそり削がれた気がする。
「おはよう、スピカとメレちゃん。昨日はお疲れさまだったわね?」
「「おはようございますっスピカ様、メレルナ様!!」」
昨日はあんなにもいろいろなことがあったのに、皆つるぴかに輝いている。特にキハの変わりようは別人レベルである。
「オリゼ、急なことなのにマーガレットとオリビアを引き受けてくれてありがとう。」
オリゼは淡いオリーブ色の髪の毛に朝日が当たり、つやつやに光りながら首を横にぶんぶん振った。
「とんでもない!2人の熱心さのお陰で私たちはこの通り、自分至上最高の仕上がりよ?海藻の商品化に早くも目処がついて、うきうきなんだから。」
「商品化といえば、実に最良の実験、いえ体験希望者が来ていて…最長2週間、疲れを癒したいリュウ様と呼ばないといけない御方がね…。」
「あ、あぁ…あの3番目の…。」
2人は思わず遠い目をしてしまった。しかしそこは、さすがのたくましさでスパッと割り切った。
「せっかくだからエスエスト領高級リゾート化の試験期間と思いましょう。」
「マーガレットもオリビアも遠慮しないで好きなだけ美容製品を試してもらって良いからね?」
「「はい、よろこんで!!」」
こうして着々と、リュウ様への極上癒しフルコースが練られていくこととなった。
ちなみに、いつもの習慣で早起きしてきたオリゼ父によって石像の秘密が明かされた。昨夜はお祭り騒ぎの中、お酒の力も手伝って領民を巻き込んだ各領の自慢大会になったそうだ。
もちろん、自領のお嬢様愛にあふれた盛大な自慢合戦を続けたのだが、なぜか最終的に大精霊様方とスピカを誉め称える会になり、橋の守り神として『女神像が欲しい』という流れになったという。
あとは橋を架ける流れで「こうか?こうか?」とノリノリで設置してしまったのだろう。設置箇所が絶妙にちょうど良い場所なのがチームワークの良さを伺えて意味なく悔しい。
「素晴らしいシンボルだろう?」
「「「最高ですね!」」」」
今日もスピカ愛が止まらない一行でした…。
石像の秘密…大精霊様、お祭り楽しかったようですね。成形はどんと来い、お礼はおやつで良いよ?
3番目のあの方も振り回されると面白いですね。




