夜会編 2 完膚なき闘い
ギリギリセーフ!金曜日の朝投稿に何とか間に合いました。(もはや定型文になりつつある)こつこつ進めますので忘れた頃に覗きに来てくださると嬉しいです。
あぁ、まぶしい…。スピカは自分のきらきら具合を棚に上げて目を細めた。どこからどう見ても貴族年鑑のトップにくる王族の…三男プリュート殿下だわ。さっと姿勢を低くして敬礼の姿勢をとる。
「パートナーの名前に珍しい肩書きを見つけてつい、確認に来てしまった。ご紹介いただけるかな?」
「…はい、我が領にお住まいになります大精霊ペトラノーム様でございます。」
「いかにも、私が大精霊である。縁あってスピカの後見人もしておる。」
周囲が静かにどよめいた。外見は申し分なき大精霊の貫禄だが、王族の前で宣言されればその事実は動かしようがないといえるからだ。
「こちらが精霊のアウディーレ、あちらが森の番人ガルディでございます。」
アウディーレはスピカの髪飾りとお揃いの花冠を載せ、衣装は同じ生地から仕立てた。ガルディも同じ生地で騎士服を仕立て実に似合っている。当然ながら精霊や魔蜂などの存在は人間の理を離れるので王族だろうが平民だろうが忖度は全くない。
「ねぇ、スピカ〜あっちに美味しそうなお菓子があるよ!」
アウディーレにグローブの端を引っ張られて思わずこぼれたスピカの笑みに釘付けの王子を気にする風もなく
「それでは御前失礼いたします。」
と、あっさりドレスを翻して軽食エリアに向かった。大精霊はちらりと振り返ってどや顔を残し、呆気にとられる王子を置き去りにしてそそくさとスピカをエスコートして去った。
いつもは鉄壁の王族オーラのせいで近づき難いプリュート殿下が放心しているチャンスを令嬢たちが逃すはずがない。プリュート殿下は、思いがけずも多くのハンターに囲まれて身動きが取れなくなった。
スピカは『確定』大精霊と愛らしさ100%の精霊たちに囲まれているおかげで、もはや神殿の銅像のごとき鑑賞物扱いである。まれに精霊の愛らしさゆえ声をかける令嬢もいるが、喜ぶスピカの笑顔に悶絶して戦闘能力はゼロとなるのであった。
「まぁ、さすがお城の夜会は品揃えが違うわねぇ…あの濃い紫色のつぶつぶしたものはなんでしょう…?」
すかさずガルディがサーブしてくる。ペトラノーム様がこちらを凝視している気がするが、気にせず口にする。甘すぎず、食感がほどよく残り中にもちもちの何かが入っていて、スピカは悶絶した。
「気に入りましたか?」
味に集中しすぎて近くに人がいることに気がつかなかった…令嬢として不覚でしたわ。声のした方に視線を向けると、スカートのように裾が広がらないタイプのキラキラ鮮やかな珍しい織物のドレスを着た小柄で可愛らしい女性がこちらをじっと伺っていた。
「もちろん!こんなに美味しいものと出会えるなんて今日来て良かった…。」
しみじみとため息をつきながらも、もう一つもぐもぐしてしまう。
「ふふっ、面白い方…。私はオリゼよ。このお菓子は商人が遥か遠い国から海を渡って運んできた食材で作ったの。小さい領地で何か特産品を、と思ったのだけど難しいわね。」
「私はスピカよ。こんなに美味しいのに特産品にならないなんてどうしてかしら?」
「実は日持ちが課題で、乾燥させたり瓶に詰めてみたりいろいろ試したのだけど味と食感がね…。素材の栽培には成功したから大都市で店でも構えられたら万々歳ね。残念ながら端っこの弱小領地じゃ資金不足だけど。」
端っこ…?今いる王都の西側は平原が延々と続いているし、北は他国、南は魔の森だから…。
「まさか、エスエスト領のサムリー家の方?私はイースラック領だから川を挟んでお隣だわ!」
「え!あの鉱山で有名なスカイリア家なの?」
オリゼが落としかけた濃い紫のつるんとした四角いお菓子をガルディがすかさずサーブ用のお皿でキャッチした。神!
「私は領地に引き込もっていたから有名かどうかはわからないのだけど…お隣なら話が早いわ!そのお菓子を食べたいから一緒に作りましょう?」
隣でペトラノームが咀嚼しながらうなずいている。さっきの四角い方も黙々と口にしているところをみるとかなり気に入ったようだ。
オリゼは目を白黒させながらスピカに手を引かれて隅っこの休憩用ソファーに連行された。
たらし…たらしですね?知ってましたけど!巻き込まれ側のスピカが巻き込み始めました。?当初からスピカによる巻き込み事故の報告が上がっていると…?父は資金を惜しまない、精霊たちは懐いている、王族も牽制した、懸念事項は…アルの過労心労でしょうか。どこかでのんびりさせてあげたいなぁ〜




